近藤晃央「存在照明」インタビュー
今の僕は敗者だと思っている
──続いてはニューシングルについて伺わせてください。表題曲の「存在照明」は、疾走感のあるアッパーチューンに仕上がっていますね。
もともと去年にアニメのオープニング用としてワンコーラスだけ作っていた曲なので、今までの僕の曲にないような前向きな内容になっています。そのときは結局お蔵入りになったんですけど、作った当初から評判がよかったし、今年5周年ということで、ブラッシュアップして出すことになって。制作を1年前の自分から引き継ぎました。1番は去年書いたものをそのまま生かしているんですけど、最近書いた2番以降は曲の意味合いが1番とは違っていて。1番はすでに震え立っちゃっている感じで、2番はこれから自分を奮い立たせようとしている。
──タイトルからして、近藤さんが自分自身についての宣言を歌っている曲なのかなと思いました。
そうですね。特に「戦いに敗れた不成功者と」のところの歌詞には自分を反映していて。今の僕は敗者だと思っているんです。でも、同時にまだ挑戦者でもあるし、勝者になれる可能性がある。自分自身この歌詞を書いたときに「なんかわかんないけど、こんなこと言われたらみなぎってくるわ!」ってなりました。
──近藤さんらしい、逆説的な表現ですね。
人間は物理的に光を放つ生き物ではないですけれども、意思という光を放っていると思っていて。夢とか目標、憧れでもノルマとか。でもそれって遠いから輝いて見えるけど、いざ手に入れてみると「こんなものか」と思うものばかりなんですよね。終わってみると、経験のほうが自分の財産になってるという。結果よりも過程の方が大事だなんてきれいごとは全然思わないですけど、結果を出した人間はたぶん過程の方が重要で。それが僕にとっては電球のように見えるんです。あるかないかと言うより、点けるか点けないかで、実はずっとあるもの。それが意思だと思うんです。
──聴いた人に突き付けるものがありますね。編曲はこれまでもタッグを組んできた江口亮さんが担当されています。
昨年ワンコーラスだけ作ったときから江口さんにお願いしていたんです。今回フルコーラスを作ることになって、いったん江口さんからデータをもらって自分でフルコーラスをアレンジしたものをもう1回江口さんに投げて、というやり取りをさせてもらいました。最後になんの楽器を足そうかという話をして、江口さんは「シンセがいいんじゃないか」という意見だったんですけど、俺は「生っぽいほうがいいからバイオリンがいいです」と答えて。いい意味で楽曲のイメージと遠う楽器を選んだので、存在感があると思います。
本当にやりたいことが見えてきた
──カップリング曲の「ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ」は、近藤さんが初めてアレンジを1人で担当した曲です。
もともと別の作品用に作っていた曲なんですが、結果的にシングルの表題曲でもよかったなと思えるものになりました。これも逆説的な表現で、僕の中で「もうこの人とは一緒にいられない、わかり合えない」と思った人って、たぶん一番わかり合えてる人だと思うんです。深い関係の中でたくさんわかり合ってきたからこそ、逆にわかり合えなくなったんだろうと。サビで言いたいことの核心を突いているから、あとはそれに伴う情景をあまり具体的にならず表現できたらいいなあと思って、心地よいワードを探しながら書いていった感じですね。
──この曲を聴けば、別れた相手への理解につながるかもしれないですね。
そもそも、すれ違いというものは2人が歩み寄らないと起こらないことですから。
──ご自身で編曲されたこともあって、サウンド面にもこだわりが感じられます。
エレキギターがすべてを引っ張るみたいな感覚で、最初にエレキの音色だけで20trぐらい使ってデモを作りました。そこからどうしても残したいフレーズ、外してもいいフレーズを三井律郎(LOST IN TIME、la la larks)くんと相談しながら一緒に選んでいって。ギターのフレーズが全部完成したあとに、自分でピアノとドラムを打ち込みました。レコーディングのメンバーはいつもライブで一緒にやっている人たちなので、わがままをいっぱい言わせてもらいました。それと、僕は編曲を勉強してきたわけじゃないんですけど、周りには1人で何役もできるようなミュージシャンが多いので「そういう環境にいたら、そりゃ覚えられるよ」って思いました。楽しかったですね。
──三者三様な曲が収録されたシングルになりましたね。さらに通常盤には初ライブで1曲目に演奏した「めぐり」が、ボーナストラックとして収録されています。
アコギを弾いているのはこの曲だけなので、今回のシングルに弾き語りアーティスト感はまったくないという。昔はギターの弾き語りだけで成立することを前提に作った曲が多かったんですけど、今は「曲ができたあとに何の楽器を入れるか」という発想になってるので。「めぐり」は昔の指標としてシングルに入れてみました。
──ジャケットに使われている電球を使ったオブジェもインパクトがあります。
アートワークは僕とアートディレクターの2人で考えたんですけど、200個ぐらいの電球をガラスの箱に入れて1個だけ明かりを点けて。やっぱり白熱灯の灯りはいいですね。もともと僕は電球フェチで、今回使った電球に私物の電球も入っています。グッズでも照明のデザインを使ったものがあるので、このジャケットのアイデアを出したときにスタッフから「また電球か!」みたいな反応されたんですけど(笑)、「照明」を掲げたタイトルなので、ぴったりでしたね。
──9月23日に東京・Zepp DiverCity TOKYOで開催されるメジャーデビュー5周年ライブ「KAIKAKI」についても聞かせてください。今回はフルバンドにストリングスカルテットを加えた9人編成でのワンマンになるということで、期待も高まります。
シングルのリリースより先にこのライブの開催が決まったんですが、正直なところラストライブにするつもりだったんです。とは言え別に音楽を辞めるという話ではなく、5周年というタイミングで近藤晃央というプロジェクトを1度終わらせてみるのもいいかもしれないと思って。結局まだ結論は出ていないんですけれども。
──それは決してネガティブなお話ではないんですよね?
はい。メジャーで活動してきた5年間で本当にやりたいことがちょっとずつ見えてきた気がするんです。それと、この5年で近藤晃央としてシングルで発表できることの容量は使い切ったかな、みたいなのもあって。そのうえでいろんな選択肢があると思うので、これから1つひとつ自分の中で決めていきたいと思います。
- 近藤晃央「存在照明」
- 2017年9月13日発売 / アリオラジャパン
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初回限定盤 [CD+DVD]
2000円 / BVCL-827~8 -
通常盤 [CD]
1300円 / BVCL-829
- 初回限定盤CD収録曲
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- 存在照明
- ベッドインフレームアウト
- ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ
- 存在照明 -instrumental-
- ベッドインフレームアウト -instrumental-
- ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ -instrumental-
- 通常盤CD収録曲
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- 存在照明
- ベッドインフレームアウト
- ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ
- めぐり - Bonus Track -
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 存在照明 Music Video
- ベッドインフレームアウト Music Video
- メイキングムービー
- 近藤晃央「存在照明」リリース記念イベント
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2017年9月16日(土)
神奈川県 タワーレコード横浜ビブレ店
START 14:00
内容:ミニライブ&特典会 -
2017年9月17日(日)
愛知県 新星堂アスナル金山店
START 14:00
内容:ミニライブ&特典会
- 近藤晃央5th Anniversary Live 「KAIKAKI」
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2017年9月23日(土・祝)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 16:00 / START 17:00
- 近藤晃央(コンドウアキヒサ)
- 愛知県出身のシンガーソングライター兼グラフィックデザイナー。2012年9月にシングル「フルール」でメジャーデビューした。その後テレビアニメ「宇宙兄弟」のエンディングテーマ「テテ」、テレビアニメ「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のエンディングテーマ「ブラックナイトタウン」、ドラマ「名もなき毒」の主題歌「あい」、ドラマ「ペテロの葬列」の主題歌「心情呼吸」など数々の楽曲を発表。グラフィックデザイナーとして自身のグッズやほかのアーティストの作品のデザインを手がけているほか、フリーペーパー「OKMusic UP's」ではグラフィックの連載を持っていた。2017年9月にメジャーデビュー5周年を記念したシングル「存在照明」を発売。同月にワンマンライブ「近藤晃央5th Anniversary Live『KAIKAKI』」を開催する。