音楽ナタリー PowerPush - コレサワ
ポップは絶対!ポジティブに歌うあたしの日常
全部ポジティブ変換
──歌詞のストーリーで言うと、お互いの趣味が相容れないすれ違いの切なさみたいなものがずっと続くけど、最後は「あたしの好きなバンドがいつかとっても売れたら 君の好きなバンドにいつかぜったいなるから」っていう女の子側のすごく前向きな思いで締められている。一気にポジティブな物語へ展開して曲が終わるのが意外だなって。
私、すごいポジティブなんです。もう全部“ポジティブ変換”できるんですよ。それにハッピーエンドじゃない物語もあんまり好きじゃないから、こういう終わり方にしました。
──この曲のように、実際にあったエピソードを音楽で表現することはよくあるんですか?
けっこう実体験は参考にします。あとは友達から聞いた話をストーリーの元にしてみたり。自分のエピソードだけじゃやっぱり物足りないんで(笑)。女の子同士の会話って面白いし、普段から友達の話は大事に聞いてますね。
──常にアンテナを立てて。
そうですね。女の子1人ひとり、それぞれ感じることって違うし。いろんな話を覚えるようにしてます。
誰かに伝えること
──そして次の「笑えよ乙女」はガラッと曲調が変わりますね。静かな弾き語りで始まって、曲が進むにつれてコーラス、バンドサウンドとどんどん音が重なるドラマチックな展開の曲です。まず、タイトルはなぜ「笑えよ乙女」にしたんですか?
この曲を作った当時、けっこう笑えなかったんですよ、自分の人生。1カ月くらいバイトもせずどこにも行かず、ほんとにダメ人間な生活を送って引きこもってたんですけど、「このままじゃヤバいわ」と思ってこの曲を作りました。「人生短いから、ずっと暗い気持ちでいるよりは笑いたいな」って思いを込めて。
──やっぱり最後にはポジティブ思考になれるんですね。
そうですね(笑)。
──この曲はミディアムテンポで、コレサワさんの歌声をじっくり聴くことができますね。歌うときに何か気を付けてることってありますか?
誰かに伝えることを意識しています。だから、レコーディングでは歌入れがすごい大変でした。ライブハウスで歌うときは人の顔が見えて「今日女の子多いな、届くといいな」とか「今日は男の人多いけど伝わるといいな」とか考えながら歌うんですけど、レコーディングは伝える“相手”がマイクだから難しかった。最初はうまく歌えなかったんです。でも、そのことをミュージシャンの友達に相談したら「マイクを誰かの耳だと思って、耳元で歌ってあげるみたいに歌えばいいよ」って言われて「ああ、そっか」って思えたんですけどね。
犬が好き
──「わんちゃん」はすごくポップな楽曲で、歌詞はいろんな受け取り方ができますね。
そうですね。聴いてくれる人それぞれに解釈や浮かぶイメージが違ったりするのかなって。
──「かわいいわんちゃん」に触りたいけど「もうあなたはあの人のもの」だと。この歌詞を見てコレサワさんは比喩的な表現が得意なのかなと思ったんですけど、これは意識して?
いや、意識してないです。この曲5分くらいでできたんですよ。上京して初めて作った曲なんですけど、なんというか……適当に作ったんです(笑)。だってふざけてるじゃないですか、「かわいいわんちゃん」なんて。だから「絶対怒られるなこれ」と思って作ったんですけど、ライブで歌ったらお客さんがこの曲をすごい好きになってくれて。
──そうなんですね。
私……犬がすごい好きなんですよ。地元にいたときは住んでる場所が田舎のほうだったんで、犬の散歩してるおじいちゃんおばあちゃんたちがわんちゃんを触らせてくれたんですね。だけど東京に来たら、きれいな犬が散歩してて「めっちゃ触りたいな」と思っても、飼い主さんが触らせてくれなかったりして。それがすごいショックだったんですよね。
──じゃあもう、この歌詞通りのエピソードがあったんですね。
そうなんです。
──コレサワさんがそうやって純粋に犬の話を歌にしたのに、受け手が例えば「これは誰かのものになってしまった、好きだった彼のことを歌ってるのかしら」とか解釈してしまうのが面白いですよね。そういうふうにいろんな解釈をされることについては、コレサワさんはどう感じますか。
作ってからいろんな人に「これってこういうことなんでしょ」っていろんな感想を言われるので、「その解釈すごいな」とか思ったりします(笑)。なんだろう、それは自分の予想してなかったものなので。でも逆に、そんなふうにして自分の言葉が人を惹きつけるなら、これからもこのままでいようかな(笑)。
簡単な言葉で、一緒に歩けるメロディで
──歌詞を書くときに意識したり、これは自分らしいなと思うポイントってあります?
普通の出来事を、聴いてくれた人が「そういう言い回しで表現するんだ」って新鮮に思ってくれるかどうかってことは考えるようにしてて。なんだろう、例えば4曲目の「洗濯物」とかもテーマは日常にあるものじゃないですか。それをいかにキュンとするシーンとして表現するかっていうことはけっこう考えてます。あと、自分が難しい言葉を使ってる音楽をあんまり聴かないんですよ。なのでいかに簡単な言葉で……中学生でも、小学生でもわかる言葉で人がゾクッとするような文章を作れるかっていうのは考えてやってます。私、THE BLUE HEARTSさんとかきゃりーぱみゅぱみゅちゃんの音楽にすごく憧れていて。
──と言うと?
なんというか、2組ともめっちゃわかりやすいじゃないですか、歌詞もメロディも。そういうスタイルにすごく憧れてるんです。だから作詞だけじゃなくて作曲するときも、お客さんと最後まで一緒に“並んで歩ける”メロディであることを心がけてて。聴いてる最中に取り残すというか、お客さんがついて来れなくなっちゃうのが好きじゃないので……あんまりごちゃっとした難しいものは作らないように。というか、作れないですけどね(笑)。「お客さんはついて来れるかな」「聴きやすいかな」ってことをいつも考えてますね。
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収録曲
- 君のバンド
- 笑えよ乙女
- わんちゃん
- 洗濯物
- 君のバンド(カラオケ)
コレサワ「君のバンド」レコ発
~君の好きなバンドになりたいツアー~
- 2015年6月10日(水)愛知県 名古屋栄TIGHT ROPE
- <出演者>
コレサワ / and more - 2015年6月11日(木)大阪府 knave
- <出演者>
コレサワ / みるきーうぇい / and more - 2015年6月21日(日)東京都 渋谷Star Lounge
- <出演者>
コレサワ / U sus U / and more
コレサワ
大阪出身の女性シンガーソングライター。日常の風景を独自の視点で切り取ったポップなナンバーを得意としている。2012年に「SUMMER SONIC」の「出れんの!? サマソニ!?」ステージに出演。2013年5月に初のワンマンライブ「お誕生日会」を東京・gee-geにて開催する。2014年、ミニアルバム「憂鬱も愛して」をライブ会場限定でリリース。同年11月にはワンマン公演「コレシアター」を東京・Star loungeで実施した。2015年4月に、初の全国流通盤であるミニアルバム「君のバンド」を発表。
2015年4月17日更新