「KITAKAZE ROCK UNITY」特集|AG(NOISEMAKER)×MAH(SiM)×Masato(coldrain)同世代の3人が語るフェス主催の楽しさや苦労

出演者、お客さんの両方に対してケアが必要

──MAHさんMasatoさんは「KITAKAZE ROCK FES.2021」にどういう気持ちで臨もうと考えていますか?

2018年5月に東京・UNITで開催された「KITAKAZE EXTRA IN TOKYO」の様子。(Photo by TAKASHI KONUMA)

MAH バンド主催のフェスに呼ばれたときは一貫して、呼んだ側がやりづらくなるぐらいのライブをすることが一番の役割だと思っているので、「KITAKAZE」もNOISEMAKERが「やりづれえなあ」と思うぐらいの空気を叩き出すことが、自分たちのやるべきことかな。フェスのテーマはNOISEMAKERがしっかり伝えてくれると思うので、あまり意識はしないようにすると思います。

Masato イベンターとかが主催のフェスとバンド主催のフェスではお客さんも含め空気がちょっと違うと思っていて。しかも北海道という土地でのバンド主催フェスはこれが初めてなので、そこでどんな空気になるのかが楽しみですし、この状況なのでいろいろな面で100%の状態ではないのかもしれないですけど、いろいろ観るのも感じるのも楽しみですね。

AG 実はMAHとMasatoからフェスを主催するうえでのアドバイスが欲しいなと思って、ごはんに行こうと誘っていたんですけど、こういうご時世なのでなかなか行けなくて。ちょっと前に猪狩(秀平 / HEY-SMITH)にも相談したんですけど、猪狩からはわりとシンプルに「主催したバンドのメンバー全員が出演者全員にありがとうと言うこと」と言われました。「バックヤードにこれだけいろんなケータリングや設備をそろえたよ、というのはどうでもいい。どれだけ思いをちゃんと伝えられるのか」と聞いたときに、確かになと。忙しいと「あ、お疲れ!」ぐらいの感じになりがちな人もいると言われたときに、そこも気を付けようと思いました。そういうシンプルなことでもいいんだけど、2人からここを気を付けたほうがいいよとか、こうしたほうがいいよというのがあるのかなと思って。どう?

2019年6月に神奈川・東扇島東公園特設会場で開催されたロックフェス「DEAD POP FESTiVAL 2019」の様子。(Photo by Kohei Suzuki)

MAH 出演者の誰がいつどこを見ても、必ずSiMのうちの誰か1人は視界に入っているみたいなことは、俺らも「DEAD POP FESTiVAL」(SiM主催のフェス)では常に気を使っているところではあるかな。例えば、ケータリングに行ったらSiMのメンバーが1人いて、別の場所に移動したらまた別のメンバーがいて、みたいな。それじゃないと「結局、裏でイベンターが動いているだけでしょ?」みたいな感じに見えちゃうし。

AG ああ、なるほど。

MAH NOISEMAKERのメンバーはそういうところもしっかりしているから大丈夫だと思うけど。あと、屋外フェスは天候との戦いも大きい。特に今はコロナの影響でモッシュとかができないから、お客さんは普段よりちょっと肌寒く感じると思う。今までだったら汗をかいても「水を被ってまた暴れていたら乾くでしょ」みたいな感じだったけど、今回はみんなある程度棒立ちで観ないといけない。そのあたりも雨だったら余計にキツいだろうなというのは、自分たちのフェスでも考えるかな。バックヤードの出演者に対してもそうだけど、お客さんに対するケアもしっかりしてあげないといけないので、そのへんじゃないですかね。

AG なるほどね。めちゃめちゃいい言葉をもらいました。

2020年2月に愛知・ポートメッセなごやで開催されたライブイベント「BLARE FEST. 2020」の様子。(撮影:ヤマダマサヒロ)

Masato 僕らはまだ、大型フェスを主催したのは去年の「BLARE FEST. 2020」(2020年2月に愛知・ポートメッセなごやで開催されたイベント)1回だけで。ほかのバンドがやっているフェスと比べられるのもわかっていたけど、そこに1年目から並びたいという思いがあったので、開催の2年ぐらい前に日程を押さえてからはどのフェスに行っても、「このフェスは観客の導線がいい」とか参考にできる要素をずっと探していたんですよ。例えば、コロナ禍の中で開催するアーティストの主催フェスということだったら、今年の「京都大作戦」が傘を来場者全員に配るらしくて。雨を防ぐだけじゃなくて、日傘にもなるし、ディスタンスを取るっていう狙いもあるみたいで。そういう要素を探すのは大事かなと思いました。実は、去年の時点でAGには「規模を徐々に広げていく形でもいいんじゃない?」とは話したんですよ。いきなり大会場でドーンとやる大変さを僕らは経験したばかりだったので、「1000、2000、3000とどんどんキャパを広げていくというのをもうちょっとやってもいいんじゃない?」と。でも、この状況でなおさら経験者がいない中で決行するんだったら、逆にNOISEMAKERからパクってやろうかなという思いもあるので、とにかく今年は安全面を重視しつつ、状況次第ではやめる勇気や覚悟も持っておかないとね。これ1回で終わるものじゃないんだったら、その次につなげることも大事だし。すごくネガティブなものを残したりすると次が難しくなると思うので、そのときの状況にフォーカスするのが一番大事なんじゃないかなと思います。

「KITAKAZE」のストーリーにつなげる

──フェスとなると、ライブと同じくらいに楽しみなのが食事です。特に北海道の魅力を伝えるとなると、そちら方面に期待している方も多いと思います。

AG 飲食はリアルに自分たちがお世話になっていた「グランド居酒屋 富士」というすすきのにある老舗の居酒屋とか、メンバーがそれぞれつながっているお店に直接交渉に行って、北海道ならではのものを出してもらおうと考えています。でも、このご時世では出せるものも限られてくるので、できる範囲にはなるかと思います。

──AGさんはバンドでもアートワークを手がけたりと、ビジュアル面にもこだわりがあるかと思いますが、そのあたりはフェスにも反映されるんでしょうか?

AG 装飾部分のデザインは自分たちでやりつつ、一応DOTS COLLECTIVE(NOISEMAKERのAGとHIDEによるアートプロジェクト)としてのブースは設けようかなと。アミューズメントパークみたいに、来た人たちに日常とは違った世界を見せられるようにと、今作っている最中ですね。

──それ以外に、「KITAKAZE」ならではの特色というのは何かあるんでしょうか?

AG 会場がガッツリ森の中なので、そういう自然の部分かな。あとはこれから作っていく感じですかね。野外での開催は初めてなので、今自分たちが過去に出させてもらったフェスのいいところを思い出しながら作っているところです。

──では、今年の経験が今後の指針につながっていくと。

AG そうですね。バンド主催フェスなのでストーリーじゃないけど、血の通った人たちとやって、そこでみんなが放つ言葉だったり交わす言葉だったりライブから出てくるものだったりがイベンター主催フェスとは絶対に違うと思うので、それを「KITAKAZE」のストーリーにつなげていけたらと思います。

北海道で誰かが風穴を開けないと

──このお話はMAHさんにも伺いたいんですが、コロナ禍においてフェスを開催するうえで、どういう気持ちで向き合っていますか?

MAH 僕らが去年中止を発表したとき、その前にバンドのツアーも延期になっていたんですが、毎回発表の際に僕がけっこう長い文章を書いて、裏事情とかも包み隠さずお客さんに向けて発信しているんです。このコロナ禍でいろいろなイベントが中止になっていく中で、お客さんもバンドをサポートしたいという、行き場のない思いを抱えているのを知って。それでみんなに「チケットの払い戻しをして、余裕がある人は僕らのグッズを買ってください」とお願いしたんですよ。去年の「DEAD POP」は中止になっちゃったけど、グッズだけ販売させてもらうので、もしよければサポートとして買ってくださいと。それでだいぶ助けられましたし、そのときに「1年ください」と僕は言ったので、なんとしても1年後にはそのサポートに応える形でイベントを開催しなくちゃという使命感があって。だから、スタッフとも「やるよね? 当然やるでしょ?」と話してきたので、迷いはなかったですね。それに、別に大した差はないですけど、どちらかといえば屋内よりも屋外のほうがお客さんも安心感があると思うんです。「職業柄、ライブハウスにはまだ行けません」という声も聞こえてくるので、そういう人も野外フェスで広い場所だったらということで、1年以上ぶりにライブに来るという人もいるんじゃないですかね。そういう人のためにも、場所は用意してあげたいというのはありますし、正直開催時期の状況がどうなっているかはなんとも言えないですけど、とりあえず今できるやり方というのを考えているところです。

AG 僕は今、すごく期待が大きいのと同時に不安も大きくて。ほかのインタビューでも「この時期に道外から来る人も多いと思うんですけど、そういう人たちの対策はどうするんですか?」と質問を受けましたし。緊急事態宣言が5月11日までからより先までさらに延長されたときにどうするのか考えなくちゃいけない不安もある(インタビューは4月下旬に実施)。でも、ツアーを再開したときに、改めてこんなに待ってくれている人たちがたくさんいるんだってことを再確認して。自分は絵を展示するツアーもやっているんですけど、そこで北海道に行ったときもリアルな生の声を聞いたら、そういう人のためにも北海道で、まず誰かが一度風穴を開けないといけないなというのもあるし、そういう思いで今取り組んでいるところです。

AG(NOISEMAKER)コメント

「KITAKAZE ROCK UNITY」と題して配信ライブを開催します!
残念ながらKITAKAZE ROCK FES.2021が2度目の中止になってしまいましたが、ただでは終われないし、終わらせません!
メンバーとチームと話し合って急ピッチで用意をしてきました。出演する予定だったバンドの皆も力を貸してくれます。
本当に沢山の人のお陰で配信ライブの開催まで辿り着きました。
場所は札幌芸術の森のステージではないし、当初予定していた形ではないけれど、この状況だからこそ出来る特別なものしたいと思っています。
何よりこの日を待ち続けてくれていた皆に感謝だし、少しでも楽しんでくれたら嬉しいです。
30日は沢山のバンドと共に、そして皆と共にKITAKAZEを起こしたいと思います!よろしくお願いします!

2018年5月に東京・UNITで開催された「KITAKAZE EXTRA IN TOKYO」の様子。(Photo by TAKASHI KONUMA)