Welcome トゥ (K)NoW_NAME|立花綾香とNIKIIEが語るカオスの裏側

呪文に支配されてます

──そして5話のEDテーマになったのは、Shuhei Mutsukiさんが作曲、NIKIIEさんが歌と作詞を担当した「D.D.D.D.」ですね。

NIKIIE この曲は呪文というか、“魔法の言葉”というアイデアがあって。そのうえで「本来だと一緒に並ばないような言葉を使ってカオスな世界観を表現してほしい」というリクエストがありました。そこでまず、「ドドパリポペ リロロヘロ」という魔法の呪文にあたるパートから想像していきました。

──魔法の呪文を考える機会はあまりないですよね。

NIKIIE ですよね(笑)。そもそも「ドロヘドロ」という作品タイトル自体がすごく印象的なので、まずは“ド”を使いたいと思っていました。そこから口がなじむ言葉でいろいろなパターンを考えて、寝る前に音の響きが合う言葉を探したり……。

立花 呪文に支配されてますね(笑)。

NIKIIE

NIKIIE (笑)。そのうえで聴いていて音としても心地いいものにしたいと思っていました。あとは最初に話したように、初めの頃は曲の世界観の汲み取りを間違えていたんです。その時点ではもうちょっと“ふがいない夢”のようなものへの思いを想像して、ストーリーを持たせて歌詞を書いていたので、一旦頭をリセットして深夜のカフェで完成させました。

立花 私は家族旅行中にやっと完成させました(笑)。

──なるほど。それぞれに大変な作業だったんですね。

NIKIIE やっぱり今回の歌詞は言葉遊びの要素が強いので、時間がかかったんですよ。簡単に出てくる言葉を入れていっても、結果として面白いものにはならないので。

立花 そのうえで、あくまで作品の世界観に寄り添う必要がありますしね。

NIKIIE でも、これまでは使わなかったいろんな言葉に出会ったので、作詞自体はすごく楽しかったです。レコーディングに臨むときには、Auto-Tuneでボーカルを加工したり、録ったものをブツ切りにしてアレンジしても面白いのかもと思ったんですけど、実際に録ってみたら意外とそのままでもいいものになると思えて。あとはギリギリまで譜割を悩んだりもしました。歌から受ける印象は、そのちょっとしたニュアンスで変わってくると思うんですけど、この曲では感情的にならないようにしたかったんです。

──確かにわざと淡白に歌ってみることで、逆に狂気が感じられる歌になっていますね。

NIKIIE そうですよね。平たく歌うというか。この曲自体が縦ノリになっているので、歌はそれとは違う雰囲気になるように意識していきました。

立花 魔法の呪文のところは一度聴いたら忘れられないですよね。NIKIIEさんの声にぴったり。これを私が歌っても、きっと耳に残らないんじゃないかと思いました。NIKIIEさんの声でこそ脳に刻み込まれるような雰囲気があるというか。

NIKIIE うれしい!

──立花さんの声だと、「Welcome トゥ 混沌(カオス)」のような楽曲が似合いますよね。同じカオスを表現するにしても、さまざまな方法があるということを改めて感じました。そもそもED曲を今回のようにたくさん用意する体験は特別なものだったんじゃないでしょうか?

立花 これは私たちが実際に歌詞を書かせていただいてわかったことなんですけど、「ドロヘドロ」ではEDテーマも次回への続きになっている感覚で、曲自体がその話数の内容にかなり寄せて作られているんです。なので、各話の最後に登場する「魔の〇でわかったこと」(本編のおさらい)と同じような役割を、音楽面で担当しているのがEDテーマなのかなと思います。

NIKIIE 毎回ストーリーに合わせたエンディングで物語が終わるのはすごく爽快ですし、これまで挿入歌では話数ごとに曲が変わることはありましたけど、やっぱりEDテーマが変わるのは、また違った印象でした。EDテーマは挿入歌としてキャラクターの心情を描くというよりも、作品をトータルで考えた曲で、それが回を追うごとに変わっていくという感覚なので、配信サイトなどで観るときにも、毎回飛ばさずに聴いてもらえるとうれしいです。

立花 映像も曲ごとに変わっていくんですけど、それも素敵なんですよ。

キャラクター全員を愛せる「ドロヘドロ」

──「ドロヘドロ」は現在5話(2月9日OA)まで放送されています。お二人がここまでの放送で印象的だったシーンなどがあれば教えてください。

立花 3話でカイマンの首が切られるシーンですね。アニメの序章で主人公の首が切られることはなかなかないですよね。「ドラゴンボール」でクリリンが死ぬシーンぐらい衝撃があると思いました(笑)。

NIKIIE あのシーンの心さんがすごくカッコいい! あとは1話のカイマンの悪夢の表現がすごかったです! 支離滅裂な雰囲気がリアルに表現されていて、すごく印象的でした。

立花 あとは料理シーンですよね。OP映像も話題になっていますけど、餃子がすごくおいしそう(笑)。

立花綾香

──コミカルな要素も深いテーマも両方あって、今後も観ていくうちにさまざまな魅力を感じられそうな作品ですね。

立花 最初にお話ししたように、「ドロヘドロ」では格差社会のようなものも描かれています。人が魔法使いの実験台にされていたりして……今の現実社会では、みんな平等で、みんなが自由を語れて、みんなが人を罵倒できる世の中にもなっていると思うんですけど、だからこそ何かを言うときに“自分が思っているから言っている”のか、“みんなが言っているから言っている”のかがわからなくなっている面もあると思うんです。でも「ドロヘドロ」の世界では、カイマンもニカイドウも登場人物みんなが信念を持っていて、自分の信念に基づいて行動している。そういう意味でもカイマンが魔法使いを狩るだけではない、かなり奥深い作品だと思います。

NIKIIE 「お前の目的はこうだよな」「でも俺の目的はこうだ」と認め合う関係性ってすごくいいですよね。登場人物がそれぞれに信念が違って、個性も違っていて、でも誰1人嫌いな人がいない。その個性の立ち方がすごく素敵だと思います。今の時代、物事の一面を見て全部を見た気になることもできると思うんですけど、「ドロヘドロ」は登場人物たちのいろいろな面を見たうえで、その全部を愛せるような雰囲気で。ここまで個性があるキャラクターがそろって、その全員を愛せるというのはすごく魅力的なことだと思います。

──(K)NoW_NAMEとしては、今回の作品を通してどんなことを感じましたか?

立花 今作は「我々はこういうものだよ」ということを、より伝えられるものになったんじゃないかと思います。私たちは第一に“作品に寄り添う”ことを大切にしていて、「こういう音楽が作りたい」ではなく、「こういうアニメに合う音楽を作りたい」と考えているので。それをすごく表現できたんじゃないかなと思っています。

──確かに作品ごとにここまで音楽性を変えられるのは、(K)NoW_NAMEの皆さんの大きな特徴かもしれません。同じような形式のユニットはなかなかないと思うので。

NIKIIE そういう意味でも「作品に合った作品を我々も作っていく」「作品に求められたものを音楽で返す」という(K)NoW_NAMEの使命は果たせているんじゃないかなと。特に今回は本当に音楽性の幅が広がって、(K)NoW_NAME全体の幅も広がったと思うので、常に風通しをよくしつつ、私たちがそれぞれ培ってきたものを生かして、これからも作品に寄り添う音楽を作っていけたらいいなと思っています。

ライブ情報

(K)NoW_NAME 4th Live “おはよう混沌”

2020年3月14日(土)東京都 Veats Shibuya

アニメ「ドロヘドロ」特集 林田球インタビュー