ナタリー PowerPush - 米米CLUB
復活後2枚目のアルバムは“現役感”満載のゴージャス作
2006年に再始動し、多くのファンを歓喜に湧かせた米米CLUB。その稀代のエンタテインメント精神は、日本のバンド史上でも例のない楽しさにあふれ、熱狂的な人気を獲得。カールスモーキー石井とジェームス小野田という個性の強い二枚看板に、ファンクから歌謡曲まで旺盛に取り込んだ音楽性、ダンサーを配した踊れるステージなど、その多面的な魅力は枚挙にいとまがない。また、「浪漫飛行」や「君がいるだけで」のようなビッグヒットを連発しながら、笑いと諧謔性に富んだ音楽やパフォーマンスにも定評がある。再結成後のツアーや音楽にもその一筋縄ではいかない精神はおおいに健在。
「ふりむかないで」「恋のギャンブル」という2枚のシングルに続いてリリースされる2年ぶりのニューアルバム「SUNRICE」でも、米米らしい絶妙な味と技を披露。ポップで馴染みのいい曲だけで美麗にまとめるなど、「我々の辞書にはない」と言わんばかりのアルバムについて、カールスモーキー石井、BON、フラッシュ金子に訊いた。カールスモーキー石井の冗談多めの饒舌ぶりも楽しんでほしい。
取材・文/佐野郷子 インタビュー撮影/中西求
長すぎたレコーディングの後遺症が残ってます
──米米CLUBとしては、久しぶりの新作になりますね。
石井 去年は「つ・よ・が・り」と「080808(オヤオヤオヤ~?)」というシングルのリリースだけだったんで、お久しぶり感はあるかもしれませんね。
金子 アルバムのレコーディングは「080808」を出した頃からぼちぼち始めてはいたんですけどね。
BON もう長すぎてわかんなくなっちゃいました。
石井 今でも「本歌入れますよー」ってお声がかかりそうな気がする。
金子 僕もまだレコーディングの後遺症が残ってます。
石井 金ちゃんなんて、今もスタジオで何も映ってないPCをじーっと見ているらしいですよ(笑)。
──「秋の米米収穫祭」と称して、シングルとアルバムの3週連続リリースになるわけですが。
石井 ダウンロード時代とはいえ、米米のファンの場合はまだパッケージで持っていたいという人が多いんじゃないかなと。シングル「ふりむかないで」が通称イチライス、「恋のギャンブル」が通称ニライスと来て、アルバムが「SUNRICE」でサンライスと、米米らしいシャレっ気を効かせて。
──「SUNRICE」と書いて「サンライス」と読ませるセンスが米米ならではですね。
石井 新しい船出でもないけど、日がまた昇るみたいなイメージもあるし。「米」という文字も太陽の輝きにも似ているような気がして。米米ってそういうキーワードがあると、イメージを広げやすいんですよ。
恋はもっと肉食でいけ!
──シングルの「ふりむかないで」と「恋のギャンブル」は、米米のメジャー感がよく出ているタイプの曲ですね。
石井 今回はポップスとして聴きやすい曲をシングルにしてみました。再始動したときのシングル「WELL COME 2」や、去年の「080808」は、米米の面白い面を凝縮したタイプの曲でしたけど、この2曲は誰もが素直に楽しめる曲なんじゃないかと。
──「恋のギャンブル」はお得意の70'sテイストのきらびやかなディスコ風ナンバーで。
金子 この曲はライブでシュークリームシュと一緒に踊って楽しめるアレンジを考えましたね。
石井 歌詞は最近は草食系男子とか言われてますけど、恋はもっと肉食でいけ!(笑) と、そういうメッセージを込めて。
BON うちらは根っからの雑食系ですけどね。
石井 そう。なんでも食っちゃいますから、米米は。シングルのカップリングには、50歳近いメンバーが身体を張ってがんばった(笑)「Hard Shake Hip!」と、「アイコトバはア・ブラ・カダ・ブラ」でマッシュアップしたHOME MADE家族のDJ U-ICHIくんのリミックスバージョン「Shake Hip Hop!」を入れてみました。米米のライブでは一番盛り上がるおなじみの曲を今の感じでよみがえらせてみたんですよ。
初回盤特典は「こぼれた曲を収録したCD」
──10年ぶりのアルバム「komedia.jp」から2年。ニューアルバム「SUNRICE」は米米流のバラエティ色が満載ですね。
BON 要所要所でスタジオに入って、「やっぱりあの曲はない」「この曲は違う」とか言いながら、曲を作っていったんですけど、その作業がけっこうかかりましたね。
石井 みんな贅沢言うんですよ。ああでもない、こうでもないって。
BON だから候補曲はかなりあって、今回はアルバムの初回盤特典(タイプB)には配信限定だった曲と、アルバムからこぼれた曲を収録したCDが付くんです。
石井 こぼれた、なんて言い方はイケナイよ、BON(笑)。
BON そうだね(笑)。「超得CD~08080808」です。
石井 2枚組CDと言ってもおかしくない。プラス8曲なんて、おまけのレベルじゃないですよ。
BON 決してアウトテイクじゃないです。でも、タイトルだけ取っても「FUNK野球」とか、どうなんだろ?(笑)
石井 自分から言うなって。俺は聴いてみたいなー(笑)。
──それくらいたくさんの入魂の曲を作り、厳選したということですよね?
石井 そうですよ! あと、今年はツアーが決まっていたので、ライブを意識した曲というのはありましたね。
BON 10月から始まる17年ぶりのホールツアーの内容は確かに意識しましたね。今回は「宇宙からの地球編」と「地球からの宇宙編」という2パターンで、テーマだけはやたらデッカイんですけど。
石井 でも、今どきGoogleで宇宙から自分の家が見られる時代じゃない? 宇宙規模で見ると、今回の政権交代にしても……。
BON なんで話題がそっちに行くの?(笑)
石井 ま、アルバムには「SPACY ROADSTER」とか「愛の銀河旅行」なんて次のライブを匂わせる曲もありますしね。
BON 「愛の銀河旅行」はタイトルは昭和歌謡みたいだけど、曲とアレンジはファンクにして。
金子 やっぱり、ファンクやブラックミュージックはみんなが好きなんで、音色やアレンジには自然と出てきますね。それだけではなく、いろんな音楽の要素を雑食的に取り込んでいけるのが米米の面白いところで。
ジジイの顔見ながら呑んで何が楽しいの?
──アルバムは美メロの「SONG OF THE LIFE」という曲から始まりますが、ファンキーでユーモラスな「ツイテケネエヨ!」あたりから独特の世界になっていく……?
石井 だんだん妖しい空気になっていきますね。歌詞もけっこうきわどいから、一部ボコーダーにしたりして(笑)。実は僕、六本木で見たんですよ! 今どきの若い女の子が「コラァ!」って男に喰ってかかってる場面を。しかも、すごくかわいい女の子がですよ! 「ツイテケナイ」というのは僕ら世代の実感ですよ、エエ。
──続く「愛夢泥酔野郎」では、中年の泥酔男を石井さんが見事に演じていますね。
BON ほとんど呑まないのに、酔っぱらいの真似はホントうまいんですよ。
石井 うちのメンバーでいえば、ジョプリン得能がそれ。呑むとホントにシツコイんですよ。何度も同じこと言って。
BON 自分が呑まないもんだから、テッペイちゃん(石井の愛称)はイライラしちゃって。その光景が僕らはまたおかしくって。
石井 俺は、酔った者同士がたいして面白くもない冗談で笑ってるような状況が許せないんですよ!
──その割にはよく観察してますよね(笑)。
石井 僕は米米から社会や世間を見ているんですよ。俺以外のメンバーはレコーディングが終わってから呑みに行ったりして、俺の悪口言ってるみたいだけどさ。
BON だって、呑んでる時間がもったいないって言うじゃん。
石井 でもさ、キレイな女の子が傍らにいればまだしも、ジジイの顔見ながら呑んで何が楽しいの? わっかんないなー。ま、だからこそ、クールに観察できるんですけどね。
CD収録曲
- SONG OF THE LIFE
- ふりむかないで
- ツイテケネエヨ!
- 愛夢泥酔野郎
- どこのご関係?
- 恋のギャンブル
- つ・よ・が・り
- SUNRICE
- SPACY ROADSTER
- 愛の銀河旅行
- 080808 (album version)
- 俺たちの想い
初回盤A付属DVD収録内容
- ~O'DOLL SUE CREAM SUE~恋のギャンブル
- ~O'DOLL SUE CREAM SUE~SUNRICE
- komemories Special Digest
初回盤B付属CD収録曲
- 見ないようにしてるんです
- FUNK野球
- なかよしレーズン
- 飴力 GAT'S 隙 DASH
- 中央分離帯
- 我慢の限界
- 俺の背中についてきな
- Driving My Johnny
CD収録曲
- 恋のギャンブル
- Shake Hip Hop! Fickle remix ~Remixed by DJ U-ICHI from HOME MADE 家族
- 恋のギャンブル (instrumental)
初回盤DVD収録内容
- Happy米米の日!! 0808ヒストリー
CD収録曲
- ふりむかないで
- Hard Shake Hip!
- ふりむかないで (instrumental)
- Hard Shake Hip! (instrumental)
初回盤DVD収録内容
- KOME BIZ Presents KOOL櫃
米米CLUB(こめこめくらぶ)
1982年に結成された唯一無比のエンタテインメントバンド。ボーカル、ダンサー、ホーン隊など総勢10名以上におよぶメンバーと、見せることに徹底した圧巻のパフォーマンスで注目を集める。1985年にシングル「I・CAN・BE」でデビュー。1992年発表のシングル「君がいるだけで」が大ヒットを記録し、同年の日本レコード大賞を受賞した。その後も国民的バンドとして人気を集めるも、1997年3月の東京ドーム公演をもって解散。その後は各メンバーがソロとして活躍し、2006年4月に期間限定での再結成を宣言。ファンからの熱い要望に応え、解散および期間限定での活動を撤回する。以降はリリースはもちろんのこと、奇抜なライブ企画を実施するなど、他のバンドの追随を許さない独自の活動を展開中。