小松未可子のおよそ3年ぶりとなるニューアルバム「Blooming Maps」が完成した。TOY'S FACTORY所属後初、通算3枚目のオリジナルアルバムとなる本作は、畑亜貴、田代智一、黒須克彦、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)からなるクリエイター集団・Q-MHzとタッグを組んで制作された。Q-MHzの面々が導き出したのは、さわやかでポジティブな小松の表情。この作品は彼女の心境にどのような変化をもたらしたのか。
取材・文 / 臼杵成晃 文中カット撮影 / 玉井美世子
Q-MHzがこじ開けたポジティブの扉
──昨年のレーベル移籍の際、小松さんは「新しい自分に出会えるような気持ちで、ワクワクしています! Q-MHzさんと、さらなる『未来』の『可能性』を探しにいく旅へ。さぁ、出発です!」とコメントされていました(参照:小松未可子、Q-MHzプロデュースのシングルをトイズファクトリーから発表)。
はい。改めて読み上げられると恥ずかしいですね(笑)。
──まずは昨年9月、Q-MHzプロデュースによる移籍第1弾シングル「Imagine day, Imagine life!」が発表されました。Q-MHzは畑亜貴さん、田代智一さん、黒須克彦さん、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)さんという、そうそうたるメンバーがそろったクリエイター集団です。
Q-MHzという名の元に、統一感はありながらも、それぞれ違った一面、私が今まで自分自身で気付いていなかった引き出しを開けてくれたような感覚でした。
──ご自身の新たな一面に気付かされた、具体的に「小松さんってこうだよね」と言われてハッとした言葉などはありますか?
私は歌詞を書くときなどに、ネガティブめなところから吐き出すことが多かったので、ポップなイメージは自分自身の素の部分にはないと思ってたんです。でも、ライブやラジオなどから見えてくる小松未可子像はポップなイメージだと田淵さんはおっしゃっていて。そこは自分では一番自信がなかったところで、だから「ポップな曲は私には歌えない」と……苦手意識というか、自分で勝手に「ポップなものは私に合わない」と思い込んでいたんです。
──先ほどの小松さんのコメントと同時に発表されたQ-MHzの連名コメントには「小松未可子さんは自然体が似合う女性だと思っています。凛とした強さがありながら、優しさや元気の良さを兼ね備えた様々な魅力を持っています」とあり、さらに「それらをうまくまとめあげつつ、散らかりすぎない様に彼女に似合う音楽・歌って欲しい歌を提案」すると宣言していました。
「Imagine day, Imagine life!」や今回のアルバムは、自分自身がテーマというか、今の私という軸の中で、多面的な引き出しを開けてもらったような感覚があります。そんな中で、デモを聴いて「この曲、歌詞を書いてみたいです」と挙手してみたり……非常に恐れ多いんですが。
──畑さんという数々のヒットソングを手がけた作詞のプロを擁するQ-MHzですからね。
そうなんですよ! 皆さんすごい方なので、自分の意見を言うのはなかなか勇気のいることなんですけど、皆さん「サポートしますよ」とおっしゃってくれたんです。でも、いざ歌詞を書き始めてみると書きたいことがたくさん出てきちゃって、すぐに行き詰まってしまって。同じことを表現するにも「ポジティブすぎないか、いやいやこれだとネガティブすぎないか」と悩んでいたんですが、畑さんのアドバイスで語尾を1つ変えるだけで、すごくポップなものになるんです。田淵さんからも、同じ意味でもちょっと面白い言葉使いとか、言葉のマジックをたくさん教わりました。
素直な気持ちで選んだ“ブルマ”
──先ほどの、ご自身の印象とポップなイメージとの差の話にもつながるところかもしれないですけど、今回のアルバムって12曲すべて長調なんですよね。効果的にマイナーコードが使われている曲はあるけど、最終的に長調で完結する曲ばかりで。
はい。
──これまでの曲の印象かもしれないですけど、小松さんの声はどちらかというと陰りのある曲に向いていて、マイナーコードが合う声質なんだと思っていたんですけど、Q-MHzは小松さん=長調という判断をしている。
そうですね。でも田淵さんは長調が合うと初めからおっしゃっていたんです。「Imagine day, Imagine life!」の制作のとき、「小松さんはマイナー調の曲を歌うとき、必要以上にカッコ付けるクセがある。僕はそれがちょっともったいないと思うんだよ」って。
──アルバムをひと通り聴いたうえでは、その意見に納得です。小松さん、歌を離れたところだと、基本的にバカ明るいですよね。
はい(笑)。
──音楽ではカッコいい部分、クールな部分を出すのも全然ありだと思うんですけど、このアルバムの印象は、素が見え隠れするラジオのトークやライブMCの印象に近い気がします。
なるほど。そのへんは自分であまり客観的に見えていなかったところですね。
──アルバムタイトルにある「Blooming」は直訳すると「花盛りの、咲きほこる、若々しく美しい、栄えている」などの意味になりますが、このタイトルは小松さんご自身が?
はい。対バンライブの「Humming Maps」というタイトルも「好きに付けていいよ」と言われて考えたもので。それはそのとき好きでよく聴いていたMaroon 5の「Maps」という曲からヒントをもらったんです。その“Maps”という響きがすごく気に入ったので、そこからいろいろと膨らませてみたんですけど、奇想天外なワードじゃない、着飾らない言葉がいいなと思って。今までなら少しひねった言葉を探していたんですが、せっかく前向きな曲がそろったので、前向きな言葉……普段だったら恥ずかしくて選ばないような(笑)、素直な気持ちで言葉を当てはめてみたいと思ったんですね。しかも「略すと『ブルマ』になるね」って(笑)。
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「また」で始まるアルバム冒頭
- 小松未可子「Blooming Maps」
- 2017年5月10日発売(2017年5月17日配信開始) / TOY'S FACTORY
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初回限定盤 [CD+DVD]
3900円 / TFCC-86585 -
通常盤 [CD]
3000円 / TFCC-86586
- CD収録曲
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- また、はじまりの地図
[作詞・作曲・編曲:Q-MHz]
Guitar:新井弘毅 / Bass:田淵智也 / Drums:SHiN / All Other Instruments:黒須克彦 - Imagine day, Imagine life!
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、広川恵一(MONACA)]
Strings Arrangement Supervisor:神前暁(MONACA)/ Guitar:堀崎翔 / Bass:田淵智也 / Drums:城戸紘志 / Violin:室屋光一郎、徳永友美 / Viola:安保恵麻 / Cello:奥泉貴圭 / All Other Instruments & Programming:広川恵一(MONACA) - Catch me if you JAZZ
[作詞・作曲:小松未可子、Q-MHz / 編曲:Q-MHz、伊藤翼]
Guitar:三澤勝洸(パスピエ)/ Bass:ナナガイケジョー(SCOOBIE DO) / Drums:ショボン / Violin:室屋光一郎 / All Other Instruments:伊藤翼 - ランダムメトロノーム
[作詞・作曲:小松未可子、Q-MHz / 編曲:Q-MHz、清水哲平]
Bass:黒須克彦 / Drums:かどしゅんたろう / Guitar & All Other Instruments:清水哲平 - 純真エチュード
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、eba]
Bass:黒須克彦 / Drums:かどしゅんたろう / Guitar & All Other Instruments:eba - 硝子の地球儀
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、齋藤真也]
Guitar:海老澤祐也 / Bass:田淵智也 / Drums:SHiN / Violin:室屋光一郎 / All Other Instruments:齋藤真也 - My sky Red sky
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、fhána]
Guitar:yuxuki waga / Bass:黒須克彦 / Drums:SHiN / Keyboards:佐藤純一 / Sampler::kevin mitsunaga / Chorus:towana - だから返事はいらない
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、やしきん]
Bass:田淵智也 / Drums:城戸紘志 / Violin:室屋光一郎 / Guitar & All Other Instruments:やしきん - 流れ星じゃないから
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、重永亮介]
Guitar:新井弘毅 / Bass:田淵智也 / Drums:ショボン / Violin:室屋光一郎 / All Other Instruments:重永亮介 - Lonely Battle Mode
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、やしきん]
Brass Arrangement:井上泰久(RightTracks Inc.)/ Bass:黒須克彦 / Drums:かどしゅんたろう / Trumpet:高荒海、田沼慶紀 / Tenor Sax:井上泰久 / Trombone:半田信英 / Guitar & All Other Instruments:やしきん - HEARTRAIL
[作詞・作曲:Q-MHz / 編曲:Q-MHz、堀江晶太]
Guitar:堀崎 翔 / Drums:SHiN / Violin:室屋光一郎 / Bass & All Other Instruments:堀江晶太 - my dress code
[作詞・作曲・編曲:Q-MHz]
Guitar:三澤勝洸(パスピエ)/ Bass:田淵智也 / Drums:ショボン / Piano & Organ:成田ハネダ(パスピエ)/ Marimba:小松未可子 / All Other Instruments:田代智一
- また、はじまりの地図
- 初回限定盤DVD収録内容
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Music Video
- HEARTRAIL
「Humming Maps vol.1 @ SHIBUYA CLUB QUATTRO 2017.01.22」(Live Video)
- エンジェルナンバー
- short hair EGOIST
- 純真エチュード
- Imagine day, Imagine life!
- ふれてよ
- だから返事はいらない
- 小松未可子TOUR 2017 "Blooming Maps"
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- 2017年7月22日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2017年7月29日(土)愛知県 SPADE BOX
- 2017年8月6日(日)大阪府 Music Club JANUS
- 小松未可子(コマツミカコ)
- 1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。2016年9月よりTOY'S FACTORYに所属し、同月Q-MHzプロデュースによるシングル「Imagine day, Imagine life!」を発表。2017年5月には引き続きQ-MHzの全面プロデュースで通算3枚目のオリジナルアルバム「Blooming Maps」をリリースし、夏の東名阪3都市を回る単独ツアー「小松未可子TOUR 2017 "Blooming Maps"」を行う。