ナタリー PowerPush - 小松未可子
“小松さん”と“加藤さん”の幸せな関係
俯瞰であり、移入でもある
──小松さんが自分に素直になればおのずと加藤茉莉香らしさが出てくる。しかも2人は自然と向かい合って歩みをともにしているだけ。小松さんが加藤茉莉香に寄りかかってもいない。なんかいいコンビですね、小松未可子と加藤茉莉香って。
本当に茉莉香とはいい距離感で時を過ごさせてもらえているなって思っています。今回「自分」というテーマを設定したのには、その距離感という意味もあって。「Sail away」は今回の劇場版のゲストキャラクターである無限彼方くんのことを歌った曲でもあるんです。なので、茉莉香から見た彼方や「モーパイ」について歌うだけじゃなくて、彼方から見た茉莉香や「モーパイ」のことも歌わなければならない。だから私は茉莉香に寄り添うのではなくて、第三者的ないい距離感、茉莉香のことや彼方のこと、それから茉莉香と彼方の関係がすべて見える場所に立っているんです。
──確かに「ねえ『光』 君も迷ったの?」「『いつの日か大人になる』と 君は伝えたかったのですか?」って歌っているときの小松さんは、いったいどの視点に立ってるんだ?って気になったんですよ。映画「モーパイ」の中で繰り広げられる出来事の渦中にある茉莉香や彼方はこんなにクールに振る舞えはしないだろうし。
その視点で振る舞えるのが、役者であり歌い手である私の立ち位置のすごくありがたいところなのかなと思っています。ほかの人の人生を読むことや、ほかの人になりきってその人の言葉をしゃべることが多いから、詞の中のキャラクターに対しても、比較的スムーズに自分を投影できるし、反対に自分の歌であっても、どこか他人の目線に立つこともできるのかなという気はしています。
──それをあっさり言えちゃうのは本当に声優さんならではなんだろうなと思います。お芝居のキャリアという裏打ちがあるから、音楽に対してもある種、神の目線に立てている。
そうですね。本当にありがたいことに……。
──「私、神なんです」(笑)。
あはははは、違います(笑)。「俯瞰であり、移入でもある」という立ち位置で歌えるのは役者というお仕事をさせてもらっているからなんだろうなと思っています。
小松未可子の曲であり「モーパイ」の曲でもある
──「Sail away」は劇場版「モーパイ」のサントラであり、小松未可子の新曲でもある。サントラと個人の楽曲、どっちとして聴いてもらいたいですか?
あまりどちらと決めなくてもいいのかなという気がしています。アニメの楽曲についてはすべてそうなんですけど「私の歌を聴け!」「聴いて聴いて」という気持ちは実はあんまりなくて。その作品に携わっている役者であり歌い手である以上、私の歌が流れるシーンのことを一番に考えたいですから。もしかしたらそのシーンは無音でも成立するのかもしれないんだけど、役者である私が歌う曲が流れることで無音のときとはまた別のイメージが浮かんでくるようにしたい。「Sail away」であれば「モーパイ」という映画の意味をちょっと広げるため、観ている方の理解を深めるための曲であってほしいんです。
──ということは、サントラとして聴かれたいのでは?
うーん……。ただこれも結局のところ後付けのような気がしていて。ちょっと乱暴な言い方なのかもしれないんですけど、「Sail away」は自分が本当に気持ちよく歌えた曲なので、その自分の素直な感情や思いが映画に合ってくれるといいなという感じではあるんですよね。
──そして実際に素直にスッと歌ってみたら、加藤茉莉香や「モーパイ」と自然と向き合えた。映画と楽曲を重ね合わせることができた、と。
そうですね。なので、歌い手・小松未可子の曲として聴いていただいても、アニメに寄り添うものとして聴いていただいても、きっと楽しんでいただけるんじゃないかなって思っています。
“海難救助”をモチーフに人間関係を歌う
──カップリングの「Salvage」なんですけど「Sail away」とはまた別の意味でちょっとビックリしたんですよ。
ホントですか?
──「Sail away」は“出航”という意味で、実際に茉莉香や彼方のような若い子たちが「光」や「夢」に向かうこと、「大人になる」ことを祝福している。なのに“出航”直後に“海難救助”ってタイトルの曲が来たかって(笑)。
あはははは(笑)。沈んじゃいました。
──なぜ?(笑)
去年の前半にレコーディングした曲なので「モーパイ」に関連させようっていう意図はなかったんですよ。私が携わっているあるカードゲームに「Salvage」というカードがあって「面白い響きの言葉だな」「この言葉のイメージから詞を書いてみたいな」と思っていたときに、ちょうど作曲と編曲を手がけてくださったnishi-kenさんからこの楽曲をいただいて。デモを聴いたとき、イントロに海の底から「ポコポコポコポコ」と泡が浮かんでくるような音が入っていたので「あっ、これかもしれない」と書いたのが、この詞なんです。プライベートな人間関係、身近な人たちとの関係にどこか追われているような気持ちになっていた時期があったので、それを「Salvage」の意味である“救助”や“浮上”をモチーフに歌ってみたら面白いかなって。
- ニューシングル「Sail away」/ 2014年2月22日発売 / STARCHILD
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1700円 / KICM-91501
- アニメ盤 [CD] 1200円 / KICM-91502
- 通常盤 [CD] 1200円 / KICM-1501
CD収録曲
- Sail away
- Salvage
- Sail away(Instrumental)
- Salvage(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- 「Sail away」MUSIC CLIP
CD収録曲
- 未來航路 987mix
- Black Holy Ha!maguremix
- Infinity Sky DomDom mix
- ジャスミンの風に Root258 mix
- M from… Akatsuki mix
- 砂漠のタイムマシン iiP feat.rosco motion orchestra mix
- Up to Countdown cosmic Explosion mix
- 透明な夜空 ~瞬く星に包まれて~ Hoshimigaoka mix
- ユメノアリカ Sunny World mix
- cosmic Explorer
小松未可子(こまつみかこ)
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。女優として活動しながら、2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月には3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を、12月には4thシングル「虹の約束」を発表する。またその一方で2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。そして同年2月、自身が主演を務める劇場アニメ「モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-」のイメージソング「Sail away」をリリースした。