音楽ナタリー Power Push - 岸田教団&THE明星ロケッツ
今をどう生き抜くか、3rdアルバムに込めたメッセージ
岸田教団&THE明星ロケッツが3rdアルバム「LIVE YOUR LIFE」をリリースした。
本作にはアニメ「GATE(ゲート)自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」のオープニングテーマなど、タイアップソング4曲を含む全12曲を収録。新曲では抜群のメロディセンスが光るポップでガーリーなリード曲「LIVE MY LIFE」をはじめ、煽動的なシンセリードをフィーチャーした岸田教団流オルタナティブメタル「希望の歌」、サブカル的ガレージロックナンバー「life logistics」など、従来のシングル曲では見られなかったアプローチも試みている。
アルバムタイトルからもメッセージ性の強さが感じられる本作で、彼らが伝えたかったこととは何か? ほぼ全曲の作曲を担当するリーダーの岸田(B)と、ichigo(Vo)に話を聞いた。
取材・文 / 須藤輝 インタビュー撮影 / 佐藤類
バイト感覚で集まりました
──岸田教団&THE明星ロケッツは音楽ナタリー初登場ですので、簡単にバンド結成のいきさつからお聞きしてよろしいですか?
ichigo(Vo) 岸田以外のメンバーは、バイト感覚で集まりました。
岸田(B) そうそう。僕はバンド結成前に同人サークルをやってまして、そのサークルでライブに出ることになったんです。で、そのためのメンバーを集めるときに、人格は不問にして能力だけを見て選びましょうと。要は、人格まで気にしてたらメンバーがそろわないというか、人格もよくて能力も高いやつなんかとっくに売れてるから、同人サークルのライブなんか断るに決まってるんです。
ichigo その通りだと思います。言ってみれば、私たちは「特攻野郎Aチーム」みたいなもんですよ。
──天才メカニックなんだけど飛行機に乗れない人がいるみたいな?
ichigo そうそう。学校のテストで言ったら、ある教科は常に90点以上取れるんだけど、それ以外はみんな赤点みたいな。そういうやつらがそれぞれ補い合ってなんとかチームになった。
岸田 もともと一過性のプロジェクトだったのが、なんだかんだで10年続いて。で、バンド結成10年目にして今さらわかったのは、プロとして活動する人間は、1つでも60点を下回る教科があってはダメ。ようやくウチの面子を見てもなんとかそこは超えてくる感じになってる。といっても、論外だったのが凡人レベルになったぐらいだけど(笑)。
──バイト感覚で集まった皆さんが、こうして10年続いたというのもなかなかすごいと思うのですが。
岸田 むしろ、バイトだと思って始めたから続いた感はありますね。たぶん、もっと熱意があったらダメで、誰もこのバンドで身を立てようとか思ってなかったのが幸いした。
ichigo ホントね、普段ほとんど会わないから。
岸田 打ち上げの席がバラバラだったりするからね。なぜか別々の店で、3カ所ぐらいで開かれてたこともあったし。
ichigo 気持ちで集まってないから、気持ちが理由で解散することもないだろうし。
岸田 好きな音楽も最初からみんなバラッバラだから、音楽性の違いとかも解散理由にならない。
──でも、続ける理由はあるんですよね?
ichigo 続ける理由……。
岸田 それも、あんまりないんじゃない?
ichigo いやいやいや、結局10年も続けることができたのは、付いてきてくれたお客さんたちがいたからなんで、そういう意味ではお客さんの存在が続ける理由ですね。
岸田 たしかに、それはそうだね。
美少女アニメとタイアップしたい!
──そのお話ぶりですと、結成10周年の今年に発売される今回のアルバム「LIVE YOUR LIFE」にはアニバーサリー的な意味合いは……。
岸田 ないですね。10周年的な何かはライブでやっていこうかなって。新しいものを作るときは、「これが最新の僕たちです」っていうのを打ち出したいので。
──では、その収録曲について伺います。まず、リード曲にしてアルバム最終曲の「LIVE MY LIFE」は、メジャーデビューして以降の岸田教団&THE明星ロケッツからすると、非常にポップな曲ですね。
岸田 そうですね。同人時代はこういうジャンルをずっとやってたんですけど、そういえばメジャーではやってなかったなと思って。こっちの方向性も一回見せておこうっていう意識で作曲しましたね。
ichigo もともと岸田の得意なところではあるんですよね、明るくてポップな曲は。だからたぶん、昔から私たちのことを応援してくれてる人たちにとっては、ちょっと懐かしい岸田教団サウンドかもしれない。
岸田 特にアニメのタイアップをやらせてもらうようになってから、こういう曲は書かなくなりましたからね。要するにタイアップの方向性がポップな曲とマッチしなかったんで。
ichigo シングルは比較的重めのサウンドだったからね。
──「LIVE MY LIFE」はノンタイアップだからできた曲でもある。
岸田 そうそう。あるいは、こういうポップな曲に合うタイアップをプロデュースしてくれる偉い人にも届いたらいいなって(笑)。
ichigo そうだね。言っとこう。大きい声で言っとこう。
岸田 俺も、アイドル声優が出るような美少女アニメとタイアップしたい!
みんなの背中を押そうと思ったら、1人で先頭を走ってた
──「LIVE MY LIFE」は非常にメッセージ性の強い曲ですが、作詞はichigoさんですね。
ichigo 岸田から曲をもらった当初は、みんなのための曲、みんなの背中を押すような曲にするつもりだったんですよ。曲名もアルバムタイトルと同じ「LIVE YOUR LIFE」で、「みんなその生き方でいいんだよ」っていう前向きなメッセージを届けようと。でも、書き上がった歌詞を見ると「私、こんな感じで生きてます!」みたいになっちゃってて。もう、そういう性格なんだなって。
岸田 あきらめたね。
ichigo 人のために何かをするようなタイプじゃなかったね、私は。奉仕のマインドで書き始めたはずなのに……。
岸田 超ワガママな歌詞になったね。
──過去の他媒体のインタビューで、ichigoさんも岸田さんも「人の背中を押すような歌詞は書けん」と断言してらっしゃいました。
ichigo あっはっは(笑)。
岸田 ものの見事にそうなりましたね。
ichigo みんなの背中を押そうと思ったら、押すどころか私が1人で先頭を突っ走っていくような曲に。でも、その全力で走る背中を見てもらえたらいいかなって。
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- 3rdアルバム「LIVE YOUR LIFE」2017年3月22日発売 / ワーナー・ホーム・ビデオ
- 「LIVE YOUR LIFE」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / 品番:1000640261
- 通常盤 [CD] / 3024円 / 品番:1000640260
- 「LIVE YOUR LIFE」アナログ盤
- アナログ盤 / メロンブックス限定 / 3456円 / 品番:1000642675
CD / アナログ盤 収録曲
- 希望の歌
- GATE~それは暁のように~
- zero-sum game
- GATE II ~世界を超えて~
- nameless survivor
- 天鏡のアルデラミン
- life logistics
- EGOISTIC HERO
- Ruler
- Blood on the EDGE
- vivid snow
- LIVE MY LIFE
アーティスト盤 DVD収録内容
- LIVE MY LIFE Music Video
- Blood on the EDGE Music Video
- 天鏡のアルデラミン Music Video
- GATE II ~世界を超えて~Music Video
- GATE~それは暁のように~Music Video
- LIVE YOUR LIFE TV-SPOT
岸田教団&THE明星ロケッツ ワンマンツアー2017
- 2017年7月28日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2017年7月30日(日)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年8月4日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2017年8月5日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
岸田教団&THE明星ロケッツ
(キシダキョウダンアンドジアケボシロケッツ)
岸田(B)、ichigo(Vo)、はやぴ~(G)、みっちゃん(Dr)からなる4人組のロックバンド。同人ゲーム「東方Project」のアレンジCDやオリジナル楽曲を制作して活動していたリーダーの岸田が、ライブイベントに出演するため2007年に結成した。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の主題歌を含むシングル「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」でメジャーデビュー。2011年6月に1stアルバム「POPSENSE」、2014年12月に2ndアルバム「hack/SLASH」を発売した。2015年3月に東京・Zepp Tokyoにてワンマンライブを開催したのち、2016年1月に「GATE II ~世界を超えて~」、7月に「天鏡のアルデラミン」とコンスタントにシングルを発表。同月には東京・日比谷野外大音楽堂にて単独公演を成功させた。2017年3月に3枚目のオリジナルフルアルバム「LIVE YOUR LIFE」をリリースする。