ナタリー PowerPush - 喜多村英梨
新たな季節の訪れを「証×明」する意欲作
自分探しとアイデアを形にするタイミング
──ただ「証×明」は単なる「RE;STORY」以降のアルバムとは言えない。どちらもメタル的な重さをたたえつつも、ちょっとサウンドの肌合いが違いますよね。
「RE;STORY」ではシンフォニックメタルに特化したアルバムを作りたくて、それはそれで好きなジャンルだし、楽しい作業ではあったんですけど「また同じことをやってもさあ」っていう思いはありました。それじゃあ聴いてくれる方にビビッドな衝撃を受けてはもらえない。ちゃんとキタエリサウンドセカンドシーズンっていう音にしないと「RE;STORY」は越えられないなと思っていて。だから今まで出し惜しみしていた音を出してみたかったんです。
──「出し惜しみ」?
3年前にスターチャイルドからCDをリリースすることが決まったとき、私がまず始めたのが「声優でアーティストってどういう存在だ?」「そこにカテゴライズされる私ってなんだ?」っていう自分探しみたいなもので。その中で「シンフォニックメタル的な洋モノも好きだけど、和風で耽美なテイストも好きなんだよね」っていう1つの答えを見つけて、それ以来、そのことは常々考えてたんです。「日本人であることとか和みたいなものを堂々と掲げて、海外の人に受け入れられるくらいのビッグアーティストになりたいんですけど、何か?」って。言うだけならタダだろう精神で(笑)。ただその一方で、当時から出し惜しみというか「常になんでもかんでもやりたいことを詰め込めばいいわけじゃない」「しかるべきタイミングがきたときに、やりたい音をやれればいい」とも思っていて。シングル「Be Starters!」のカップリングで「彩 -sai-」っていう和モノの曲をやってるんですけど、これはスターチャイルドで初めてリリースするシングルの収録曲だったから。喜多村英梨っていうのはこういう音をやりたい人なんです、っていうご挨拶的な意味もあったし、2枚目の「紋」が和テイストになったのは、「C3 -シーキューブ-」っていうそういう音の世界観が似合うアニメのタイアップのお話をいただいたから、ということもあります。
──その後は和モノを出すべきタイミングはなかった?
そうですね。「RE;STORY」的な方向に気持ちが向かっていたので。私の中でもそうだし、サウンドチームや周りのスタッフさんの中でも「また次のチャンスが巡ってきたらそのとき和を出そう」「一回引き出しの中にしまって温めておこう」ってことになってましたね。
声優であり、アーティストであり
──そして今回キタエリサウンドセカンドシーズンを確立しなければならないタイミングで改めて引き出しを開けた結果「証×明」のアートワークは花魁風になり、リードトラックの「証×炎」はああいう楽曲になった?
はい。声優であり女性ボーカリストでもある私と、その私のことをわかってくれているサウンドチームが「RE;STORY」みたいなアルバムを作ったあと「証×炎」や「月詠ノ詩」みたいなガッツリ和テイストのメタルをやってのけたら、こんな面白いことはないなって思ってたので。ただこれもある種の出し惜しみなんですけど、アルバム全部を和のアレンジにするつもりはなくて。「声優アーティスト」を名乗る以上、声優・喜多村英梨がキャリアの中で出会ってきた既存のタイアップ曲っていうのも大切ですから。声優としてのキャリアにも当然意味があるんだっていうことを“証明”する意味でタイアップ曲に寄り添える曲もほしかったんです。だから和テイストの曲は「証×炎」「月詠ノ詩」と、ラストの「\m/」(メタルピース)だけ。リード曲やビジュアルのイメージに囚われない、アーティストであり、声優でもある喜多村英梨の幅とかコントラストの違いを感じてもらえるアルバムにしたかったんです。
──たとえボーカリストとして歌うときであっても声優であることは意識している、と。
もちろんそうですね。声優・喜多村英梨だけ知っている方はきっと「喜多村って萌えの人でしょ」「元気な人でしょ」っていうイメージで私を見てくださってると思うんです。確かに「アーティスト」として活動していくつもりなら、そういうある種記号化されたイメージって実は邪魔になっちゃうのかもしれないんですけど、私はやっぱり「声優アーティスト」なので。声優として認知されている部分を捨てるのか?って言われたら捨てるわけがない。ハッピーなキャラクターや萌え萌えしたキャラクターを演じたり、そういう音を歌うことが大好きな自分もいるわけですし。だからこそコントラストを効かせたかったんです。
- ニューアルバム「証×明 -SHOMEI-」/ 2014年4月9日発売 / スターチャイルド
- 初回限定盤 [CD+写真集] 3086円 / KICS-93030
- 通常盤 [CD] 2880円 / KICS-3030
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収録曲
- 証×炎 -SHOEN-
- 月詠ノ詩
- Nonfictionista
- Destiny
- Birth
- Sha-le-la
- PIXY
- STARLET SEEKER
- sentiment
- Friend
- Miracle Gliders
- Pleasure→Link
- \m/
初回限定盤:外箱付きデジパック仕様 / 別冊撮り下ろし写真集ブックレット付き
喜多村英梨(きたむらえり)
「キタエリ」の愛称で知られる声優、ボーカリスト。2003年に声優としての活動を開始し、出演作品は「フレッシュプリキュア!」「魔法少女まどか☆マギカ」など多数。歌手としては2004年4月にデビューを果たし、2011年にスターチャイルドに移籍。3枚のシングルがヒットを記録し、2012年7月に1stフルアルバム「RE;STORY」をリリース。オリコン週間アルバムランキングで最高5位をマークする。同11月には4thシングル「Destiny」を、2013年1月に5thシングル「Miracle Gliders」を発表し、8月には6thシングル「Birth」を発表。そして2014年4月、2ndフルアルバム「証×明 -SHOMEI-」をリリースした。