ナタリー PowerPush - 小林太郎
実験の果てにたどり着いた「今一番やりたい音」
ハーレーに乗せてもらったときに受けた強烈な衝撃
──太郎くん自身はもともとバイクに興味があったんですか?
この曲がきっかけで好きになりましたね。もともと車よりはバイクのほうがいいなと思ってたところがあったんですけど、「曲を書く前に、実際に乗ってみたほうがいいよ」ってことで実際ハーレーに乗せてもらったんですよ。地元に帰ってハーレーに乗ってるおじちゃんの後ろに乗せてもらって、1時間ぐらいツーリングしたんです。実際にハーレーを見るのも初めてだったから「おお!」と思ったんですけど、後ろに乗ってみたらバイクの爽快感っていうのも初めて体感できて。初めて「バイクってこういう乗りものなんだな」って実感したと同時に、ちょっとサーフィンに似た印象も受けて、スポーツに近い感覚があるのかなって思いました。あそこで乗せてもらえたから、「IGNITE」も「REVOLVE」も書きやすかったんだろうな。
──スポーツ感覚というのはすごくわかる気がします。あとこれは個人的なイメージですけど、バイクを好きな人って楽器を演奏する人にも似てるなと思っていて。
ああ。わかります、それは。どっちもバイクや楽器にいくらでもお金をつぎ込みますからね(笑)。実際、バイクが好きな人ってミュージシャンと同じようなこと言ってますし。ビンテージ品の話になると「昔のあれがよくてさ」って言ったりして。唯一違うのは、バイクは飲酒しながら運転できないけど、楽器は酒を飲みながらでも演奏できることかな(笑)。
──確かに(笑)。それは大きいですね。
俺は酒を飲みながら歌ったり演奏したりしないですけど(笑)。でもバイクも音楽も男の子の趣味という意味では、すごく近いところにあると思うんですよね。俺自身はもともとすごくインドアな人間で、音楽にしても練習やレコーディングはスタジオの中でやるし、曲作りも自分の家でするし。だからこの出会いを機に、バイク以外でもどんどんアウトドアな人間になっていけたらと思ってます。これまでは本当に音楽を極めたいと思って、音楽のみっていうか音楽中心の生活だったんですけど、ハーレーの後ろに乗せてもらったときに音楽以外で初めて強烈な刺激を受けたんです。それがすごく楽しかったから、音楽とのつながり抜きにもっといろんな刺激を体験してみたいと思うようになりました。
──ああ、今まではそういった刺激すらもすべて音楽に持ち帰ろうという考えがあった?
ありましたね。そもそもハーレーに乗せてもらったのも曲作りのためでしたし。でもちょうど「IGNITE」や「REVOLVE」を作るタイミングのときに「音楽のために勉強するのは一度やめよう」と考えてたのもあって、純粋にバイクを楽しむことができたんです。それは今後の人生においても、1つ大きなきっかけになるんじゃないかな。
この作品は「IGNITE」という楽曲で始めなければいけない
──再び最新CD「IGNITE」の話に戻ります。「IGNITE」や「REVOLVE」以外にもう1曲、「DIVE DEEP」という新曲も収録されていますが、こちらは非常にメタリックなアレンジですよね。
「DIVE DEEP」は「太陽」と同じ時期に作ったんですけど、「IGNITE」や「REVOLVE」がちょっと泥臭いアナログなアメリカンロックだとしたら、「DIVE DEEP」は西海岸のモダンなミクスチャーロックをイメージして。ギターのちょっとしたフレーズとかドラムのバスドラの連打とか、メタルの一歩手前ぐらいのテイストなんですよ。同じロックという枠の中で、「IGNITE」や「REVOLVE」とはちょっと違った味付けを楽しんでます。
──さらにCDのど真ん中である4曲目に、インストゥルメンタルナンバー「SOL Y SOMBRA~interlude~」が収録されています。この曲名は昨年秋に行われたツアーのタイトルと同じで、“光と影”を意味する言葉ですよね。メジャーデビュー作となった「MILESTONE」も4曲目にインタールードとなるインスト曲が収められていて、その前後で雰囲気がガラッと変わったわけですが、今回の場合は前後で特に印象が変わるわけではありません。
ああ、そうですね。「SOL Y SOMBRA~interlude~」は前回のワンマンツアーでSEに使ってたんです。それ以前のツアーってアルバムに伴うものだったんですけど、今回は「太陽」がデジタルリリースされたのみで新曲を何曲も演奏するというものではなかった。じゃあどういうツアーにしますかというときに、新曲以外にお客さんに楽しんでもらうポイントを作らなきゃいけないと考えて。MCをなくして、ライブ本編を長い1曲みたいな構成にしようとしたんです。実際にセットリストを組んでみたら、ずっと飛ばし続けるみたいな感じで(笑)。そのツアーのためのオープニングSEだったんですけど、ライブ1曲目の「INDUSTRIAL LADY」(アルバム「tremolo」収録曲)と同じBPMにしたんですよね。「IGNITE」という作品自体がすごくライブ感の強い内容だったから「SOL Y SOMBRA~interlude~」にもピッタリだと思ったし、2013年のまとめ的作品集という意味でも収録する意味があるかなと思ったんです。
──ライブのオープニングSEに使ったものを1曲目ではなくアルバムの真ん中に配置することには、どんな意図があるんでしょうか?
この作品は「IGNITE」という楽曲で始めなければいけないと思ったから。「IGNITE」で始まって「Born To Be Wild」で終わる構成が決まったとき、一番収まりがよかったのが真ん中だったんです。もちろん「SOL Y SOMBRA~interlude~」からスタートするのも、それこそ「鼓動」や「太陽」みたいな曲から始まるのもアリだけど、それによって作品のイメージがずいぶん変わりますからね。
- 最新CD「IGNITE」/ 2014/02/12発売 / STANDING THERE, ROCKS
- 初回限定盤 [CD+DVD] 2100円 / KICS-93013
- 通常盤 [CD] 1800円 / KICS-3013
CD収録曲
- IGNITE
- DIVE DEEP
- 鼓動
- SOL Y SOMBRA~interlude~
- REVOLVE
- 太陽
- Born To Be Wild
初回限定盤DVD収録内容
Studio Live~Another Side~
- Rock’n Roll Is Dead / Lenny Kravitz
- Sunday Morning / Maroon5
- A Hard Day's Night / The Beatles
MUSIC VIDEO
- IGNITE
- 太陽
イベント情報
ON THE ROAD
2014年2月18日(火)大阪府 Music Club JANUS
<出演者>
小林太郎 / TarO&JirO / カルメラ
DISK GARAGE MUSIC MONSTERS -2014 winter-
2014年2月23日(日)東京都 TSUTAYA O-WEST / 渋谷duo MUSIC EXCHANGE / TSUTAYA O-nest / TSUTAYA O-Crest
※小林太郎の出演会場はTSUTAYA O-WEST、出演時間は15:00~15:30の30分間。
小林太郎「IGNITE」発売記念インストアライブ
2014年3月28日(金)東京都 タワーレコード渋谷店B1 CUTUP STUDIO
小林太郎(こばやしたろう)
静岡県浜松市生まれのロックシンガー。初音源として、2010年1月にインディーズ1stアルバム「Orkonpood」をタワーレコード限定でリリース。力強いボーカルと洋楽の影響を感じさせる重厚なサウンド、鋭い歌詞でリスナーから支持を得る。iTunesによる2010年にもっとも活躍が期待できる新人アーティスト「iTunes JAPAN SOUND OF 2010」にも選出され、2010年夏には「ARABAKI ROCK FEST」「SUMMER SONIC」など新人としては異例となる16本の大型フェスに出演。「小林太郎とYE$MAN」での活動を経て、2012年よりソロ活動を再開。同年7月に新レーベル「STANDING THERE, ROCKS」からメジャー1st CD「MILESTONE」をリリースした。翌2013年1月には早くもメジャー1stフルアルバム「tremolo」を発売。同年7月には1stシングル「鼓動」を発表し、11月には新曲「太陽」をデジタル配信した。そして2014年2月、ハーレーダビッドソンが毎年開催するイベント「DEMO RIDE CARAVAN」初のオフィシャルタイアップアーティストに選ばれ、そのタイアップソング「IGNITE」も収録された最新CD「IGNITE」をリリース。