シンガーソングライターはお百姓さんみたいなもの

──アルバム制作を終えた今、どんなことを感じていますか？

「いろんなKOKIA」っていうよりは、「今の私」という切り取り方ができたのかなと。今思ってることを詰め込んだ結果、個人的にはベストな仕上がりになったと思っているし、いろんな角度のKOKIAが楽しめるけど楽曲の方向性はまちまちじゃなく、まとまったものになったんじゃないかなって。

──出し惜しみはゼロ？

そうですね。ロンドンに行って、「私、これから何していくんだろう？」って思って作り始めたアルバムで、それこそ「無力と知った日」じゃないですけど、今後、急に曲が作れなくなる日が来るかもしれない。だから今あるものは出しきらないとって。制作中にやりたかったことは全部詰め込みました。次回のためにこれはとっておこうみたいなのはやめましたね。

──以前はあったんですか？ そういう考え方が。

う—ん、少しはどこかにあったんじゃないかな。でも今回はできることを尽くす、ということを大事にしたいなって。

──では今後は、1作出すごとに空っぽになりそうですか？

これがまた不思議なもので、そうなるはずなのに、今はすぐに次の制作に入りたいくらい、いろいろやりたいことがあるんですよ。音楽はもちろん、それ以外のことでも。だから今は早くこれをリリースして、やりたいことをどんどんやっていくぞっていう楽しい気持ちでいますね。私、シンガーソングライターの仕事はお百姓さんみたいなものだと思うんです。毎日畑を耕したり面倒を見たりしないとダメになっちゃうし、丁寧にやってても天候に左右されて収穫できない年もある。そういういろんなことに翻弄されながらも続けていれば自分の自信が生まれていくし、手をかけただけ結果が実っていく。だから私にとって音は作物。一生懸命作るし、いろんなことを感じて、いろんなものが作用してできあがるって感じなんです。

──どんな作物が獲れるかはそのとき次第ですし。

そうそう。「今年はいいのが取れたー！」みたいな年もあればイマイチだったっていう年もあるだろうし、自分がいいと思っても人の口に合わないときもあると思う。でもそうやっていくしかないんだなってわかったし、そのほうが楽しいかなって。自分の人生を潤すことも大事だし。結局音楽も自分につながってるんだって思うようになってからはあまり焦らなくなりました。

──さて、3月末からは新たなツアーも始まります。意気込みはいかがですか？

3～4月は地方を回って、6月は東京・東京国際フォーラム ホールCの2DAYS。国際フォーラムはいつもそれなりに意気込んで立つステージなので、今年はどんなことをしようかと今、考えているところです。特にフォーラムは「おいしい音を食べたなら」というタイトルで、「私のコンサートに来てくれたお客さんがみんなおいしい音を満腹に食べて幸せな顔して帰っていってくれたらな」っていう、どんな音のおもてなしをするか考え中です（笑）。基本的には楽しく、締めるところは締めていくKOKIAらしいライブにしたいですね。