ナタリー PowerPush - 小林太郎

熟成し解き放たれたロック 自身の「MILESTONE」を語る

最初「誰かに曲を書いてもらって歌えればいいや」と思ってた

──昨年バンドとして活動した際、自分以外が作詞作曲した楽曲も歌っていたと思います。そのへんはソロとは大きな違いだと思いますが。

元々、俺が音楽をやり始めたときは自分で曲を書こうっていう感じではなくて。最初なんて「誰かに曲を書いてもらって歌えればいいや」って思ってたくらいですから。だから、バンドをやってみて最初はすごく楽しかったんです。でも、バンドとして化学反応を起こすには、俺がもっと自分自身というものを確立させていないとダメなんだということにも気付いて。結局、ソロでもバンドでも最終的な結論は一緒だったんですよね、今思えば。

──じゃあ自分自身をいろいろ見つめ直すって意味では、バンドでの経験も大きい経験になったと。そこに震災以降にいろいろ考えたこともあり、その辿り着いた先に今回のアルバムがあると。

そうですね。もちろんバンドのことも震災のこともあったんですけど、個人的にはもう生まれてからずっと考えていたことだったので(笑)。自分の中にあるものは本当に素晴らしいものなんだけど、それをどう扱ったらいいかずっとわからなくて。その悩みが最近になってさらに深くなって、「あ、もうダメだ」って感じるようになってきたタイミングでふっと軽くなってできたのがこのアルバムですね。だから、生まれてからずっと噛み合ってなかった自分の中の歯車が、ようやく最近になって噛み合ったっていう。ようやく自分で自分を理解できるようになったという思いが強いんです。すごくすっきりしたなって。

──そういう心境から生まれた今回の曲たちっていうのは、すんなりできたものばかりですか?

もちろんあとから細かいところを調整したりはあるんですけど、原曲を作るのは以前とは比べものにならないくらいスムーズでしたね。

以前の作品では吐き出したものに1枚布がかかっていた

──今までのお話を聞いて、今回の「MILESTONE」を聴いたときに歌詞やサウンドから漠然と感じた解放感の意味がわかってきた気がしました。実際、とてもストレートな作品ですよね。

俺も作ってるときはわからなかったんですけど、作り終えてから過去の作品と聴き比べてみたときに、なんだかわからないけど明らかに違う何かがあるなと。以前の作品では、吐き出したものに1枚布がかかっていたり、つっかえ棒で押さえていたりしたのかな。それだけなんだろうけど、すごく違って聴こえますね。

──あ、自分でもそう感じるんですね?

はい。今回は自分の中身を元の状態に近い状態で吐き出すことが、今までよりもできたんじゃないかなと。そして、そういった曲たちはライブで演奏したら、またすごく進化していくんだろうなと思うんですよね。だって、今までよりもさらに、ライブでのエネルギーみたいなものが出やすい気がするし。そこについては純粋に楽しみです。

──確かにライブを重ねることで曲が進化していく部分もあるでしょうし、お客さんに向けて歌うことでそこから跳ね返ってくるものをまた受け取って、どんどん変化していく部分もあるでしょうし。

そうですね。これからのライブでは自分の中身をできるだけストレートに、純度100%の状態で出すことができるような気がしてます。

今は地に足を付けて一歩目を踏み出した感じ

──以前は「吐き出したものに1枚布がかかっていたり、つっかえ棒で押さえていたりした」と言ってましたが、今はそういった葛藤はなくなった?

はい。今は自分の中からパッと出てきたものは、できるだけ考えないでそのまま出してます。感覚で最後まで全部出しきって、それで意味がわからないものになったら微調整すればいいし。

──それは作曲だけではなく、作詞においても?

作詞の部分が一番大きいかもしれないですね。

──その歌詞についてですが、今回自分の中から出てきたものに変化は感じましたか?

今までは感覚でパッと書いた1行から「この歌詞を元にどうやって広げていこうか?」って進めていたんですけど、今回は1行書いたら、すぐに次の1行を感覚で書いて。意味はつながらないかもしれないけど、とりあえず書いてみたんです。そうしたら意外とスムーズに書けて、さらに別に意味がつながっていないわけでもなくて。

──それって、普通の作詞の仕方なんじゃ?

そうかもしれないけど、今まで俺はその方法ができなかったんです。で、実際にできた歌詞を読んでみると、自分っていうものが以前よりもストレートに出てる気がして。自分としては別物なんじゃないかって思えるくらいに違う気がしますね。そういう意味では、このアルバムで何かが大きく変わった気がする。それっていうのは、やっと歩き出せたからだろうなって。以前はスタートラインに立つ前っていう感じだったのが、今は地に足を付けてやっと一歩目を踏み出したような、そういう感じが出せて良かったです。

小林太郎 イベントライブ
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012
2012年8月3日(金)・4日(土)・5日(日)茨城県 国営ひたち海浜公園
OPEN 8:00 / START 10:30 / END 20:30(予定)
※雨天決行(荒天の場合は中止)
※小林太郎の出演日は 8月3日(金)
TREASURE05X
2012年8月23日(木)愛知県 名古屋CLUB DIAMOND HALL
OPEN 16:30 / START 17:15
RockDaze!2012 -challenge- with cross fm
2012年8月25日(土)福岡県 DRUM LOGOS / Be-1 / SON
OPEN 14:30 / START 15:00
※出演会場未定
小林太郎 インストアイベント
小林太郎 SHORT LIVE ACT "MILESTONE Carnival Vol.1"
2012年7月23日(月)大阪府 心斎橋Pangea
START 19:00
小林太郎 SHORT LIVE ACT "MILESTONE Carnival Vol.2"
2012年7月27日(金)東京都 タワーレコード渋谷店B1 STAGE ONE
START 19:00
小林太郎(こばやしたろう)

静岡県浜松市生まれのロックシンガー。初音源として、2010年1月にインディーズ1stアルバム「Orkonpood」をタワーレコード限定でリリース。力強いボーカルと洋楽の影響を感じさせる重厚なサウンド、鋭い歌詞で、リスナーから支持を得る。iTunesによる2010年に最も活躍が期待できる新人アーティスト「iTunes JAPAN SOUND OF 2010」にも選出され、2010年4月にはインディーズ1stアルバムが全国発売された。同年夏には「ARABAKI ROCK FEST.10」「SUMMER SONIC 2010」など、新人としては異例となる16本の大型フェスに出演。10月にインディーズ2ndアルバム「DANCING SHIVA」を発表。翌月から初の全国ワンマンツアー「TOUR 2010 "DANCING SHIVA"」を全国10都市で開催した。2011年夏、新バンド「小林太郎とYE$MAN」を結成し、「SUMMER SONIC 2011」「ARABAKI ROCK FEST.11」「JOIN ALIVE」などの野外フェスに出演。2012年よりソロ活動を再開させ、同年7月に新レーベル「STANDING THERE, ROCKS」からメジャー1stミニアルバム「MILESTONE」をリリースした。