10代作詞家募集中!「青春恋愛MVプロジェクト」特集 佐伯youthKインタビュー|未来の作詞家に贈る、“オリジナルの詞”を生むためのヒント

好きだから、やめてよ

──ちなみに佐伯さん自身が10代だった頃、恋愛や青春の歌を書きたいという気持ちはありました?

ソングライターあるあるなんですけど、最初は恋愛の曲しか書けないことが多いんです。それはなぜかと考えると、やっぱり世の中には恋愛の曲が圧倒的に多いですから、それらを耳にしているうちに「歌とはそういうもの」と無意識に植え付けられてしまっているのかなと。僕も最初に書いたのは恋愛の歌でしたし。

──どんな内容だったかは覚えてらっしゃいます?

「やめてよ」というタイトルの曲でした。曲名からして引っかけにいっているという(笑)。「好きだから、これ以上近付くのはちょっとやめてよ」みたいな内容で、「恥ずかしいし緊張するし、もっと好きになっちゃうのが怖い」というような気持ちを書いた歌詞だったと思います。

──初めての作詞とは思えないくらいの変化球ですね(笑)。

そうですよね(笑)。当時僕はアンチの姿勢が強くて、世の中のポップスに歯向かってたんですよ。単純に「好き」って言っちゃったらつまらないなという、いわば反骨精神の表れでしょうね。

──現在の佐伯さんが“恋愛”や“青春”を描く上で、意識していることはありますか?

佐伯youthK

当時と変わらずなんですけど、いかに「好き」とか「愛してる」を言わずに表現するかというところは意識していますね。恋愛に限らず、言いたいことをそのまま言わない美学というのは日本人が昔からずっと好きなものだと思いますし、僕だけじゃなく、今はみんながやっていることだと思うんですよ。Official髭男dismの「Pretender」とかも、「君は綺麗だ」でサビが終わる部分があるじゃないですか。「『好き』って言わないんかい!」みたいな(笑)。「君の運命のヒトは僕じゃない」という1行だけで、“僕”が“君”のことを好きだということは伝わりますよね。めちゃくちゃいい歌詞だなと思いますね。

──そういう意味では、その1行はすごく佐伯さんっぽいですよね。

正直、「やられた!」という悔しさはありました(笑)。音楽家としては、「悔しい」って最上級の褒め言葉なんですよ。

──作家として、ほかの方と共作された楽曲も多いですよね。「自分の曲にこんな歌詞が乗るんだ」と感銘を受けた恋愛ソングはありますか?

それで言うと、「君って」などを共作した西野カナさんは、僕が絶対に書かないような歌詞を書いてくれますね。リスナーに近い目線というか、日常的でパーソナルな、リアリティのある歌詞で。僕が作るとそうはならない。仮に僕が誰かを家の外から見守っているくらいだとしたら、西野カナさんの書く歌詞は誰かのすぐ隣にいるくらいの距離感なんですよ。そこが彼女のすごいところですよね。

──自分からは絶対に出てこないと思えるもののほうが、共作するうえでは面白いですよね。

そうですね、せっかくなら。それこそRHYMESTERのMummy-Dさんと作らせてもらった入野自由くんの「トップランナー」という楽曲は「これこれ!」という感覚でした。自分には絶対に書けないし、しかもずっと憧れていた人のカラーが出ているものが上がってきたので、うれしかったですね。

聴く人をうならせれば勝ち

──今回の企画に挑戦する方々が実際にデモ音源を聴いて歌詞を書き始める際、何を取っかかりにしたらいいのか、少しアドバイスをいただけますか?

それぞれのやりたいようにやってもらうのがもちろん一番なんですけど、それが難しい場合はまずメロディを1回忘れて、自分が書きたいことをメモしてみてください。作文ではなく、箇条書きでもいいのであくまでメモ程度に。作文にしてしまうと、文章としての整合性を取るために余計な言葉遣いや語尾が入ってきちゃうんですよね。それがノイズになってしまうので、文章を書こうとは思わずに、LINEで思いつきの言葉を人に伝えるくらいの気軽さで、詞の中で表現したい自分の気持ちを書いてみる。アーティストに作詞のディレクションをするときはそういったやり取りをすることもあります。

──そうやってヒントを並べて、方向性を決めるわけですね。そこから実際の作詞に入る際、おそらく一番難しいのが1行目なんじゃないかと思うんですけど。

そうなんですよね……ちょっといやらしいアドバイスをするなら(笑)、さっきの「やめてよ」じゃないですけど、冒頭は人が使わないようなワードを使うとフックになるかもしれませんね。例えばセリフから入るとか、1行目なのに「もうこの恋はおしまいです」と書いてあったら「え、なんで?」となるじゃないですか。起承転結の“起”をどう持ってくるかは重要ですね。そのためにはやっぱり、“歌詞を書こうとしない”ことがキーポイントになってくると思います。とにかく気負わずに書くこと……今、自分に言い聞かせてるんですけど(笑)。

佐伯youthK

──なるほど(笑)。そうやって書いていくうちに、どんどんテーマから外れていってしまうようなこともあるんじゃないかと思うんですが。

ああ、ありますね(笑)。でもそれはそれでいい歌詞になっているのであれば、残りの部分で総括する何かを入れて辻褄を合わせるというリカバー法もあります。あるいは、「テーマとズレちゃった」と歌詞の中で言ってしまうとか。メタ的な視点になりますけど、けっこう大事なんですよ。もちろん時と場合によりますが、そうすることで面白い歌詞になったりもします。

──あと、歌詞の中で日本語としての整合性を求めるがあまり、音楽的な美しさを損なうケースもありますよね。佐伯さんはそういう場合、どのように考えてらっしゃいます?

曲に乗せる以上は音楽的な詞でなければいけないと思っています。多少意味がわからなくても聴いててスッと入ってくるものが最強の歌詞だと僕は思うので。日本語としては間違いであっても、例えば“ら抜き言葉”も過度には気にせず、音楽的な歌詞にすることを優先していますね。

──佐伯さんの作られる楽曲を聴いていると、そのこだわりを強く感じます。リズムも独特ですし、1つの音符に2つの音韻が乗るようなハメ方も珍しくなくて。

そうですね。英語的な乗せ方は好きですし、得意でもあるなと思っていて。

──今回作詞に挑戦される皆さんも、音符の数にとらわれすぎないほうがいいかもしれないですね。

そうですね。よほどじゃない限りは(笑)。許容範囲内であれば、自由に考えてもらって大丈夫です。極端な話、どれだけ変えようが聴く人をうならせれば勝ちなんで(笑)。これはぜひ記事に書いておいてください。

やんなきゃダメだよ

──ウダノゾミさんのイラストについても聞かせてください。ご覧になって、率直にいかがですか?

かわいいですよね。ポップさとナチュラルさを両立していて、すごくいい温度感。僕のサウンド感ともすごく親和性が高いと思いますし、みんなが詞を書くときにも大いにインスピレーションを与えてくれるんじゃないでしょうか。

──音だけではなく、絵からも存分にイメージを膨らませてほしいと。企画にはどんな若者に挑戦してもらいたいですか?

そうですね、老若男女……あ、老若男女じゃないか(笑)。

──残念ながら今回、“若”だけなんです(笑)。

そうだった(笑)。実は僕も10代の頃、地元の楽器屋さんが主催したコンテストみたいなものに応募したことがあるんです。それに通れば新人のコンピレーションアルバムに自分の曲が収録されるよ、みたいな。それに音源を出して、無事通ったんですけど。そういうふうに人から評価される機会って、一歩踏み出さないとなかなかないじゃないですか。右も左もわからない10代のうちに、そういうことをやっておいたほうがいいと思います。大人になると邪念も入ってきますから(笑)。なので、ぜひいろんな人にチャレンジしてほしいですね。これまで歌詞を書いたことない人のほうが面白いものができそうですし、ちょっとでも興味があったら。

──「興味はあるけど、作詞なんてやったこともないし、書いたものを見られるのも恥ずかしい」と躊躇してしまう方々もいると思うので、何か背中を押すひと言をいただけますか?

いやもう、「やんなきゃダメだよ」だけですね(笑)。

──つべこべ言わずにやれと(笑)。

恥ずかしいと思っているんだとしたら、作詞家なんて誰だかわからなくてもやっていける世界ですし、ペンネームでもやっていけますから大丈夫です。自信がないという人に対しては、「やってみなきゃわからないじゃん」ですね。やってみたら意外と……みたいなことはよくあるし。何よりも、作ることを楽しんでほしい。楽しむことが一番大事です。

10代作詞家大募集!ウダノゾミ×佐伯youthK「青春恋愛MVプロジェクト」

  • 企画概要

    「青春恋愛MVプロジェクト」メインビジュアル

    イラストレーション:ウダノゾミ

    バンダイナムコアーツ主催によるMVプロジェクト。マンガ「田中くんはいつもけだるげ」のウダノゾミが手がけるイラストと佐伯youthK作の楽曲を組み合わせ、“青春恋愛”をテーマにしたオリジナルMVシリーズを制作する。その楽曲およびMVに参加する10代の作詞家を募集中。
    ※応募した詞はそのまま採用されず、あくまで選考材料として使用される。合格者には採用決定後に打ち合わせ等を交えながら作詞作業を行ってもらう。

    スタッフ

    キャラクターデザイン:ウダノゾミ

    作曲:佐伯youthK

    コンセプト協力:川面真也(テレビアニメ「田中くんはいつもけだるげ」監督) / 飯塚晴子(テレビアニメ「田中くんはいつもけだるげ」キャラクターデザイン) / 小松原聖(テレビアニメ「田中くんはいつもけだるげ」総作画監督)

    音楽:ランティス

  • 応募資格

    2020年9月18日時点で10~19歳の男女

  • 応募方法

    「青春恋愛MVプロジェクト」オフィシャルサイトの応募フォームより以下ステップで情報を入力。

    1. 2つのテーマから任意のテーマを選択。
    2. 課題曲に合わせて選択したテーマで作詞。
    3. 詞のテキストおよびメロディ譜に詞を書き込んだデータを提出。
  • 募集期間

    2020年9月18日(金)~10月18日(日)

  • スケジュール

    1. 1次審査:応募フォームへの申し込み(2020年9月18日(金)~10月18日(日))
    2. 2次審査:面談(2020年11月下旬〜12月上旬予定)
    3. 採用者決定(12月下旬)
  • 募集テーマ・キャラクター

    テーマ①
    100%の確証がないと思いを伝えられない
    男子または相手の女子
    テーマ①「100%の確証がないと思いを伝えられない男子または相手の女子」相関図
    テーマ②
    好きな人に他に好きな人がいる
    男子・女子
    テーマ②「好きな人に他に好きな人がいる男子・女子」相関図