音楽ナタリー Power Push - KNOCK OUT MONKEY

迷いなしの快作で“申年”スタート

KNOCK OUT MONKEYの2016年最初のリリースは、6曲入りミニアルバム「RAISE A FIST」。2ndアルバム「Mr. Foundation」(2015年1月発売)を携えた全国ワンマンツアーを経て、さらにスケールアップを果たした彼ら。「振り切ってやろうぜって思えたし、迷いがなくなった」というテンションで制作された本作は、リードトラックの「GOAL」を筆頭に現在のKNOCK OUT MONKEYの充実ぶりが強く反映された作品となった。また、CD+2DVD盤のDVDには昨年5月に行われた東京・新木場STUDIO COAST公演の模様とそのワンマンツアーのドキュメンタリーを収録。ライブに対する彼らの真摯なスタンスが刻まれた、貴重な映像作品となっている。

今回はフロントマンのw-shun(Vo, G)に単独インタビューを実施。新たな決意表明とも言える「RAISE A FIST」の制作やバンドの現状について語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 佐藤類

「妥協したくない」という思いが特に強かった

──2016年のスタートとなるミニアルバム「RAISE A FIST」がリリースされます。現在のKNOCK OUT MONKEYの勢いが反映された、素晴らしい作品だと思いました。

w-shun(Vo, G)

あ、ホンマですか。めっちゃうれしいです。

──1曲1曲の濃度が高いし、KNOCK OUT MONKEYの今の音が生々しく表現されていて。制作したのは去年の「Mr. Foundation」のツアーが終わってからですよね?

そうですね。ツアーが終わった段階では「GOAL」があるかないか、くらいでした。今回は「一切妥協したくない」という思いが特に強かったんですよね。とにかく、やれるところまで突き詰めようって。いつもだったら「だいたいこのあたりにリリースできたらいいね」っていうケツ(締切)が見えている状態で制作に入るんですけど、今回はそれもなくて。「(完成は)いつになるかわからへんけど、とにかくやれるところまでやろう」という感じだったんですよね。

──そういう制作のスタイルは、スタッフを含む周りの理解も必要ですよね。

はい。ただ、思ったよりも早くできあがったんですよ。オケも一気に録れたし、すごく濃い感じでやれて。バンドの状態がよかったというよりも、「振り切ってやろうぜ」って思えたし、迷いがなくなったのが大きいと思いますね。去年のツアーで肉体的にも精神的にもタフになったんですよ。そのときはライブ以外のことは何も考えられなかったんですけど、そこで得たことがバンドの力になっていたのかもしれないですね。ただ、歌詞は大変でした。あまり(レコーディングを)飛ばしたことはなかったんですけど、歌詞ができあがらなくて、1日伸ばしてもらったり。

──それくらいこのアルバムに対する思いが強かったと。

KNOCK OUT MONKEY

自分の思いとしては相当な量を込められたと思います。歌詞の言葉選びにも極端にこだわっていたし、「やるからには伝わってほしい」という気持ちも強かったので。歌詞をマネージャーやスタッフに見せて「これで俺の言いたいことが伝わるかな」って聞いたり、「この言葉はこうしたほうがいい」とか、細かいところもかなり突き詰めたんですよね。曲作りに関しても同じで、1個1個のフレーズをさらに詰めたんですよ。今までは1回スタジオに入って、ジャムりながら「この感じがいいかもね」ってなったら、だいたいそのままの感じで進んでたんです。今回はそこからメンバー1人ひとりが「ホントにこれでいいのか?」って考えたし、「このフレーズ、こうしたいんだけどどう思う?」という意見のやり取りも多くて。その分、1人ひとりの思いを込めて作れたと思いますね。

「GOAL」の歌詞は自分を象徴してる

──特にリード曲「GOAL」は、本作の充実ぶりをもっとも強く示す曲だと思います。まず、生々しいライブ感のあるサウンドが印象的で。

自分たちが得意としている感じというか、ド直球な曲ですからね。一番初めに取りかかった曲だし、一番言いたかったことが詰まっているんですよ。この曲ができないと、ほかの曲にも取りかかれへんなというのもあったし……。「GOAL」の歌詞を書くだけでノート半分くらい使いましたからね。今までに比べると紙の消費量もハンパなかったです(笑)。

──あえて伺いますが、「GOAL」の歌詞の中で、w-shunさんがもっとも言いたかったことはなんですか?

うーん……。やっぱり、特にDメロの部分ですね。「忘れられない光景や まだ付きまとう後悔が この自分を作ってる」から「未来に燃えてる」まで。完全に自分を象徴してますからね、この歌詞は。

──過去の記憶が現在のモチベーションになってる?

w-shun(Vo, G)

うん、めちゃめちゃなってます。もちろん、いいことよりも悔しかった思い出のほうが残りやすいんですけどね。「あのときライブハウスでダメ出し食らったよな」とか、ののしられたことも根に持ってるし(笑)。こっちはいつでも必死だったのに、ライブのあと「何やってんの? なめてんの?」って言われたり……。今でこそ笑い話になってることも多いですけど、あまりにも悔しくて「こいつ、ボコボコにしてやろうか」って思ったこともありました。ただ、今になって思えば「あの言葉がなかったら続いてなかったな」という場面はいくらでもあるんですよ。そういう経験がなければ、大きなフェスやライブのステージには立ててないと思うんです。根拠のない自信だけでは全然ダメで、「これだけやってきたんだから大丈夫」ということが必要なので。それはすごくありがたいなって思いますね。昔からお世話になっている人たちにがんばってるところを見てもらったり、一緒に昔話をできるのが一番の財産だとも思います。

──KNOCK OUT MONKEYはライブでのし上がってきたバンドですからね。「A live」はKNOCK OUT MONKEYのライブそのものをテーマにしたナンバーで、この曲からも「ツアーの直後に作った」というリアリティが伝わってきます。

毎回1曲はライブアンセムを入れたいんですよね。前回は超メロコアの2ビートの曲(「Our World」)だったんですけど、ウチのお客さんは年齢層が幅広いし、全員で参加できるような曲を作りたいなと思って。こういう曲を作ってるときって楽しいんですよね。バンドをやってるって感じがして。

──「ナオミチがストレッチ」「dEnkAの一人反省会」「聞かぬフリあーくんに ブッ倒れていてるままの俺」など、メンバーの楽屋での姿を描いた歌詞もありますね。

KNOCK OUT MONKEY

メンバーをイジってやろうと思ったんですけど、全然反応もなく、スルーされました(笑)。これ、全部ホントなんですよ。ナオミチ(Dr)は必ず「あ、準備しよ」って言ってからストレッチを始めるし、dEnkA(G)はライブが終わったあと「あそこが……」ってずっと1人でしゃべってるし、亜太(B)は「ふーん」って聞いてるようで聞いてないし、俺はずっとゼーハーしながら倒れてるっていう。かなりリアルです(笑)。

──(笑)。ちなみにKNOCK OUT MONKEYはライブの反省会ってやるんですか?

その場ではしないですね。どうしても話したほうがいいときは、次の日の移動中とかに話しますけど。対バンのときは、反省会よりも(対バン相手の)ライブを観て、そこで何かを吸収したほうがいいと思うんですよ。そこで出てくる感想のほうが大事じゃないかなって。

ミニアルバム「RAISE A FIST」/ 2016年1月6日発売 / Being
[CD+2DVD盤] / 4860円 / JBCZ-9023
[CD盤] / 1620円 / JBCZ-9024
CD収録曲
  1. GOAL
  2. Flowers
  3. OH, NO
  4. A live
  5. For the future
  6. Walk
DVD DISC 1収録内容
2015年5月17日「TOUR 2015 "Mr. Foundation"」ファイナル公演@新木場STUDIO COAST
  1. RIOT
  2. If you fly
  3. TODAY
  4. Take you
  5. Priority
  6. 実りある日々
  7. Greed
  8. Climber
  9. Gun shot
  10. ?
  11. Scream & Shout
  12. MOON
  13. Bite
  14. How long?
  15. Paint it Out!!!!
  16. Wonderful Life
  17. Our World
  18. Flight
  19. Eyes
DVD DISC 2収録内容
  • TOUR 2015 Documentary
KNOCK OUT MONKEY(ノックアウトモンキー)

w-shun(Vo, G)、dEnkA(G)、亜太(B)、ナオミチ(Dr)からなる、神戸で結成された4人組バンド。ラウドロック、レゲエ、ヒップホップ、メタル、エモといったさまざまなジャンルの要素を取り入れたキャッチーなサウンドと、感情むき出しに咆哮するボーカルが魅力。2012年にアンドリューW.K.の来日公演でサポートアクトを務めたほか、「SUMMER SONIC」をはじめ数々の大型フェスに出演し、その名を広く知らしめた。2013年10月に1stシングル「Paint it Out!!!!」でビーイングよりメジャーデビュー。2014年2月に1stフルアルバム「INPUT ∝ OUTPUT」を、同年7月以降「Wonderful Life」「Greed」「How long?」と3枚のシングルを発表するなど精力的なリリースを重ね、2015年1月に2ndフルアルバム「Mr. Foundation」を発表。同年1~5月に全17公演のワンマンツアー「KNOCK OUT MONKEY TOUR 2015 "Mr. Foundation"」を開催し、ツアーファイナルを東京・新木場STUDIO COASTで迎える。2016年1月には初のミニアルバム「RAISE A FIST」をリリース。