ナタリー PowerPush - 小林太郎

1stアルバム「Orkonpood」全国盤で強烈に“自分”を鳴らす19歳の正体

小林太郎が1stアルバムの全国流通盤「Orkonpood」をリリースした。モダンヘヴィロック~往年のハードロックめいた激しいロックも、目の前にいるたった1人に向けて歌うような近さのあるバラードも、命が震えるようなテンションで届ける。それが小林太郎の魅力だろう。

ソロアーティストでありながら屈強なバンドサウンドを束ねるフロントマンであり、曲の説得力を求められるソングライターでもあるという特異なスタンスは、想像以上にタフなもののはずだが、彼はなぜこの道を選択したのか。弱冠19歳。最近、さまざまなジャンルで注目される平成世代に共通する新しい価値観が、彼・小林太郎にも感じられる。

取材・文/石角友香

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ソロのほうが経験値が上がるんじゃないかと思って

──まず、今の小林さんの音楽につながる大きな影響ってなんですか。

小学校4~5年生の頃にカラオケで歌ってたら、それを聴いた親が「音程いいね」って言ってくれて、うれしくて天狗になりまして(笑)。それで、なんとなく歌うことを仕事にしたいなって思ってました。その後、中学2年生のときに日本のバンドに興味を持って、ギター/ボーカルというスタイルを知って。自分で作った曲がほめられて、ギターも弾けて歌も歌えるのが、もうすごく輝いて映ってたんです、俺の目に(笑)。なので、そうなりたいなと思って、自分で曲を作るようにしよう! と。その頃は全然できなかったんですけど。で、高校1年生からバンド活動を始めたら、オリジナルを作ってみたくなった、みたいな感じですね。しかも、そんな感じで書き始めたから、何か込めたいメッセージがあるわけではなかったので、書けなくて。曲は作りたかったんですけど、歌詞を作りたいってあんまり思えなかった。でも曲を作ることになると、歌詞も作んなきゃいけないし……とはいえ、歌詞で曲のクオリティの足を引っ張りたくないっていうのもありまして。本当に書けなくてかなり苦労しましたね。あと、曲のほうも限界が見えてきて。それは洋楽を聴いてなかったからだと思うんですけど。

──そういう自覚があったんですか?

聴かなきゃいけないのはわかってたんですけど、全然いいと思えないっていうことが続いてて。でもあるきっかけで高校1年生の終わり頃に洋楽のバンドがすごくカッコよく思えたことがあって、そこからばーっと洋楽を聴くようになりました。

──なるほど、今の音楽性に納得がいきます。最初にこのアルバムを聴いたとき、ソロアーティストなのに、ここまでバンドサウンドを鳴らしているのはなぜなんだろう? と思ったんです。

ずっとバンドをやっていたので、コピーを演るにしても、曲の作り方にしても、バンドでしか考えられないというか。バンドのやり方がいちばん、頭の中でしっくりくるイメージなので、作る曲は全曲バンドサウンドになってます。もちろん、俺がキーボードとか打ち込みとかミックスとかができる能力があったら、それはそれでまた違うと思うんですけど。まぁ、そういう能力があるかないかという以前に、まだバンドサウンドを使いこなせてないので、ソロで活動することが決まったときも、バンドサウンドを変えるつもりはなかったですね。

──ソロでの活動を選んだのは?

バンドだからこそ起こる化学反応も好きなんですけど、自分でもうちょっとできるようになりたくて。できるようになれば一緒に演る人とももっとやりやすくなるし。とりあえず、自分がいい曲を作れれば方法は問題じゃないと思うんで。たぶんソロのほうがいろいろと苦しいことはあるだろうけど、そっちのほうが経験値が上がるんじゃないかなと思って、賭けてみたというか。やってみたかったんですね。

必死なんで、自分ではわからないところもある

──小林さんは「いい曲を書かなければ」っていう強迫観念めいたものが強そうですけど、その原因ってなんでしょうね。

いい曲を書けば仕事になるかもしれないっていう現実的な部分だったり、純粋に自分でいい音楽を聴くとすごくテンション上がったり。それに、いいものを思いついたら作りたくなったり、誰かに聴いてもらいたくなったりっていう欲もありまして。まぁ、きっかけは最初に言った、両親にほめられたとか、聴いてる人に「いい」って言ってもらいたいとか、自分でやってて気持ちいいって感じたいとか、いろいろな思いでした。でも、自分に求めるものが多いんで、高校時代はなかなか曲ができなくて悩んだりもして。

──意外ですね。この人、なんでここまですさまじいエネルギーで歌えるんだ? っていう感じなのに。

必死なんで、自分ではわからないところもあるんでます。特に歌詞はそうで、作っても自分で分析できない。

──すごく自分を持て余してるような歌が多いと思うんですが?

あれー?(笑) どうだろう。歌詞はいつも「う~ん……」ってうなりながら書いてます(笑)。

──そうなんだ(笑)。でも、意味がどうのこうのということを吹き飛ばしてしまうようなボーカルだから、それが小林さんの中での「ウソじゃないこと」の表現なのかなと思ったんですが。

歌い方に関してはもろ曲調ありきで、ギターがこうきたら歌はこうだろうとか、それを突き詰めていく感覚。「こういうイメージがあるから」っていう感じで歌うことが多いです。そういう言い方をすると無機質に聞こえるかもしれないですけど、自分が歌いたいように歌ってるだけじゃない感覚があります。

──なるほど、そこは客観的なんですね。それにしてもこう、今話してる小林さんは素直ですよね。全く虚勢を張ってないというか、バリアがない感じ。

そうですね。そういうところが曲にも影響すると思うんですよ。聴こえ方っていうか、そういう態度みたいなところで曲を見せたくないなと、すごく思っていて。そんな必要ないというか、いい曲だったらいい。普通に、曲を客観的に評価してもらえるように、今はやっていきたいなと思ってますね。

1stアルバム「Orkonpood」 / 2010年4月14日発売 / 1500円(税込) / Driftwood Record / AKDR-10001

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CD収録曲
  1. ドラグスタ
  2. 安田さん
  3. 美紗子ちゃん
  4. SAKURA CITY
  5. 蛇烙
  6. ソフィー
  7. スノーダンス
  8. リバース Bouns Track
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小林太郎(こばやしたろう)

静岡県浜松市生まれの19歳。初音源として、2010年1月13日に1stアルバム「Orkonpood」をタワーレコード限定でリリース。力強いボーカルと洋楽の影響を感じさせる重厚なサウンド、鋭い歌詞で、リスナーから支持を得る。iTunesによる2010年に最も活躍が期待できる新人アーティスト「iTunes JAPAN SOUND OF 2010」にも選出された。
2010年4月14日には1stアルバムが全国発売開始。「ARABAKI ROCK FEST.10」「SUMMER SONIC 2010」などの大型フェスティバルにも参加が決定している。