ナタリー PowerPush - 米米CLUB
復活後2枚目のアルバムは“現役感”満載のゴージャス作
人生経験の浅いバンドがこういうの歌っても
──「乾いてるんだよ!」や「乾燥してんだよ!」という泥酔野郎の戯言は?
BON あれは、河合わかばがトロンボーンを吹いているという意味と、乾燥=間奏のトリプルミーニングがあるんですよ(笑)。
石井 実際、オジサンたちは乾いてますよ。いつリストラされるかわからない、そんなオジサンたちの苦境を魂を込めて歌いました!
──そういう世相や時代の空気がなにげに注入されているアルバムでもある、と。
石井 そうそう。世相を「泥酔」という情景から切り取ったわけですよ。
BON 「アイム」を「愛夢」と書くセンスがテッペイちゃんならではですよね。
──「どこのご関係?」も、社会派っぽい歌詞といえるんですかね?
石井 これもオレオレ詐欺とか最近の不穏な空気が関係してますね。この歌詞でも言ってますが、「ウマイ話」には裏がありますから。
BON これは唯一歌詞が先にできていた曲なんですよ。他にもアルバムには入らなかったんですけど、金ちゃんがボーカルの「濃い恋がしたい」とか、得能ボーカルの「燻製になりたい」とかあったんですけどね(笑)。
石井 やっぱり、乾きは今回のテーマとしてあったね。そこには温暖化、砂漠化現象という地球規模の危機も……。
──話を無理矢理大きくしてませんか?(笑)
石井 してます(笑)。
BON 何か事件が起きたり、自分が見聞きしたことが翌日には歌詞になってるんですから、テッペイちゃんは面白いですよ。そういう泣く泣く落とした曲やその一部はもしかしたらライブに反映されるかもしれません。
──大人の視点が入っているところは、さすがはキャリアの長いバンドですね。
石井 年の功っていうんですか? ま、人生経験の浅いバンドがこういうの歌っても説得力ないでしょうからね。
大所帯の贅沢感は米米の一番の武器
──後半の「SUNRICE」は、ジェームス小野田のスケール感溢れる存在を強調したファンク/ゴーゴー仕立て。
石井 これぞジェームス小野田の真骨頂ですね。なにか神々しいまでの威圧的な存在感が曲にも出てる。
BON 昔も宇宙をテーマにしたライブをやったことがあるんですけど、ファンクと宇宙ってP-FUNKの例にもあるように妙に合うんですよ。
金子 やっぱり米米CLUBのような大所帯のバンドでやるファンクの醍醐味ってありますから。ホーンのBIG HORNS BEEの連中も含め、せーので出す音の迫力はとてつもない。
石井 ホーンがいてダンサーがいてっていう大所帯の贅沢感は米米の一番の武器でもあるし、それでこそできる音楽もあるんですよ。
──米米のような大所帯バンドの奏でる音の厚みと華やかさは、他ではちょっと味わえないですよね。
金子 ライブでお客さんが踊ってくれたり、盛り上がっている光景を見ると、やっぱりプレイヤーとしてもうれしいですからね。
──そして「SPACY ROADSTER」はZZトップを彷彿とさせるスペイシーなロックです。
BON この曲のアレンジは奇才ジョプリン得能が担当したんです。
金子 ギターのリフが主役の米米にしては珍しいタイプの曲なんで。こういう男臭いロックは今までなかったから新鮮ですね。
「080808」はシングルを切らなくてもよかったんじゃないか(笑)
──「愛の銀河旅行」はシュークリームシュのミナコさんがボーカルですが、歌詞がちょっとエロいのでは?
石井 ミナコが歌うならインパクトが欲しいじゃないですか。「女性の優しさを歌います」とか、そんなのどうでもいいですから(笑)。これは、愛の鞭です。
金子 本人、相当イヤがってましたけど(笑)。
石井 衣装もなるべく人間離れしたものを考えてますから。
──そういうところに、いかに面白く、楽しく、見せるか、聴かせるかに情熱を注いできたバンドの自負、誇りを感じます。
石井 そこだけは外せない。メンバーが多少イヤがろうが、恥ずかしがろうが、面白くなればヨシという発想でずっとやってきましたから。だから、失敗もあります。こうしてアルバムが完成してみると、やっぱり「080808」はシングルを切らなくてもよかったんじゃないかとか(笑)。
BON 単独で聴くと違和感あったかな?
石井 誰かが止めるべきだったんだよ(笑)。でも、この曲ができたからこそ、アルバムがファンク色を強めていったわけだし、キーになった曲ではある。
──ラストは「俺たちの想い」できれいに締めましたね。
金子 再結成にあたり、みんなで集まって最初にできた曲が「俺たちの想い」だったんでこれは思い入れはありますね。歌詞もあの時のみんなの想いがそのまま出ているし。
BON と、同時に「FUNK野球」もできたんですけどね(笑)。
同窓会っぽさを払拭できるバンドの現役感
──再結成後にリリースした前作「komedia.jp」と今回のアルバムで一番違う点は?
石井 「komedia.jp」は再始動して初めてのアルバムだったので、ある意味どんな内容でも注目はされるじゃないですか。だから今回の「SUNRICE」は作品として中身が充実していないといけないというのはありましたね。
BON 米米らしさってなんだろうということをもう一度ここで確認しておきたかったし、いろんな味の曲が入っても自分たちの個性は失われないこともわかってきた。
石井 あと、下手に時代に合わせずに、自分たちの体温でいいと思う音楽やパフォーマンスをやっていこうと。再結成ってどんなバンドでも同窓会的に見えてしまうところがあるのは致し方ないけど、それを払拭できるのがバンドの現役感なんですよ。
──初回特典の「超得CD」に収録された曲の面白さとクオリティが、それを物語っていますね。
金子 昔ならライブだけで演奏してCDに入らなかったような曲が配信やこういう形で聴ける時代になった。
石井 「中央分離帯」とか「俺の背中についてきな」とかこっちも隠れた名曲揃いなんですよ。
BON 珍味盛り合わせで、もう一度呑み直すような曲ですけど(笑)。
石井 カラスミとクサヤでもう一杯いかが、と。
──こういう珍味系があってこそ、男前風な曲が生きる。そのバランスが米米のキモなんでしょうね。
石井 そうですね。CDも商品として魅力があるかどうかが問われている今、これはお買い得感ありますよ。いろんな味がこれでもかって盛り込まれてますから。「米米、変わってねぇなあ」って思われたら本望です。
CD収録曲
- SONG OF THE LIFE
- ふりむかないで
- ツイテケネエヨ!
- 愛夢泥酔野郎
- どこのご関係?
- 恋のギャンブル
- つ・よ・が・り
- SUNRICE
- SPACY ROADSTER
- 愛の銀河旅行
- 080808 (album version)
- 俺たちの想い
初回盤A付属DVD収録内容
- ~O'DOLL SUE CREAM SUE~恋のギャンブル
- ~O'DOLL SUE CREAM SUE~SUNRICE
- komemories Special Digest
初回盤B付属CD収録曲
- 見ないようにしてるんです
- FUNK野球
- なかよしレーズン
- 飴力 GAT'S 隙 DASH
- 中央分離帯
- 我慢の限界
- 俺の背中についてきな
- Driving My Johnny
CD収録曲
- 恋のギャンブル
- Shake Hip Hop! Fickle remix ~Remixed by DJ U-ICHI from HOME MADE 家族
- 恋のギャンブル (instrumental)
初回盤DVD収録内容
- Happy米米の日!! 0808ヒストリー
CD収録曲
- ふりむかないで
- Hard Shake Hip!
- ふりむかないで (instrumental)
- Hard Shake Hip! (instrumental)
初回盤DVD収録内容
- KOME BIZ Presents KOOL櫃
米米CLUB(こめこめくらぶ)
1982年に結成された唯一無比のエンタテインメントバンド。ボーカル、ダンサー、ホーン隊など総勢10名以上におよぶメンバーと、見せることに徹底した圧巻のパフォーマンスで注目を集める。1985年にシングル「I・CAN・BE」でデビュー。1992年発表のシングル「君がいるだけで」が大ヒットを記録し、同年の日本レコード大賞を受賞した。その後も国民的バンドとして人気を集めるも、1997年3月の東京ドーム公演をもって解散。その後は各メンバーがソロとして活躍し、2006年4月に期間限定での再結成を宣言。ファンからの熱い要望に応え、解散および期間限定での活動を撤回する。以降はリリースはもちろんのこと、奇抜なライブ企画を実施するなど、他のバンドの追随を許さない独自の活動を展開中。