ナタリー PowerPush - 小松未可子
今、身に付けたい音と言葉の宝箱
小松未可子がアルバム「e'tuis」をリリースした。
2013年の1stフルアルバム「THEE Futures」リリース以降、さまざまなアニメの声優を務めると同時に、それらアニメ作品のテーマソングを歌い、また大型アニソンフェスの常連と化すなど、アニソンシーンの中で大きな存在感を示してきた小松。そんな彼女が1年3カ月ぶりに放つアルバム「e'tuis」は自ら「今、身につけたかった言葉と音」だと語る11曲と、組曲「in the suite」という12曲からなる1枚となっている。今回のインタビューでは小松にアルバムの制作コンセプトを聞くことで、意欲作「e'tuis」の魅力に迫った。
取材・文 / 成松哲
suiteで言葉遊びができないかな?
──まず"キホンのキ"みたいな話なんですけど、アルバムタイトルはなんと読めば……。
"エトゥイス"です。わりとローマ字読みに近い感じですね。
──で、アルバムリリースを発表した2月のイベントのときには「何語だっけな?」っておっしゃってましたけど(参照:小松未可子"宝箱のような"2ndフルアルバム、5月リリース)、その後、何語か判明しました?(笑)
フランスの古語らしいです(笑)。けっこう早い段階からアルバムの最後に「in the suite」という組曲を置くことが決まっていて、組曲は英語で"suite"だから「suiteで言葉遊びができないかな?」と思い言葉を探していたら、アナグラムになっている「etuis」ってワードが見つかったんです。
──意味は「宝箱のようなもの」でしたっけ。
そうですね。宝石とか化粧品を入れておく飾りの付いた小箱という意味なので「これはすごくアルバムにふさわしい言葉だな」と思って。ただ、suiteありきで付けたタイトルなので「アナグラムですよ」とはっきりさせたくて、アポストロフィを入れた造語にしてみました。
──その小箱の中身なんですけど、前のアルバム「THEE Futures」のときとはちょっと変わりましたよね。「THEE Futures」はデジタル感の強いダンストラックが中心だったけど、今回は比較的ナマ感が強いというか。オープニングナンバー「Sky message」と続く「Re:ing」はホントにヌケがよくてポジティブなギターロックですし。
そうですね。ツアーやイベントなど、ライブをやる機会が増えて、今私が包まれているサウンドがバンド感のあるもの、ナマっぽいもので。それが心地いいと思っている私がいたところに、作家の皆さんもナマっぽい曲をたくさん書いてきてくださって。偶然なのかもしれないんですが、私と作家さんたちの足並みがうまくそろった結果、今、私が歌いたいナマっぽいサウンドのアルバムを作れたのかなという気がしています。
カジュアル感覚と宝石箱
──宝石箱の中身が今っぽい感じってちょっと面白いですよね。宝石箱って、宝石という古くから大事にしているものを大事に大事にしまっておく大事な箱なんじゃないかな?っていう気がしますし。
私にとって宝石箱は、今私が使いたいもの、今私が身に付けているものをしまうものというイメージが強かったので、このようなタイトルにしてみました。
──あっ、そうか。普段アクセサリーやジュエリーを身に付けている人にしてみたら、宝石箱ってカジュアルな存在だったりもするのか。
もちろんどれも大切なものなんですが、現在進行形で、今の私にとっての宝。今の私が身に付けたい言葉や音をそろえてあるのが「e'tuis」という宝箱となんです。「今身に付けたい」宝たちが「e'tuis」の楽曲たちなんですよ。その宝たちはあくまで「今身に付けたい」ものであり「今作ったもの」でなくてもいいんです。1曲目の「Sky message」をレコーディングしたのは2年前の夏頃、2曲目の「Re:ing」は前のアルバムの「THEE Futures」(2013年2月)をリリースする直前には録っていましたね。
──"今、身に付けたい宝"として、キャリア初期に録った楽曲を選んだ理由って?
12曲目の「in the suite」だけじゃなくて、1~11曲目も「組曲『e'tuis』編」にしたかったからですね。「Sky message」と「Re:ing」は、今度出る「モーレツ宇宙海賊」(「モーパイ」)の遊技機(「フィーバーモーレツ宇宙海賊」)の曲なので。これまでずっと温めていた曲で、しかも私の声優としての活動の原点でもある「モーパイ」の曲から旅や、ストーリーを始めたかったんです。
- ニューアルバム「e'tuis」 / 2014年5月14日発売 / スターチャイルド
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3394円 / KICS-93051
- 通常盤 [CD] 3085円 / KICS-3051
- CD収録曲
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- Sky message
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:nishi-ken] - Re:ing
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:Junichi Hoshino] - 天使がいない日
[作詞:只野菜摘 / 作曲・編曲:楊慶豪] - Sail away
[作詞:atsuko / 作曲:atsuko・KATSU / 編曲:KATSU・松本祥平] - 初恋
[作詞:白倉由美 / 作曲・編曲:SiN] - 僕ら
[作詞:James Panda Jr.・TB226 / 作曲:James Panda Jr. / 編曲:矢野博康] - PandA
[作詞:小松未可子 / 作曲:James Panda Jr. / 編曲:James Panda Jr.] - ABC
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - Material
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:Junichi Hoshino] - エメラルドの丘を越えて
[作詞・作曲:小松未可子 / 編曲:小松未可子・SiN] - 終わらないメロディーを歌いだしました。
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - in the suite
- endless night
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - walking in the dark
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - 怪獣
[作詞:カワムラユキ / 作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - I see world
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)]
- endless night
- Sky message
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「ABC」MUSIC CLIP
- ハピこしライブ!~小松未可子生誕イベント2013~ダイジェスト
- 「虹の約束」リリースイベント@東京スカイツリータウン
小松未可子(コマツミカコ)
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。女優として活動する傍ら、2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月には3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を、12月には4thシングル「虹の約束」を発表する。またその一方で2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。そして同年2月、自身が主演を務める劇場アニメ「モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵」のイメージソング「Sail away」をリリース。同5月には2ndフルアルバム「e'tuis」を発表した。