清春|DISTORTIONとのコラボで表現する“化粧とロックンロール”

エンタテインメントは面白いだけじゃダメ

──やまなみ工房との出会いを通して、清春さんはアウトサイダーアートを勉強したんですよね。清春さんのアンテナに引っかかるものには何が共通していると思いますか?

やっぱり美しさかな。汚く見えても美しく感じる部分。まさに絵もそうですよね。やまなみ工房のアウトサイダーアートも一見暗いけど、それに突き動かされてしまうのは美しさがあるから。音楽や映画もそうでしょうし、お笑いもそうかもしれない。エンタテインメントって面白いだけじゃダメ。「ああ、すげえ」と思わせてもまだまだで、「すごく感動した。自分もがんばろうと思った」って心を動かす段階まで来て初めて美しくなるんだと思うよ。

──かたや、心が動かないものは?

善人、常識人、社会人みたいなやつの音楽はつまらないよ。ミュージシャンなんだから感じてることをなんでも言わなきゃ。法律的にダメなことはやっちゃダメなんだけど、例えば薬物とアーティストの話で言うと「もし薬物をやってなかったら、今までの曲はどうなっていたんだろうか」とか考えると、その曲たちは作られてなかったかもしれないよね。歴史的なミュージシャンが全員正常だったら、きっとグラミー賞も取れてない。微妙なラインだけど、こんなことを言えるアーティストが日本にはいないですよね。

──そもそも、清春さんがとてもハッキリしてますよね。音楽に必要なものは取り入れるし、要らないものは却下するっていう。「普通はこうするよね」という考えはなくて、自分自身のものさしがある。

今回、「SURVIVE OF VISION」と「忘却の空 25th anniversary Ver.」以外にはベースを入れないという試みをやったんです。世界的にはThe White StripesやBlack Pistol Fireみたいにベースがいなかったり、ギターやドラムを入れない構成なんて全然あって。僕の場合はソロだし、楽器がそろいすぎちゃうとバンドみたいになっちゃう。なので今作は「低音はいいけど、それを鳴らすのはベースじゃなくてもいいでしょ」という提案。

──当然ですけどライブも考慮したうえで、ベースレスにしたと。

そうだね。

──早く生で観たいです。そして3月から8月にかけて全国ツアー「JAPANESE MENU」が行われますが、今は新型コロナウイルスの影響でライブを開催するのが難しい状況で……。

ツアー組んだからには普通にやりたい。でもどうなるかはわからないよね(※3月27日時点で4月4日の大阪・ユニバース公演までの延期が決定)。

──延期や中止になると、金銭的な打撃も大きいですよね。

それで言うと「ライブやらないと収入がないからキツいんじゃないの?」とリスナーは思うかもしれないけど、ライブをやったほうがお金かかることもあるんですよね。グッズは売れるけどチケット代なんてほぼなくなる。逆の誤解はあるのかもな。

清春

何かしらの形でライブをやりたい

──ライブの制作費に関して、昔は舞台セットに億単位の費用をかけてましたよね。

それはsadsでやったバビロンツアー(「SADS TOUR '00 BATTLE ROCKERS PART2 ~Welcome to my BABYLON~」)ね。あのときは、スクリーミング・マッド・ジョージ(「プレデター」「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃」などのエフェクトアーティスト)を呼んで、ステージにデカい蛾を作ってもらったんですよ。照明や映像を使っての演出じゃなくて、全部手作りして人の手で動かす演出。蝶、棺桶、首吊り台を作ってもらうだけで4000万かかった。しかも50公演もあったから、楽器とは別にセットだけを運ぶトラックやスタッフを用意して。

──ライブにはお金がかかるとおっしゃっていましたが、特に当時の清春さんはセットにこだわっている印象がありました。

“本当のヴィジュアル系”っていうのを見せたかったのかな。やるなら本格的に演劇のようなことをやりたくて。最後は僕が蛾の中に入って、どこかへ行っちゃうみたいな(笑)。

──もはやイリュージョン(笑)。

そう。あと、黒夢の最後はわりとスピーディな曲ばっかりやってたので「清春さんは、ヴィジュアル系に帰っていっちゃった」って思われたらしく、集客もバーンって下がりましたね。でも、やりたいことの真意なんて何年かあとに伝わるからいいやと思ってました。結局、今はもうその頃のファンはほとんどいないけど、まあ変わっていくんですよ、ファンって。それでも25年以上音楽やれてるんだし、素晴らしいと思うよ(笑)。

──ソロとバンドで活動するのでは心持ちが違いますか?

ソロはファンの人たちと向き合っていくしかないですね。バンドより一層、楽曲や音の良さ、歌をちゃんと聴かせる力が大事だとは思います。人に甘えられないから技能を高めるしかない。ツアーは8月までありますけど、まだコロナの影響が続くとしたら、会場の外にある駐車場でもどこでも何かしらの形でライブをやりたいですね。

ツアー情報

清春 TOUR 2020「JAPANESE MENU」
  • 2020年3月28日(土)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA(※延期)
  • 2020年3月29日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA(※延期)
  • 2020年4月3日(金)大阪府 ユニバース(※延期)
  • 2020年4月4日(土)大阪府 ユニバース(※延期)
  • 2020年4月14日(火)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2020年4月15日(水)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2020年5月2日(土)京都府 KYOTO MUSE
  • 2020年5月3日(日・祝)京都府 KYOTO MUSE
  • 2020年5月8日(金)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2020年5月9日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2020年5月22日(金)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2020年5月23日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2020年7月31日(金)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2020年8月7日(金)東京都 マイナビBLITZ赤坂
  • 2020年8月15日(土)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2020年8月16日(日)福岡県 DRUM LOGOS