コレサワ|涙もセンチメンタルもスクラップ “失恋アルバム”に詰め込んだ7色の女心

悲しい曲でも幸福感に満たされている

──2曲目はリード曲の「最後の彼女になりたかった」です。1曲目とは趣ががらりと変わります。

そうですね。「なんか切ない!」みたいな、胸キュンのアレンジになりましたよね。私、お付き合いすると「この人の最後の女になりたい」と思う節があるんです。好きな人の名字と自分の名前の姓名判断をしちゃうようなタイプなんですけど、そういうところ、みんなにもあるんじゃないかなと思って。みんなどんな感じで聴いてくれるんだろう? 別れた直後に聴いたら、きっと泣けるんじゃないかなと思っているので、みんなの反応がすごく楽しみな曲です。

──この曲ができたのには、何かきっかけがあって?

もう歌詞の通りというか、誰かに頼って生きるより自分で幸せになりたいなと思いながら書いた曲です(笑)。

──そういう感情が生活の中で湧き出てきたときって、「曲のために書き留めておこう!」というように作業をするものなんですか?

「早く、忘れないうちに録らなきゃ!」となりますね(笑)。感情に浸るというよりかは「ああ、曲できた、早く録らなきゃ!」って。悲しい曲でもハッピーになります。この感覚をなんて表現したら伝わるかなと考えてたんですけど、好きな人と初めてキスするときのワクワクあるじゃないですか。曲が浮かぶたびあれと同じくらいのテンションになります。どんなに悲しい曲でも、作っているときはハッピーというか。幸福感に満たされる感じがあって。

──なかなか経験のない感覚なので、興味深いです。

ツラい思い出も、歌になって出てきたときに「ありがとうー!」ってなりますよ(笑)。「これも歌にできるんだ、経験してよかった!」と思いますね。

コレサワ

今の私だったら他人として書ける

──そして、3曲目の「恋人失格」はみゆはんさんに書き下ろした楽曲のセルフカバーです。

みゆはんちゃんに「『たばこ』へのアンサーソングを書いてほしい」と言われたんです。まず、アンサーソングを自分で書くということがいいのかどうなのか、わからなかったんですよ。ほかの人が自分の中でのアンサーを書くものだと思っていたし、「自分が書いたらそれが答えになってしまうからいいのかな?」と思ったんですけど、同時に不意を突かれた感覚もあったというか。みゆはんちゃんが「たばこ」をすごく好きでいてくれて、私の曲を聴き込んでくれている、その思いが伝わったからやってみようと思って。みゆはんちゃんとの出会いがいい出会いだったからだと思うんですけど、すぐに作れました。

──そうだったんですね。

「たばこ」の歌詞をもう一度読み返して。あの曲を書いたのは10代のときだったから、今はもう自分の曲から離れた感覚もあったんですよ。「今の私だったら他人として書けるな」と思えたというか。昔の私の曲すぎたから、本人感がなかったんですよね。曲の中では「恋人失格」の主人公をあまり悪いようにはしたくなかった。「お前もつらかったんだな」と周りが言ってくれるような人にしたかったので、それがちゃんとできていたらいいなと思います。

──「たばこ」に改めて向き合ってみて、何か発見があったりしましたか?

エロに憧れてたんだなって(笑)。

──エロですか?

「たばこ」を作った20歳前のとき、お客さんがおじさんしかいなかったんですよ。おじさんはかわいい女の子が好きだから、ほかのかわいい女の子の歌はすごい聴いてくれるのに、私のときは携帯電話を触ったり寝たりする人もいたんです。そういう人がどうやったら自分の歌に振り向いてくれるかって考えたら、エロいことを歌えばいいのかなと。だから「キスは短めが好き」とか、ちょっと想像したらエロいフレーズじゃないですか。そういうものを入れたがってたんですよね。なので、今若い女の子や男の子が「たばこ」をたくさん歌ってくれるのは「なんでこの曲なんだろう?」という感覚で、その不思議な感じは自分の中にずっとありますね。答えはまだ全然出てないです。

──では、サウンド面で「たばこ」へのアンサーソングとして意識したことはありますか?

コードはなるべく似せました。あとDメロの刻むリズムを一緒にしたり、語尾の音を何度下げるかみたいなところを一緒にした部分もあって。双子感は作りたかったから、こまごまと遊び心を入れた感じですね。

──レコーディングはいかがでした?

「恋人失格」は淡々と、気持ちを入れすぎずに歌ったほうが聴きやすいかなと思ったので、そんなことを考えながらやりました。ただ、最初のセリフが最後にもう一度出てくるので、そこは気持ちを変えて歌ってみました。

半裸ですよ。作ってるとき

──「帰りたくないって」はピアノの音色が印象的な、疾走感のあるナンバーです。

これは最後にできた曲ですね。歌詞に書かれているような元カレの家に荷物を取りにいくこと、自分は経験したことがあるんですけど、そのときのなんとも言えない……まだ彼のことが好きだったら、帰りたくなくなるじゃないですか。でもそこで引き止めるような男はイヤ、だけど帰りたくなくなるっていう、自分との戦いを歌っている歌です。

──さわやかですごく気持ちよく聴ける曲ですよね。

うれしいです。曲も短いですしね。あとレコーディングでは声質を変えて歌を重ねたりとか、Dメロでピッチを変えたりとか。この曲では自分のやってみたいサウンド作りをしてみました。作品の真ん中に入っている曲ですし、遊び心のある感じにしたかったです。

──そして、続く「センチメンタルに刺された」ですが、この曲はいつになくロックテイストが強くて、とても新鮮に感じました。

みんな「新しいコレちゃんだね」って言ってくれるんですけど、新鮮な感じで聴いてくれるのが意外で。

──コレサワさん的には意外なんですね。

私的には「SSW」(2017年)と同じラインにある曲だと思ってたんですけど、それよりももっとロックな曲だと皆さん捉えてくれて。それはアレンジを出羽良彰さんがやってくださって、私では思いつかない細かな音や効果音とか、サウンド的に楽しめる作品になっているからかなって。

──私も、コレサワさんの中のロック魂が湧き出たのかと思っていました。

全然。この曲お風呂入る前に思い付いたから半裸ですよ、作ってるとき(笑)。服を脱いでる途中に浮かんできたから、ロックというよりも夜中にノリノリで作った感じ。ライブではみんなで騒げる曲だなと思います。

──「えーん!」でシャウトするのが斬新ですよね。すごく気持ちいい。

それは、スタッフさんにもほめてもらいました(笑)。

コレサワ

──失恋したときに、友達がカラオケで歌ってくれたらすごくスカッとする曲だと思います。

そう、失恋したら友達や本人がカラオケで大熱唱してほしいなというイメージは確かにありました(笑)。

──1番と2番の歌詞では感情が揺れ動いているというか、歌の中の主人公の気持ちが違うなと思ったのですが、歌詞を書くときに気にかけていたことはありますか?

失恋したあとって、好きだった人を嫌いになりたいけどでも好き、でも嫌い……みたいなことを繰り返しながら気持ちを落ち着けると思うんですけど、私はいつも強気な歌詞を書いちゃうことが多いから、女の子の気持ちの繊細な移り変わりを表したい思いはありましたね。そう、コロコロと変わる感じを出したかったんです。

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ホントは嫉妬深い私