作品が引き出した新たな一面
──今回のアルバムはタイアップ曲も収録されていて、まず「さよなら、涙目」は映画「“隠れビッチ”やってました。」の主題歌になりました。映画タイトルはなかなか衝撃的ですが、清々しくポップな曲調ですね。
Mona 映画の主題歌を作るのは初めての経験だったので、映画の世界に寄り添いつつ、少しでもKitriらしさを出せたらというバランスを試行錯誤しました。自分の作品では歌詞を書くときのクセとして、ちょっと裏をかくというか、誰にも気付かれない秘密のモチーフを入れたりするのが好きなんですけど、この曲は映画を観た方が一度聴いただけで、言葉がすっと入ってくるような曲にするのが自分たちの役割かなと思ったので……特にサビではわかりやすく、希望を持った主人公像を描いたつもりです。結果として、作品に自分の新たな一面を引き出してもらいました。
──そして「雨上がり」はNHK「みんなのうた」の楽曲になりました。
Mona この曲は先に私のピアノアレンジとメロディを作っていて。歌詞をどうしようと思ったときに、私よりHinaのほうがキラキラ輝くような情景を具体的に書けるんじゃないかなと思って、彼女にお願いしました。
Hina 初めて聴いたとき、最初のピアノの跳ねる感じが「あ、雨だな」と思いました。Monaから「色彩感あふれる晴れやかな曲にしたい」と聞いていたので、雨と晴れやかな気持ちを結び付けて「雨上がり」にしようと。
──そうだったんですね。ちなみに、お二人は「みんなのうた」についての思い出はありますか?
Mona やはり小さい頃から生活になじんでいた番組なので、印象深い歌がたくさんあります。特に小学生の頃、平井堅さんが歌う「大きな古時計」を釘付けになって聴いていた記憶があります。
Hina 私は合唱をやっていたので、「みんなのうた」で流れていたNHK全国学校音楽コンクールの課題曲をたくさん歌いました。flumpoolさんの「証」という曲が一番思い出に残っています。
──それにしてもすごいことですよね。曲が「みんなのうた」に選ばれるって。
Mona 本当に光栄です。自分たちも、親の世代も、親のもっと上の世代の皆さんも知っている、いろんな方に愛される番組で曲をかけていただいて。Kitriを知らない方からも「『雨上がり』っていい曲だね」と反応をいただいたりして、すごくうれしいです。
聴いてくださった方全員が主人公
──そしてアルバムの最後を飾るのが「別世界」。ナイーブな印象の楽曲ですね。
Mona このアルバムの収録曲の中では一番古く、メジャーデビュー前に作った曲です。Kitriというユニットをやっていこうと決めてチームの皆さんと水面下で動いていた頃、(地元の京都から)東京に出向くことが多くて、「私はこれから音楽で生きていくんだな」という期待と不安を抱えながら、どうなっていくんだろうという気持ちで書いた曲です。
──言ってみれば、すごく幸先のよさを感じる曲ではないですよね。でも、アルバムの冒頭で電車に乗って出かけた情景とつながって、物語は続く、という感じがします。
Mona ありがとうございます。まさに「別世界」から、また最初に戻りたくなるアルバムにできたらいいなと思っていました。最後の曲にしてはちょっと不穏で、不思議な空気が漂っていると思うんですけど、聴いてくださった方の感性でこの先どうなっていくのかを捉えていただけたらと思います。
──アルバムを作り終えて、改めて思うことはありますか?
Mona やっぱり私たちはピアノ連弾と歌で魅せていきたいという決意が固まりました。ピアノと歌だけでは飽きられてしまうんじゃないかという不安もあったのですが、1曲ごとに違う物語、世界観を作れるという自信も少しずつ持てるようになって。ピアノ連弾と歌を軸に、ここからまた新しい刺激を受けて、もっともっと世界を広げられたらいいなと思います。
──そんな中で、Hinaさんはピアノ以外の楽器にも積極的にチャレンジされていますよね。
Hina はい、いろんな楽器をやってみたいという思いが常にあって、今回「青空カケル」は初めてピアノとギターのみでアレンジしてみました。今はギターやカホンを練習中で、いつかやりたいと温めているものもいくつかあります。このアルバムでいろんな楽器を演奏したことで気付いたのは、いろんな可能性があるなということでした。音楽って何をやっても正解だし、自分が入れたいと思ったものは全部入れられる。だから、これからもっと自由に作っていきたいと感じました。
──最後に「Kitrist」というアルバムタイトルの由来を教えてください。
Mona ファンの皆さんをはじめとして、スタッフや応援してくださる方々を“Kitrist”と呼ばせてもらっているんです。あの、例えば、吉永小百合さんのファンの方を“サユリスト”と言うような……。
──あ、そっちでしたか(笑)。ピアニストのように“奏者”の意味かと思ってました。
Mona このアルバムはKitriが主人公というよりは、聴いてくださった方全員が主人公なので、皆さんを主語にして聴いてくださいという思いを込めて。そしてアルバムを聴いてくださった方が「Kitrist」になってくれたら、という願いも込めています。
ライブ情報
- Kitri Live Tour 2020 SS キトリの音楽会 #3 “木鳥と羊毛”
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- 2020年3月15日(日)石川県 shirasagi / 白鷺美術
- 2020年3月21日(土)北海道 ザ・ルーテルホール
- 2020年3月28日(土)兵庫県 FISH IN THE FOREST
- 2020年4月5日(日)熊本県 早川倉庫
- 2020年4月11日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 小ホール
- 2020年4月19日(日)宮城県 retro Back Page
- 2020年4月25日(土)大阪府 大阪倶楽部 4Fホール
- 2020年4月26日(日)福岡県 イムズホール
- 2020年4月28日(火)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE