花にラーメン
──アートワークについても伺いたいんですけど、シングルから一貫して限定盤デザインにイラストレーターのかとうれいさんを起用していますよね。これはどういう人脈なんですか?
小林 これはもう、完全に私がファンで。レーベルのスタッフさんからアートワークに関する希望を聞かれたときに「ぜひ、かとうれいさんに描いてほしい」と答えたのが始まりです。私のイメージでは透明感というか、青がすごくきれいなイラストレーターさんというイメージがあったんですけど、違う色でも、かとうさんらしさもありつつ私らしさも出してくださっていて。ちゃんと私や作品に寄り添って一緒に作ってくださっているんだなと感じます。それこそ「NO LIFE CODE」のときは、イラストに私の好きなものを詰め込んでもらって。
田代 そういえば、その会議のときに僕が「花の中にラーメンを入れてくれ」と言いましたね。
──花の中にラーメン……?
小林 (笑)。ひまわりの真ん中にラーメンが描かれているんですけど、あんまり見つけてもらえないんですよ。
──そもそも、なんで花にラーメンを入れたかったんですか?
田代 最初に「これからの多様な価値観をテーマに、その生き証人みたいな感じ」っていうアーティストイメージを決めたとき、「例えば左きき用のハサミってあるよね」という話からどんどん転がっていって、最終的に「多様なものが一堂に会している」というビジュアルコンセプトに落とし込んでいったんです。だから、花の中にラーメンがあったりするのも「こういう組み合わせがあったっていいじゃない」「意外じゃないぞ」みたいな。
──なるほど。今回のイラストについてはいかがですか?
小林 今回は「浮遊感」をテーマにしていて。不思議な感じというか、ブックレットのほうでも私がよくわからない上のほうにいたりとか、「それが上なのか?」という重力逆らい系があったり。その不思議感も取り入れてくださっているので、本当にジャケ買いしてくれてもいいなっていう感じがしています。本当にかとうれいさんをあいきゃんチームに迎え入れることができて幸せです。
──通常盤が写真ベースのデザインになっているとはいえ、ご自身の写真を使わないジャケットで作品を出すのはけっこう勇気のいることかなと思うんですけども。
小林 むしろ、そのほうがいろんな人に届く機会にもなるのかなと。
田代 謙虚ですなあ。
小林 いやいやいやいや。だって、これ手に取りたくなりますもん!
最高すぎてどうしましょう
──アルバムが完成してみて、手応えとしてはどんな感じですか?
小林 全部が最高すぎて、どうしましょうって感じです。
田代 ね。1stアルバムでこんないいものができちゃって。自分たちも満足感があります。
小林 聴くときの感情によって聞こえ方が違う曲もあるので、全部がグラデーションになっていて面白いなって。私の歌もグラデーションしているだろうし、みんなが受け取るときもそうだろうし。どんな気持ちで聴いてもいいし、全部正解だなって思います。何も否定しない、全部を肯定してくれるような作品です。
田代 アルバムならではの曲、それこそ「Night Camp」のようなものを入れられたことがけっこう大きいなと。単に「こんなこともできるんだぞ」とチラ見せするだけじゃなく、最終的にすごくいいものになったので。これで終わりではなく、「次また何がやれるか楽しみだな」という気持ちになれるアルバムになりましたね。
──このアルバムをどういう人に届けたいですか? ファンには間違いなく届くと思うので、まだ小林愛香を知らない人たちのうち、「こんな人が聴いたら幸せになれるよ」というイメージを教えてください。
小林 もちろん誰にでも聴いてほしいんですけど……私は背中を押してあげるタイプじゃなくて、寄り添って一緒に歩いていきたい気持ちで歌ってるんです。だから、曲を聴いたら「1人じゃない」と感じてもらえるんじゃないかな。ちょっと明るい気持ちになれたり、プラスな気持ちで終われるところが小林愛香の音楽のいいところだと思います。だから、私が幸せを与えるというよりは、みんなで一緒に幸せになりたいですね。
田代 あとは、アニメ、声優業界以外の人たちにも知ってほしいなというのはありますね。ある種の偏見というか、「どうせこんな感じでしょ」と思わずに、「試しに聴いてみたら、意外といいかもよ?」という思いはあります。
──確かに、いわゆる音楽ファンの中には、歌っているのが声優さんというだけで初めから聴こうともしない層は一定数いますもんね。昔ほどではないにせよ。
田代 そう、それはもったいないなと思います。
──職業作家の作る曲を専業シンガーが歌う、という構図は現代のJ-POPシーンからは消えかかっていますけど、その文化って実は声優シーンが一手に引き受けてますよね。そういう“プロのシンガーによる歌”を楽しみたい人は、みんな声優シーンに来ればいいのになと思うことがあります。
田代 まさにそうですね。僕も長年いろいろやらせてもらっている中で感じることとして、声優さんには“表現力”と“滑舌”という大きな武器がある。イントネーションも含めて、言葉に対する理解力がすごくあるんですよね。そういうスキルも含めて、広く音楽ファンの皆さんに「こういうアーティストもいるんだ」というのを知ってほしい。聴かれずにスルーされるのは、本当にもったいないなと思ってます。
小林 作家さんや演奏してくださる方も含めて全員がそれぞれにスペシャリストだからこそ、私も安心して歌える部分は大いにありますね。あんまり責任とかを考えるタイプでもないのでアレなんですけど(笑)、ちゃんとプロとして、これからもよりよいものを追求していける自分でありたいと思います。
ライブ情報
- 小林愛香 LIVE TOUR 2021 “KICKOFF!”
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- 2021年6月11日(金)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2021年6月12日(土)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2021年6月19日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2021年7月7日(水)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
- 2021年7月8日(木)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)