米米CLUB|エンタテインメントへの愛を表現した2020年とニューシングルを語る

規模のでっかいことをかましたかった配信ライブ「OMUSUBI」

──「氣志團万博」の経験が、10月17日の米米CLUBとしては初の無観客配信ライブ「OMUSUBI」に生かされたわけですね。

石井 そう。まずは何か規模のでっかいことをかますのがいいんじゃないかと思ったわけですよ。そこでこのライブのモチーフである地球、ギャラクシーという発想が湧いてきて。

──地球全体を捉えた映像からドラマチックに始まり、ステージセットや衣装にも地球のモチーフが使われていましたが、もともと予定されていたツアーもそうだったんですか?

BON(B)

BON いえ。配信が決まってから急にテッペイちゃんが“地球”って言い出したんです(笑)。

石井 頭の地球の映像から「俺たちの思い」でスタートするとカッコいいんじゃないかと思って。

──「OMUSUBI」と地球って、結びつきにくいような気もしましたが?

石井 観る側の環境はPCだったりiPhoneだったり、バラバラなわけじゃないですか? 途中で止まっちゃったりとか、観づらい場合もあるし。だったらここはド頭に地球をドーンとかまして「これから何が起きるんだろう」と思わせたかったんですよ。あと、コロナ禍って日本だけの問題じゃないということを意識して。

BON そんな深いメッセージがあったんだ?

石井 そうだよ。あと、おにぎりではなくて、「OMUSUBI」にしたのは「結」という意味も込めているんです。

──予定されていたツアーの内容と配信ライブは違うんですね。

石井 ツアーの構成は多少は考えていたけど、まあ難しいだろうなと思っていたので、発想を切り替えて配信にふさわしいセットリスト、内容を考えたんです。

──デビュー35周年という意識はありましたか?

石井 あまりなかったですね。アニバーサリーに関してはもともとそれほど積極的なバンドでもないし。

BON そうですね。35周年というのも中途半端だし。

石井 ツアーの理由付け程度ですね。

──デビューシングルの「I・CAN・BE」を披露してくれたのは往年のファンには好評でした。

石井 まあ、そこから始まったバンドですからね。

BON 35年前に。

──石井さん、BONさん、ジョプリン得能(G)さん、ジェームス小野田(Vo)さんの4人はそれ以上の40年来の同級生ですよね。

石井 そう。自分たちでもビックリですよ。まさかこんなに長く続くとは思ってもみなかった。

BON 10代から知っている仲ですから、気持ち悪いくらい続いている関係なんですよ(笑)。得能なんて信じられないでしょうけど、昔は腰まであるロングヘアだったんですよ。

石井 そうそう。しかも、あの頃はけっこうツッパっていたし(笑)。

米米らしい楽しさを届けたショートムービー「男はつらいぜ」

──そんな長年の付き合いのメンバーが総出演したショートムービー「男はつらいぜ」を配信ライブの途中に挟んだ意図は?

石井 配信は観る側の集中力が続きにくいところがあるから、中盤で作り込んだショートムービーを入れて、飽きさせないようにしたんです。ケガでライブに出演できなくなったMINAKO(Dance)も「男はつらいぜ」には登場しているから、ライブでの不在を結果的に補えたんじゃないかと。

BON 配信ライブが決まってすぐにテッペイちゃんが「映画を撮ろう」と言い出したんですよ。

カールスモーキー石井(Vo)

石井 米米は面白いバンドだと言われていても、何か仕掛けがないとお金を払って観てくれる人は納得してくれないだろうと思って。ミュージカルというアイデアもあったんですけど、無観客のステージでは盛り上がらない気がして短編映画になった。

BON テッペイちゃんが構想を練って台本を書いてきたんですが、RYO-J(Dr)なんて、ちゃんと台詞を体に入れてきててビックリしましたよ。でも、勝手に九州弁でやろうとして監督に現場で直されてた(笑)。

──「男はつらいよ」を下敷きに米米らしいひねりを効かせたストーリーと演出でしたが、メンバーの皆さんが喜々として演じているのがわかりました。

BON そういうときに「自分も何かやらなくちゃ!」と思ってしまうのが米米のメンバーなんですよね。音楽も金ちゃん(フラッシュ金子 / Key)がばっちり作ってくれたんですけど、得能が「俺もやる!」と言い出して監督を困らせたり(笑)。

石井 得能はデモまで作ってきましたからね。あれは困った(笑)。

──米米CLUBの母体となった映画研究会「A-Ken」出身の血が騒いだんでしょうか?

BON そうでしょうね(笑)。そういうところに異様にやる気を見せるのが米米なんですよ。

石井 BIG HORNS BEE、MATARO(Per)、MACHICO(Cho)、テキーラまさはる(Cho, Dance)を含め今の米米CLUBのメンバー全員が実にいい配役で出ているでしょ。

BON みんなコロナでスケジュールが空いていたのもあってね。柴又の寅さん記念館にある「くるまや」のセットで撮影させてもらったり、帝釈天や柴又ロケも楽しかった。

石井 ただのパロディにはしたくなかったので、俺の役も諜報部員にしたり、寅さんに敬意を払いながら米米らしい楽しい内容にしたかったんですよ。

BON 監督兼主役のテッペイちゃんも生き生きしていたし、現場の判断も的確でさすがでしたよ。

──「OMUSUBI」のMCのネタじゃないですが、そこは石井さんリスペクトでしたか?

BON そうですね(笑)。MINAKOちゃんのおばちゃん役やBE(G)のパンクの工員役も素晴らしかったし、なんのかんのみんなこういうことが好きなんですよね。「こんなことやるのはイヤだ」っていうメンバーは1人もいない。

──そういう米米CLUBを配信で観ることができたのは、35周年らしい収穫でもあった気がします。

BON 確かに。

石井 そうかもしれない。米米って昔から「こんな楽しみ方もあるよ」ということを発信してきたバンドだから、配信でもほかとは違うことがやりたかったし、ライブと「男はつらいぜ」でそれは提示できたかなとは思いますね。

「愛を米て」は生きていくことに優しく寄り添う歌

──1月6日にリリースされる新曲「愛を米て」は、映画「大コメ騒動」の主題歌ですが、シングルリリースは2013年の「どんまい」以来になりますね。

石井 映画の主題歌のお話をいただいて、大正時代の米騒動のコメディだというから「米」が付いたちょっとふざけた曲にしようと思っていたんですよ。ところが、映画を観たら確かに笑いあり、涙ありなんだけど、これはおふざけとは違うなと。題材が日本の女性が初めて起こした市民運動だと知って、急遽曲を変更したんです。

BON 金ちゃんのスタジオにみんなで集まって、テッペイちゃんがギターを弾き出して、最初はザ・バンドみたいな感じだったんですよ。

石井 それを金ちゃんがさすがの見事なアレンジでバラードにしてくれました。

BON 映画のエンディングでこの曲が流れると、けっこう感動的なんですよね。あれはうれしかった。

石井 本木克英監督も曲の使い方を考えてくれたと思いますね。映画の内容とも重なりますが、生きていくことはきれいごとばかりじゃないけれど、そこで「がんばれ」と励ます感じではなく、優しく寄り添うような歌にしたかった。かつて日本の女性が勇気を持って戦ったこと、それは今の時代にもつながっていますからね。

BON 自分たちの音楽が使われているからというわけではなく、ホントにグッとくる映画なんですよ。そういう映画に関われてうれしかったですね。

石井 映画に出てくる女性がみんな強くてたくましくてね。女性にエールを贈りたくなったんですよ。

──カップリング曲「四季狂騒」も「大コメ騒動」からインスパイアされてできた曲とか。

石井 ここはおふざけは封印して、映画の背景が大正時代なので日本的な旋律やアレンジを施してみました。もう35年もやってると、ヒットするとかは別にして、僕らは僕らでやりたいことをその都度やっていこうと。

BON そうだね。ストリングスを使って思いきりゴージャスに仕立てていますが、映画音楽も手がけている金ちゃんらしいアレンジも聴きどころですね。

──「男はつらいぜ」の劇中で流れていた曲「俺は河原の諜報部員」のミュージックビデオの収録もコアなファンにはうれしいですね。

石井 僕の無駄な台詞が満載ですから、マニアの方はぜひご覧いただければ(笑)。

BON 「どんまい」(2013年リリースのシングル)の初回限定盤DVDの「裏どん米」のことは忘れてもらって(笑)。

──今年は秋にツアーがアナウンスされていますが、2009年以来のニューアルバムの予定はありますか?

石井 それは僕らとしても強い希望としてありますよ。

BON コロナでまた自粛しなきゃいけないかもしれないから、時間はあるし、「レコーディングでもするか」という気になるかな?

石井 なるかもしれないよ。2月にはコンサートをライブハウスで観てもらえる生配信イベントもあるし、疫病が早く終息して、秋には米米らしいパーッと楽しく騒げるステージをしたいですね。

ライブ情報

米米CLUBの生配信コンサートをライブハウスで! 〜自由の扉〜

米米CLUBのコンサートの模様を東名阪のライブハウス3会場に生配信!

  • 2021年2月1日(月)
  • 東京都 duo MUSIC EXCHANGE
  • 愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
左からカールスモーキー石井(Vo)、BON(B)。