不思議なくらいスッと歌えた曲

──今回のシングル曲「Sail away」をプロデュースしたangelaのお2人を取材したとき（参照：angela「ANGEL / 遠くまで」インタビュー）、高速BPMの四つ打ち曲が全盛のアニソンシーンにおいて、そういう楽曲をあまりもたないangelaはなぜフェスの客をかっさらうことができるのか？っていうお話をしていまして……。

じゃあ今回はatsukoさんとKATSUさんの術中に（笑）。

──見事にハマりました（笑）。「Sail away」をiTunesに登録したら6分9秒って表示されて、再生したらスローテンポで始まったから「あっ、今回はスケール感のあるバラードなんだな」って思ってたんです。あと「モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-」のオープニングテーマ、ももクロの「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」がアップリフティングな曲だからイメージソングの「Sail away」はバラードなんだろうって。

私もデモを初めて聴いたときはビックリしました（笑）。angelaさんとしてもこういう展開の曲は初めてなんじゃないかな、という気がしますし。

──そうなんですよね。こういう曲も作れる人たちであることは当然わかってたんだけど、それでも2分半くらいから本当にド派手でアッパー、しかもちょっとダブステップっぽい最新型の四つ打ちトランスへと変貌を遂げたのには驚いて。もちろんカッコいいし。

最初バラードから始まって、いきなり激しくなるっていう展開は「モーパイ」（「モーレツ宇宙海賊」）シリーズの佐藤竜雄監督の提案だったらしいです。そういう静と動のコントラストがはっきりしたクライマックスで使いたいからって。

──「Sail away」みたいな曲ってangelaのディスコグラフィだけでなく、小松さんのディスコグラフィの中でも珍しい曲ですよね。

そうですね。

──歌いやすかったですか？

歌いやすかったですね。atsukoさん自身「自分で歌いながら作った曲だ」とおっしゃっていたんですけど、そうやってボーカリストさんが自分で歌ってみた曲だから、歌う人間のことがすごく考えられている感じがして。こんなに爽快感があって、かつ破壊力がある曲は、これまでの私の曲にはなかったんですけど、自分自身ちょっと不思議な気持ちになるくらいスッと歌えました。レコーディング中、atsukoさんに「サビのところとか、歌っていて気持ちよくない？」と聞かれたときも「ああっ、確かに！」って即答していましたから（笑）。

加藤茉莉香とともに歩む

──以前小松さんは、テレビ版「モーパイ」のイメージソングだったデビューシングル「Black Holy」を歌うとき、ちょっと悩んだって言っていましたよね（参照：小松未可子「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」インタビュー）。声優としてキャラクターソングを歌うときはそのキャラクターになりきればいいんだけど、自分名義の曲には参照すべきキャラクターがいないからって。

はい。

──「Sail away」って「Black Holy」とある意味同じですよね。「モーパイ」の主役・加藤茉莉香を演じる女優でソロシンガーでもある小松さんが「モーパイ」楽曲を歌うわけですから。

だからレコーディングしていて不思議な気持ちになったんですよね。「Black Holy」のときと違って何も考えずに歌えたというか、あまり葛藤なく歌えたので。小松未可子として加藤茉莉香とすごく自然に向き合えた気がしています。

──「不思議だ」って言っているだけに答えにくいかもしれませんけど、なぜ加藤茉莉香や「Sail away」と自然に向き合えたんだと思います？

うーん……。もともと茉莉香は私の素の部分が入ったキャラクターというか、テレビ版の「モーレツ」を通じて加藤茉莉香と一緒に私も成長することができた気がしているんです。もちろん最初は「どういうふうに茉莉香を演じればいいのかな？」「どうすれば茉莉香になれるのかな？」と悩んでいたんですけど、あるとき自然に振る舞うような芝居をしたら、私自身も、アニメの制作スタッフさんも「あっ、これだ！」となって。それ以来、茉莉香と私の足並みが揃ったんです。最終回前後は特に「私からナチュラルに出てきたもので正解なんだ」って気持ちで芝居ができるようになっていましたし。「Sail away」はそうやって一緒に歩んできたあとの曲だから「Black Holy」とは違う。茉莉香や「モーレツ」や楽曲に自然と向き合えたのかもしれませんね。だから今回の曲は「モーレツ」のイメージソングではあるんだけど、テーマはある意味自分。何かを脚色するのではなく、自分に素直に歌うことに重きを置いてみました。