ナタリー PowerPush - 清竜人
ありふれた日常が愛おしくなる 生活密着アルバム「PEOPLE」誕生
メロディと歌詞が一緒に出てくる
──ところで今回のアルバムの中で早い時期に、歌詞も込みでビジョンが見えた曲ってどれですか?
シングルとして出した「ぼくらはつながっているんだな」っていう曲ですね。この曲ができあがって、リリースするって決まったときに、アルバムまでの道のりみたいなものが見え始めたというか。遠くのほうにゴールポイントがうっすら見えたので、そこがスタートだったかなと思いますね。
──清さんって、曲が先にできるタイプですか?
えっと、昔はほとんどそうだったんですけど、最近は曲と歌詞を一緒に作ることが多いですね。
──今回のアルバムの曲はそんな感じがします。メロディとともにすでに言葉がある、みたいな。
そうですね。メロディを口ずさんで作る中で歌詞の端々ができる曲が多かったですね。「痛いよ」を作るときも「胸が痛いよ」って、口ずさんでいるときにそのワードが出てきたことによって、そこからパーッと歌詞の全体像が膨らんだというか。そういうことが最近すごく多くて、しっくりくるワードがメロディを創作しているときに自然に出てくることが増えたので、それはすごく良い変化なのかなと思ってます。
──最初はアルバムを歌詞カードを見ずに流して聴いていたんですよ。するとすごく言葉とメロディが一緒に入ってきて、「なんだか普通のことを歌ってる」と思って。
ははは(笑)。
──そのまま聴き進めて、4曲目の「パパ&ママ愛してるよ!」で、なるほど!と思ったんです。「ありふれたものや ありきたりなことって きっと 大切だからこそ ありふれてるんだよ」っていうフレーズが出てきたとこで、清さんが今回やろうとしてることの軸がわかった気がして、ハッとして。
そうですね。ホントにこの4曲目が、アルバム全体のことを歌ってるような曲だし、テーマにも触れるような歌詞になっている曲だな、と思いますね。
──そこで気持ちがパシッとリンクしまして(笑)。
良かったです(笑)。
──歌詞を読みながら聴くと、1曲ごとにいろんなことを気付かされるんですね。抽象的な歌詞はないし。
あぁ、そうですね。たぶん抽象的な表現ができないから逃げてるだけだと思うんですけど。それこそ風景美を詞で描いたりとか、そういうちょっとなんて言うのかな……まわりくどい表現で感情を美しく伝えるようなことが、僕にはできなくて。だからすごく露骨な表現になってるんだと思うんですけれど。
子供たちの声が曲のメッセージをより強くした
──音楽的に今回、新たに挑戦できたと思うことはありますか?
大きいのは自分以外の声、人の声をすごく多く用いた楽曲が収録されてることですね。それが音楽的にも歌詞的にも、今回のアルバムにとっていいことになったなっていうふうに思ってます。
──「おとなとこどものチャララ・ララ」では大人と子供が歌うパートを分けてますけど、この発想はどこから?
まず、その……今回のアルバムでは絶対に子供と一緒にやりたいなっていうのがあったのと、子供たちに歌ってもらうからには、歌ってもらったことで、よりいっそう曲にパワーが吹き込まれたり、メッセージがより強くなったり、より伝わるようになったりする楽曲じゃないとあまり意味がないなと思ったんです。そうなると「おとなとこどものチャララ・ララ」と「がきんちょのうた」かなと。
──人の声を入れるなら子供だと?
そうですね。単純に自分の音楽的な嗜好もあると思うんですけど。すごく童謡とか好きだったりするので。
──「がきんちょのうた」は間奏部分に小学校の放課後の光景が浮かぶようなセリフが入ってますね。
あれは僕が書きました。僕、セリフものが大好きで、音楽にも欠かせないなと思ってるタイプなんです。
──セリフもので好きな作品はありますか?
たくさんあります。「がきんちょのうた」のセリフパートは、NHKの「天才てれびくんワイド」っていう番組で放送されてた「BYE BYE DAYS」という曲からちょっと影響を受けているんです。その曲のセリフパートがすっごくよくて、こういうことをやってみたいなって前から思ってたのを実現させました。
──子供の声で「生き急がないでよ 死に急がないでよ」っていう歌詞はなかなかすごいですよね。
(笑)。この曲は、特に自分に向けて歌ってる曲だったりするので、自分が落ち込んだときとかに……自分が書いた歌詞なんでちょっと恥ずかしいですけど(笑)。そんなときにちょっと思い返して、「早く寝よ」と思って寝ますね。
──(笑)。自分の曲でそう思えるってすごくいいことですよね。
子供たちも歌ってくれたことで、メッセージがパワーになって、歌詞にも意味が出たと思うし。すごく意義のある録音ができたと思ってます。
(この直後に東日本大震災が発生)
CD収録曲
- ぼくらはつながってるんだな
- プリーズリピートアフターミー
- ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング
- パパ&ママ愛してるよ!
- おとなとこどものチャララ・ララ
- がきんちょのうた
- ぼくが死んでしまっても
- イザベラ
- きみはディスティニーズガール
- うつくしい
- ホモ・サピエンスはうたを歌う
初回限定盤DVD収録内容
- Morning Sun
- ジョン・L・フライの嘘
- ヘルプミーヘルプミーヘルプミー
- 痛いよ
- ぼくらはつながってるんだな
- プリーズリピートアフターミー
- ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング
清竜人(きよしりゅうじん)
1989年生まれ、大阪府出身の男性シンガーソングライター。15歳でギターを手にし、作曲を始める。16歳のときには早くも自主制作盤を発表。そのクオリティの高さが音楽関係者の間で話題となる。2006年には「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2006」でグランプリを受賞し、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006」に出演を果たす。映画「僕の彼女はサイボーグ」への挿入歌提供を経て、2009年3月にシングル「Morning Sun」でメジャーデビュー。同曲はau Smart SportsのCMソングに起用され、スモーキーな歌声とみずみずしいメロディがメディアやお茶の間の注目を集めた。同月発表の1stアルバム「PHILOSOPHY」では、自身の持つ音楽性の幅広さを証明した。その後もシングル、アルバムを精力的に発表し、ライブツアーも定期的に開催。情感豊かなサウンドが幅広く支持されている。