音楽ナタリー Power Push - 岸田教団&THE明星ロケッツ
今をどう生き抜くか、3rdアルバムに込めたメッセージ
岸田の言葉がキツいから、甘いニュアンスで歌った
──9曲目の「Ruler」は、先ほどのひたすらエモかった「nameless survivor」とは対照的に、ichigoさんのボーカルがふわっと乗っているのが印象的でした。
ichigo そうですね。この曲はメロディ自体は明るいのに、言葉がけっこう辛辣というか。
岸田 辛辣呼ばわりですか(笑)。これ俺の作詞なんですけど。
ichigo ひねくれてる感じ。でも、一番岸田らしい歌詞だと思います。それは私にはない感覚なんですけど、一方で「ちょっとわかるな」って思う。人が普段言葉にしないことを岸田は言葉にしてくるなって。岸田の言葉がキツいからそれが響きすぎないように、甘いニュアンスとかも混ぜながら歌いましたね。
岸田 フォローされた(笑)。
ichigo だって、せっかく面白いこと言ってんのに嫌味に響いたら損だし。
──その甘いニュアンスで「ここにはろくなものがないな」とか歌われているのが、実にキュートです。
ichigo そのまま「ろくなものがねえな!」って強く言っちゃうと、だいぶ印象悪いだろうなって(笑)。
天才ロックドラマーだからしょうがない
──そして11曲目「vivid snow」はichigoさんの作詞で、アルバム中で唯一、ichogoさん作曲の曲でもあります。
ichigo これはですね、デモの段階では全然違う曲だったんですけど……ええと、最初は16ビートの、ちょっとモタったR&Bっぽい、おしゃれな感じのデモを作ってドラムのみっちゃんに投げたんです。そしたら、みっちゃんはまったく後ノリのない、スカッとしたフレーズを叩いちゃったんで。
岸田 ハードロック!
ichigo そう。もうパワーバラードになっちゃったから。
岸田 「アルマゲドン」(の主題歌、Aerosmithの「I Don't Want To Miss A Thing」)みたいになってたもんね。
──ははは!(笑)
岸田 わかります? Jamiroquaiのデモを渡したら「アルマゲドン」になって返ってきたときの気持ち。
ichigo だからしばらく悩んで。もうみっちゃんのドラムと、それに合わせざるを得なかった岸田のベースに沿って、コード進行とか構成はそのままに、歌詞とメロディをまるっと書き換えて。で、こうなったんですけど、まあ、結果オーライですね。
岸田 みっちゃんのドラムを録り終えた段階で、全部やり直さなきゃダメだってのはわかってたよね。俺も家に持ち帰ってドラムを聴いて、思わず「ひでーな……」って声に出しちゃったもん(笑)。
ichigo 私はイントロから「違う」って真顔で言ったからね(笑)。
岸田 俺はイントロとAメロBメロまでは耐えたんだけど、サビのアタマにシンバルが「ガーン!」入ってタムで「ドンドンパーン!」いった瞬間に、「これはないわ」って。
ichigo そうだよ、そこ「ドパーン」じゃねえよって。
岸田 Suchmos聴いてこいって感じだよね(笑)。
ichigo でも、よく聴くと曲の流れ自体は面白いものができあがってたし、ドラムの音もすごくよく録れてたんで、これは生かしたいなって。だから「ドパーン」も生かしましたよ。
岸田 ベースも必死だったからね。ドラムがネバってくれればもっと後ノリで弾けたんですけど、限度がありました。僕はこの曲をやるためだけにJamiroquaiの「Space Cowboy」をコピって練習してきたんですけど。
ichigo この曲はもう、偶然の産物曲です。最後のちょっとした抵抗で私「mic check」って言ってるよね(笑)。
岸田 R&Bの名残だね(笑)。
ichigo もう、「言ったろ」って思って。
──そのとき、みっちゃんさんのドラムを録り直すという選択肢はなかったんですか?
岸田 根本的に、僕らの言葉自体が伝わらない感じなので。
ichigo 結局、さっきの「そのジャンルを通ってない」っていう話と一緒で、自分の中にない音楽だから、それはもう仕方ない。ない引き出しを開けさせようとした私が悪かった。でも、オールマイティにこなせちゃうドラマーよりも、みっちゃんみたいなあり方のほうが、このバンドにとっては絶対にいいと思う。
岸田 天才ロックドラマーだからね。専門家だと思えばしょうがない。
──そこが、最初にお話しされた「90点か赤点か」みたいな部分?
ichigo ですです。みっちゃんはロックドラマーとしては100点満点ですから。ホントに。
岸田 でも、R&Bドラマーとしては赤点どころか1点もやれないね(笑)。
ichigo まあね、私もR&Bで100点取れるボーカリストじゃないんで、すぐあきらめました。
岸田 意外とギターのはやぴ~さんが一番R&B適正高い可能性があるっていう。たぶんジョン・メイヤー的な感じで合わせてくる。やっぱスティーヴィー・レイ・ヴォーン通ってるやつはワンチャンあるよね。
メッセージが伝わらなそうだったら、手のひらを返します
──そんなこんなで結成10年目のみなさんは、夏にワンマンツアーも控えておりますが、どんなライブにしたいですか?
ichigo 今回のアルバムは、最初から言ってるようにメッセージ性が強いので、それを伝えに行くツアーになるとは思います。ただ、まだまったく何も決めていないのでね。
岸田 ひょっとしたら今までと何一つ変わらないかもしれない。
ichigo ただただ黙々と曲を演奏するライブかもしれないし、ステージ上で何かしら伝えたいものが湧き上がるかもしれない。私たちやってみないとわからないので、それを確認するつもりでいらしてください。
岸田 人は失敗をしながら成長していくものだからね。俺たちが醜態をさらすところが見られるかもね。
ichigo 「なんかあいつら、メッセージらしきものを伝えようとしてるぞ」って。
岸田 「でもめっちゃ下手くそだな」みたいな。
ichigo 「なんか説教くせえな」って言われるかもしれない。
岸田 メッセージが伝わらなそうだったら、手のひらを返します。やめます、すべて。
ichigo はい、やめます。すぐやめます。
- 3rdアルバム「LIVE YOUR LIFE」2017年3月22日発売 / ワーナー・ホーム・ビデオ
- 「LIVE YOUR LIFE」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / 品番:1000640261
- 通常盤 [CD] / 3024円 / 品番:1000640260
- 「LIVE YOUR LIFE」アナログ盤
- アナログ盤 / メロンブックス限定 / 3456円 / 品番:1000642675
CD / アナログ盤 収録曲
- 希望の歌
- GATE~それは暁のように~
- zero-sum game
- GATE II ~世界を超えて~
- nameless survivor
- 天鏡のアルデラミン
- life logistics
- EGOISTIC HERO
- Ruler
- Blood on the EDGE
- vivid snow
- LIVE MY LIFE
アーティスト盤 DVD収録内容
- LIVE MY LIFE Music Video
- Blood on the EDGE Music Video
- 天鏡のアルデラミン Music Video
- GATE II ~世界を超えて~Music Video
- GATE~それは暁のように~Music Video
- LIVE YOUR LIFE TV-SPOT
岸田教団&THE明星ロケッツ ワンマンツアー2017
- 2017年7月28日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2017年7月30日(日)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年8月4日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2017年8月5日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
岸田教団&THE明星ロケッツ
(キシダキョウダンアンドジアケボシロケッツ)
岸田(B)、ichigo(Vo)、はやぴ~(G)、みっちゃん(Dr)からなる4人組のロックバンド。同人ゲーム「東方Project」のアレンジCDやオリジナル楽曲を制作して活動していたリーダーの岸田が、ライブイベントに出演するため2007年に結成した。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の主題歌を含むシングル「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」でメジャーデビュー。2011年6月に1stアルバム「POPSENSE」、2014年12月に2ndアルバム「hack/SLASH」を発売した。2015年3月に東京・Zepp Tokyoにてワンマンライブを開催したのち、2016年1月に「GATE II ~世界を超えて~」、7月に「天鏡のアルデラミン」とコンスタントにシングルを発表。同月には東京・日比谷野外大音楽堂にて単独公演を成功させた。2017年3月に3枚目のオリジナルフルアルバム「LIVE YOUR LIFE」をリリースする。