音楽ナタリー Power Push - 昆夏美

ミュージカル俳優とアーティスト 2つの顔持つ彼女の新境地

昆夏美が8月5日に4thシングル「ISOtone」をリリースする。2011年にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のヒロイン・ジュリエット役でミュージカル俳優としてのキャリアをスタートさせた昆。2013年にはアーティストデビューも果たし、現在はミュージカル俳優とアーティストという2つの顔を持ちながら活動している。シングル表題曲はテレビアニメ「ケイオスドラゴン 赤竜戦役」のオープニングテーマで、彼女はこの曲で初めてロックナンバーの歌唱に挑戦した。この作品のリリースを記念して、音楽ナタリーでは彼女にインタビューを実施。歌手を目指したきっかけから新境地を開いた「ISOtone」の制作の背景までを聞いた。

取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 小坂茂雄

自分の名前で歌が出せるってことが不思議

──昆さんはミュージカル俳優とアーティストという2つの顔を持っていますが、歌の道を目指すきっかけはなんでしたか?

私、幼稚園のお遊戯会とかで、人一倍大きな声を出して歌うような子だったんです。何かきっかけがあったわけではなくて、小さいときから人前に出て歌ったりするのが好きだったみたいで。

──そうなんですね。では、本格的に歌手を目指そうと思ったのはいつ頃のことだったんですか?

昆夏美

高校進学のタイミングですね。最初は公立の高校に進学しようと思っていたんですけど、音楽を専門的に学べる高校があるってことを知って。どんな形であれ音楽をやっていきたいなって思っていたので、進路を変えてそれまで通っていた塾も辞めて、音楽学校の受験勉強を始めたんです。そうして希望の学校に入学できたときに「ここに入学できたんだからなんとしてでも夢を形にしたい」っていう気持ちになりました。

──音楽学校の中でも、ミュージカルコースに通われていたんですよね。もともとミュージカルが好きだったんですか?

そうですね。小学生のときから劇団に入っていたので、自然とミュージカルの道を意識するようになりました。なので、歌手としてデビューしたときも「昆夏美」という自分の名前で歌が出せるってことが不思議でした。こんなふうにナタリーさんで取材していただけるなんて、まったく思ってなかったです(笑)。

──特に影響を受けたミュージカルはありますか?

4歳か5歳くらいのときに観た「セーラームーンミュージカル」ですね。当時はそれがミュージカルだってこともわからずに「このお姉さんたちみたいに私も歌って踊りたいな」って思っていました。大人になってからは、「レ・ミゼラブル」に一番影響を受けたと思います。

──高校の授業で特に印象に残っているものはありますか?

楽典っていう授業があって。音楽の理論を学ぶんですよ。和音の種類とか、音階の名前とか。あといきなり楽譜を渡されて、視唱をしたりだとか。30秒で楽譜を見て歌わなきゃいけなかったりするんです。……この授業あんまり好きじゃなかったんですけど(笑)、音楽専門のところに入らないと学べないものなのかなと思うので、今になって「もっと勉強しとけばよかったな」って思いますね。

運命って秒単位で変わっていく

──そうしてそのまま同じ系列の大学に進学されて。大学の授業はミュージカルの勉強をさらに深めていく感じだったんですか?

大学の授業はほぼ実技でしたね。グループでミュージカルをやるとか、そういう授業が多くて。大学にはスタジオがあるんですよ。それをいつでも使ってよかったので、自分たちがスキルアップするためにはとてもよい環境だったなって思います。放課後にみんなでスタジオに残って授業のことを話し合って練習したりだとか、そういう思い出がありますね。

──学生時代に学んだことで、今の仕事に生かされているものってありますか?

私の出身校では第一線で活躍されているプロの方が講師として教えてくださっていたので、現場の意見を聞けるっていうのはありがたかったなあと思います。でもやっぱり学ぶより、自分で実践して得るもののほうが多いなとは思うんですけど、学生時代にそういう環境にいられたことはよかったなって。

──そうだったんですね。そしてプロの道へはスムーズに進まれた印象ですが、デビュー前はどのような思いを持っていたんですか?

昆夏美

15歳くらいからデビューを目指してはいたんですけど、オーディションを受けても落ちてしまったりしていたから「プロになるにはどうしたらいいのかな?」っていうのは常に考えていました。夢を追い続けるのはいいことだけど、学校を卒業したときに職業がないっていう状況が嫌だったんです。なので、大学2年生の終わりまでに芸能事務所に入ろうって自分の中で目標を決めました。事務所に入れたとしてもすぐにデビューできるとは思ってなかったし、卒業までの2年間っていう猶予を自分に与えたいなって考えて。で、大学1年生は学校を楽しんで、2年生の初めに東宝芸能のオーディションを見つけて受けたら運よく事務所に入ることができて。

──しっかり考えてたんですね。

ダラダラしてしまうのがいやだったんですよ。高校生のときに音楽の表現者としてデビューしたいと決めたけど、どこかで区切りをつけないとダラダラしちゃう性格だっていうのも分かっていたので。でも大学2年のときに東宝芸能のオーディションを見つけていなかったら私の人生は変わっていただろうし、デビュー作になった「ロミオ&ジュリエット」(2011年)のヒロイン役オーディションだってそう。本当に、運命って秒単位で変わっていくんだなって思います。

ニューシングル「ISOtone」2015年8月5日発売 / TOHO animation RECORDS
初回限定アニメ盤 [CD+DVD] 1836円 / THCS-60057 / Amazon.co.jp
初回限定アーティスト盤 [CD+DVD] 1620円 THCS-60058 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 1296円 / THCS-60059 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. ISOtone
  2. Sleep without a memory
  3. Despair Syndrome
  4. ISOtone(Instrumental)
  5. Sleep without a memory(Instrumental)
  6. Despair Syndrome(Instrumental)
初回限定アニメ盤DVD収録内容
  • ノンクレジット・オープニング
初回限定アーティスト盤DVD収録内容
  • 「ISOtone」ミュージックビデオ
昆夏美(コンナツミ)

昆夏美1991年6月28日生まれのミュージカル俳優、アーティスト。2011年9月ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のヒロイン・ジュリエット役でプロデビュー。その後も「ハムレット」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」など、多数のミュージカル作品に出演する。2013年4月にテレビアニメ「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」のオープニングテーマ「私は想像する」でアーティストデビュー。その後も「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」第2期オープニングテーマ「PROMPT」、テレビアニメ「一週間フレンズ。」のオープニングテーマ「虹のかけら」をシングルリリース。2015年8月にテレビアニメ「ケイオスドラゴン 赤竜戦役」のオープニングテーマである「ISOtone」を表題曲とした作品を4thシングルとして発表する。