ナタリー PowerPush - 清竜人
どうしちゃったの!? 異色作「MUSIC」に迫る 堀江由衣との対談&単独インタビュー
中途半端なものには絶対したくなかった
──今回のアルバムは、多くのファンが「清竜人、どうしちゃったんだろう?」と思うであろう大きな変化が感じられます。そこを詳しくお聞かせ願いたいなと。
単純に、今までずっと自分のやりたい音楽を1枚目、2枚目、1曲目、2曲目と順番に出してきたような感覚なんですよ、自分としては。もちろんそれなりの統一感は考えるんですけれど、まず大前提として自分のやりたいものをやる、書きたい曲を書く。そうしてたら、順番的に4枚目のアルバムがこういう作品になったっていう。
──とは言えリスナーの立場からすれば、かなり豪快なシフトチェンジだと感じると思うんですね。僕もそうでしたし。
まだ作ったばかりで客観的になれない時期なので、自分ではわからないですね。作り手としては、今まで自分の中にあったものを出しただけなので、自分自身に対する抵抗や驚きみたいな気持ちはないです。時間を置いて聴き返してみると、何か感じるかもしれないですけど。
──1曲ずつそれぞれ違うアレンジャーを立てる、という制作形態も今までとは大きく異なりますし、今作はこれまでと根本から違いますよね。そういう極端に振り切ったものを作りたいっていう気持ちの表れなのかと思っていたのですが。
結果を見ればそうですけど、振り切るというよりも、やるからにはしっかりしたものを作りたいし、アルバムとして中途半端なものには絶対したくなかった。そういう自分の姿勢が、振り切ったように感じられるのかもしれないです。今回は100%しっかりと作り込めたので、その結果が「振り切れてる」と感じてもらえるなら、それは中途半端なものにはなってないということだから狙いどおりですね。
根っこの部分はちゃんと持ち運んで、あとは一新
──参加しているアレンジャーやプレイヤーも、音を聴く前からワクワクするような顔ぶれで。真っ先にクレジットを確認するタイプの音楽ファンには、たまらない作品だと思います。
そこを楽しんでくださる方がいるのはすごくうれしいですね。僕もクレジットは必ずチェックするほうですし。この曲ならこのアレンジャーさんだなって考えるのは楽しかったです。曲にマッチするアレンジャーさんをセレクトするのは、今回のアルバム制作の中でもすごく大事な作業だったので、何度も考えた上でオファーさせていただきました。
──今作では清さん自身が、各アレンジャーさんの世界に飛び込んでいるような印象を受けました。メロディの骨格や歌い方など、根っこの部分は実は変わっていない気がするんですが、そのほかの要素は全部変わったという印象すらあって。
制作の進め方については、根本から変えてみようかなと思ってたんですよ。ただ、おっしゃっるとおり、なくしてはいけない自分の根っこの部分はちゃんと持ち運んできたかったんです。その上で、あとの部分は一新したと言っていいほどやり方を変えて。エンジニアも、今まではずっと渡辺修一さんと一緒にやってきたんですけど、今回は僕がアレンジした1曲だけ渡辺さんで、あとはアレンジャーだけでなくエンジニアも全曲違う。ボーカル録音も今までは同じディレクターがやってたものを、今回は歌のディレクションからセレクトまでアレンジャーにお任せして。あと、今回の大きな違いとして、僕はどの曲でも1本しか歌ってないんですよ。コーラスなどは全てほかの方にお願いしました。
──自分でコーラスを入れないと、ハーモニーの重ね方など細かいところにも変化がありそうですね。
それも目的のひとつですけれど、楽曲のことを考えたときに、今回はそうするのがベストなんじゃないかなっていう判断ですね。主旋律以外も自分で歌ってしまうと楽曲の世界と合わない気がしたし、中途半端に以前の作品を引きずってるような、悪い意味で過去の自分を踏襲した作品になってしまうんじゃないかなっていう危惧があって。
──変化を加えることによって、積み上げてきたものが壊れてしまう恐怖はなかったのでしょうか。どこまでやっても根本は揺るがないという自信があった?
そうですねえ。根本から変わってしまったら自分の中でもいろいろあるんだろうけど、音楽を作ることへの姿勢は変わってないので、作り手としての不安は一切なかったですね。
名前を呼んでもらうのが楽しくなってきて
──どの曲もストーリー性のある、一風変わったミュージカルのような世界観ですけど、主人公となる人物が架空のキャラクターではなく「清竜人」だというのが興味深くて。あえて自分の名前を連呼することで「清竜人」を記号化させているのかとも思いました。
今回のアルバムはフェイクドキュメンタリーにも似たような感覚があって。役名として自分の名前を使ったほうが歌詞としてもしっくりきたので。最後に自分の名前を叫んで終わる曲もありますが、そこはやっぱり自分の名前じゃないと成立しないというか。だから自然と最初から組み込まれていましたね。あと、女性キャストに名前を呼んでもらうシーンも多々あるんですけど、それももちろん最初から考えてた部分で。レコーディングを進めていくうちに、名前を呼んでもらうのが楽しくなってきて、呼んでもらう量をだんだん増やしたり。
──アハハハハ(笑)。そこに照れはないんですか?
ないですね。どんどん気持ち良くなってきて。当初考えてたのは「ぼくはシンデレラ・コンプレックス」の名前を呼ぶシーンだけだったんですけど、だんだん「やっぱりここにも欲しいなあ、また呼ばれたいな」って。作品の内容ももちろん考えた上ですけど、自分の欲求も出てるかな。
──なるほど(笑)。それはちょっと意外でした。むしろそういうことに照れがあるタイプだと思ってたので。基本的には、自分からどんどん前へ前へ、というタイプではないですよね。
まあ、そうですかね。普段はひとりで家にこもってますけど、外に出てない分のエネルギーが音楽に凝縮されてるんですよ。よく言えば(笑)。
CD収録曲
- CAN YOU SPEAK JAPANESE?[編曲:高橋諭一]
- インモラリスト[編曲:a.k.a.dRESS(ave;new)]
- Fall♡In♡Loveに恋してるっ♪[編曲:MOSAIC.WAV]
- おどれどつきまわしたろか[編曲:たかはしごう]
- 雨[編曲:ANANT-GARDE EYES]
- GENERATION GAPなんて言わせない![編曲:川田瑠夏]
- りゅうじんのエッチ♡~ぼくのばちあたりな妄想劇~[編曲:新井健史]
- ゾウの恋[編曲:宮川弾]
- バカ♡バカ♡バカ♡[編曲:橋本由香利]
- ぼくはシンデレラ・コンプレックス[編曲:清竜人]
DVD収録内容
「EMI ROCKS 2012」のパフォーマンスを完全収録
- CAN YOU SPEAK JAPANESE?
- おどれどつきまわしたろか
- りゅうじんのエッチ♡
~ぼくのばちあたりな妄想劇~
ライブ情報
清竜人 MUSIC SHOW
2012年7月24日(火)
東京都 SHIBUYA-AX
OPEN 18:30 / START 19:30
料金:1F立見 6000円(ドリンク代別)
清竜人(きよしりゅうじん)
1989年生まれ、大阪府出身の男性シンガーソングライター。15歳でギターを手にし、作曲を始める。16歳のときには早くも自主制作盤を発表。そのクオリティの高さが音楽関係者の間で話題となる。2006年には「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2006」でグランプリを受賞し、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006」に出演を果たす。映画「僕の彼女はサイボーグ」への挿入歌提供を経て、2009年3月にシングル「Morning Sun」でメジャーデビュー。同曲はau Smart SportsのCMソングに起用され、スモーキーな歌声とみずみずしいメロディがメディアやお茶の間の注目を集めた。同月発表の1stアルバム「PHILOSOPHY」では、自身の持つ音楽性の幅広さを証明した。その後もシングル、アルバムを精力的に発表し、ライブツアーも定期的に開催。情感豊かなサウンドが幅広く支持されている。