小松未可子|ポジティブな花咲く新しい地図

「また」で始まるアルバム冒頭

──ではここから、アルバム収録曲について詳しく聞かせてください。まずはオープニングの「また、はじまりの地図」ですが、これは「地図」ということで、ある意味アルバムのタイトルトラックとも言える楽曲ですね。アルバム全体のポジティブなムードを端的に表した、さわやかなポップスという印象です。

小松未可子

そうですね。本当にこのアルバムを象徴する1曲になっていると思います。よくある言い方をすると、このアルバムの名刺代わりの1曲というか。シングルの「Imagine day, Imagine life!」にそのままつながる橋渡し的な曲でもあって、少し短めになっています。個人的には1曲目が「また」で始まるのがお気に入りです(笑)。

──確かに出会い頭に「また」って奇妙ですね(笑)。

内容的には「Imagine~」からつながる曲なんですけど、曲順は逆にこっちが先という。構成としても面白い形になったと思います。

──小松さん自身の立場ともクロスした、新しい生活が始まるワクワク感のある流れですね。「Imagine~」の「私、強気似合うよね? 瞬間で『そうだ』って声したかも!」というフレーズは、歌詞として少し不思議な言葉選びだなと感じました。

そこですよね! Q-MHzさんと組んだ1曲目で、まだ畑さんともそんなに密にお話できていない段階で「私、強気似合うよね?」という言葉をズバッとはめてきた畑さんはすごいなと思いました。

みかこしとジャズ

──そして3曲目は、リリースに先駆けてライブで披露したり、試聴用のミュージックビデオも先に公開された「Catch me if you JAZZ」です。これ、非常にいいタイトルですね。

やったー!

──ストレートなジャズではなく、ジャズの要素を取り入れながらも四つ打ちのキャッチーなポップソングになっています。音楽的にはこれまでの小松さんのディスコグラフィになかった新機軸ですが、これをまず先に聴かせたのはどういう理由から?

このアルバムの中でもちょっと挑戦的な曲ですし、ジャズの要素を入れた曲に挑戦してみたいという気持ちが大きくあったので。ライブで歌ったときの反響も大きくて、イントロ部分からザワッとするような反応は初体験でした。私もデモを聴いたときにビビッときて、自分から歌詞を書かせてもらいたいと手を挙げたんです。そしたら畑さんから「じゃあ、まずはテーマを設けてみよう」という提案があって、「透明人間」というテーマが出てきました。ジャズと透明人間という、突然のハードル(笑)。しかも田淵さんは「サウンドだけじゃなく歌詞にもジャズを入れたい」とおっしゃっていて。

──そもそも小松さんはジャズに対してどんな印象を持ってました?

レトロなもの、という印象ですね。「スウィングガールズ」(2004年公開の日本映画)という入り口もありましたが、やっぱり自分にとっては縁遠いイメージで。だからデモを聴いたときは「こういう形のジャズもあるのか」という驚きもありました。そのくらいの認識で、さてどうやって歌詞を膨らませていこうかと考えたときに浮かんだのが、まさに「Catch Me If You Can」(2002年公開のアメリカ映画)でした。あの映画のイメージ、追いかけっこ感がパッと浮かんで。

──4曲目の「ランダムメトロノーム」は一転ゆったりとした16ビートで、心の機微を音楽用語になぞらえたラブソングです。

ここで一旦ゆっくりするような。このリズムって、私にとっては一番リラックスしているときのテンポ感なんですよ。何も考えずに普通に歩いていたら、このぐらいのテンポ感かなって。これも歌詞はプロットで参加させてもらったんですが、私が考えたのは「メトロノームを題材に、音楽要素を織り交ぜて」というところで、試しに書いてみたら、どうしても若干ネガティブになってしまって。「結局これは幸せなの? 不幸せなの?」って(笑)。でも、畑さんが同じテーマで書くと、視点や言葉使いでちゃんと前を向いた歌詞になるんですよね。あと「タイトルにメトロノームを入れたい」と提案したら、一定のテンポであるためのメトロノームに「ランダム」という単語を合わせてくださって、なるほどなあって。ゆったりとした中にも意外と変化のある曲だなと思います。

短調が来ると思いきや

──5曲目の「純真エチュード」は昨年11月の「ハピこし!ライブ」(小松のバースデーライブシリーズ。昨年の「ハピこし!ライブ2016 "Imagine day, Imagine life!"」は11月20日に東京・ステラボールで開催された)でいち早く披露されました。すごくポップな、小松さんが常々好きだと言っているビーイング系楽曲のような王道J-POPというか。

そうですね。この曲はアルバム制作を始めた最初の段階でできていて、スタンドマイクで歌うビジョンが見えていたので、真っ先にライブで歌ってみました。このテンションが自分にとって一番自然と元気になれる曲です。

──こちらも試聴用のMVが公開されていて、映像ではレコーディング風景が観られますけど、やたら楽しそうですよね。レコーディングのときはいつもあんな感じなんでしょうか。シリアスにはならない?

ならないですね。むしろ普段は映像よりもっとにぎやかかな。あれはちょっとカメラが回っていたので控え目に(笑)。

──ここまでは比較的アップテンポな曲が並んでいて、次の「硝子の地球儀」で一旦少し落ち着いたトーンになります。ちょっとセンチメンタルな雰囲気で、このあたりに短調の曲が来るのかと思ったら、やっぱり長調なんですよね。

そうなんです。短調が来ると思いきや来ない(笑)。Dメロのところはぐんぐん展開していって……。

──「ダバダー」のコーラスがいいですね。

あはは(笑)。この曲はコーラスがけっこう大変でした。たくさん重ねて「何人いるんだ!?」って。畑さんの文学性が生きた、アルバムの中では少し異色な曲ですよね。曲のほうは田代さんと黒須さんが「ネット上で殴り合いして作った」とおっしゃってました(笑)。ケンカはしていないけど、何度もラリーを重ねて作られたそうです。

──このものすごく練り込まれた展開の裏に、そんな背景が。

どんどん展開していく構成が面白くて、だんだん扉が開いて明るくなっていくような感じがします。

小松未可子「Blooming Maps」
2017年5月10日発売(2017年5月17日配信開始) / TOY'S FACTORY
小松未可子「Blooming Maps」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3900円 / TFCC-86585

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小松未可子「Blooming Maps」通常盤

通常盤 [CD]
3000円 / TFCC-86586

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CD収録曲
  1. また、はじまりの地図
    [作詞・作曲・編曲:Q-MHz]
    Guitar:新井弘毅 / Bass:田淵智也 / Drums:SHiN / All Other Instruments:黒須克彦
  2. Imagine day, Imagine life!
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、広川恵一(MONACA)]
    Strings Arrangement Supervisor:神前暁(MONACA)/ Guitar:堀崎翔 / Bass:田淵智也 / Drums:城戸紘志 / Violin:室屋光一郎、徳永友美 / Viola:安保恵麻 / Cello:奥泉貴圭 / All Other Instruments & Programming:広川恵一(MONACA)
  3. Catch me if you JAZZ
    [作詞・作曲:小松未可子、Q-MHz / 編曲:Q-MHz、伊藤翼]
    Guitar:三澤勝洸(パスピエ)/ Bass:ナナガイケジョー(SCOOBIE DO) / Drums:ショボン / Violin:室屋光一郎 / All Other Instruments:伊藤翼
  4. ランダムメトロノーム
    [作詞・作曲:小松未可子、Q-MHz / 編曲:Q-MHz、清水哲平]
    Bass:黒須克彦 / Drums:かどしゅんたろう / Guitar & All Other Instruments:清水哲平
  5. 純真エチュード
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、eba]
    Bass:黒須克彦 / Drums:かどしゅんたろう / Guitar & All Other Instruments:eba
  6. 硝子の地球儀
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、齋藤真也]
    Guitar:海老澤祐也 / Bass:田淵智也 / Drums:SHiN / Violin:室屋光一郎 / All Other Instruments:齋藤真也
  7. My sky Red sky
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、fhána]
    Guitar:yuxuki waga / Bass:黒須克彦 / Drums:SHiN / Keyboards:佐藤純一 / Sampler::kevin mitsunaga / Chorus:towana
  8. だから返事はいらない
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、やしきん]
    Bass:田淵智也 / Drums:城戸紘志 / Violin:室屋光一郎 / Guitar & All Other Instruments:やしきん
  9. 流れ星じゃないから
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、重永亮介]
    Guitar:新井弘毅 / Bass:田淵智也 / Drums:ショボン / Violin:室屋光一郎 / All Other Instruments:重永亮介
  10. Lonely Battle Mode
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、やしきん]
    Brass Arrangement:井上泰久(RightTracks Inc.)/ Bass:黒須克彦 / Drums:かどしゅんたろう / Trumpet:高荒海、田沼慶紀 / Tenor Sax:井上泰久 / Trombone:半田信英 / Guitar & All Other Instruments:やしきん
  11. HEARTRAIL
    [作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、堀江晶太]
    Guitar:堀崎 翔 / Drums:SHiN / Violin:室屋光一郎 / Bass & All Other Instruments:堀江晶太
  12. my dress code
    [作詞・作曲・編曲:Q-MHz]
    Guitar:三澤勝洸(パスピエ)/ Bass:田淵智也 / Drums:ショボン / Piano & Organ:成田ハネダ(パスピエ)/ Marimba:小松未可子 / All Other Instruments:田代智一
初回限定盤DVD収録内容

Music Video

  • HEARTRAIL

「Humming Maps vol.1 @ SHIBUYA CLUB QUATTRO 2017.01.22」(Live Video)

  • エンジェルナンバー
  • short hair EGOIST
  • 純真エチュード
  • Imagine day, Imagine life!
  • ふれてよ
  • だから返事はいらない
小松未可子TOUR 2017 "Blooming Maps"
  • 2017年7月22日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2017年7月29日(土)愛知県 SPADE BOX
  • 2017年8月6日(日)大阪府 Music Club JANUS
小松未可子(コマツミカコ)
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。2016年9月よりTOY'S FACTORYに所属し、同月Q-MHzプロデュースによるシングル「Imagine day, Imagine life!」を発表。2017年5月には引き続きQ-MHzの全面プロデュースで通算3枚目のオリジナルアルバム「Blooming Maps」をリリースし、夏の東名阪3都市を回る単独ツアー「小松未可子TOUR 2017 "Blooming Maps"」を行う。