音楽ナタリー PowerPush - 氣志團万博2015
3人の筋金入り音楽ファンをうならせた“ありえない祭り”の醍醐味
氣志團による野外ライブイベント「氣志團万博」が2015年も開催決定。このイベントの開催を記念して、ナタリーでは早くも特集企画をお届けする。
今回の特集では、毎年「氣志團万博」に足を運んで各媒体に記事を執筆しているジャーナリスト・宇野維正、イベント当日のアーティスト紹介映像を構成する放送作家・大野ケイスケ、氣志團の会報やツアーパンフレットの制作を手がけるライターのフジジュンの3人による座談会を実施。イベントの魅力を語ってもらった。
取材 / 大山卓也 文 / 鵜飼亮次
綾小路翔のプロデュース力
フジジュン 「氣志團万博」の魅力と言えば、何よりもまずほかのフェスでは考えられないラインナップですよね。でも、ただ人気者だけを集めたものかっていうとそんなことはない。ちゃんと氣志團の綾小路翔が選んでいて、実際に観たら出演した理由がわかる説得力のあるものになってる。
宇野維正 ライブもほかのフェスと比べるとひと味もふた味も違うんですよね。例えばももいろクローバーZのファンにとって2014年で一番重要なイベントは国立競技場でのライブだったわけですが、その次によかったのが「氣志團万博」のステージだって言う人が多い。「万博」でのライブが特別なステージになったというのが3年間で浸透してきたんですね。
フジジュン ももクロの(百田)夏菜子ちゃんはステージで「ももクロ万博へようこそ!」なんて言いますけど、あれはまんざら冗談じゃなくて、1年目から出演してる彼女たちは、氣志團とともに「氣志團万博」を作ってるみたいな気持ちが絶対あると思う。
大野ケイスケ うん。翔やんも「ももクロ万博でいいです」って認定しちゃってるんですよ(笑)。
フジジュン 翔くんがよく「ロックは単に音楽だけじゃなくて物語でも惹きつける」って言うんです。だから彼は「氣志團万博」でも物語を作りたいと思っていて。そこを重んじているからこそももクロは3年連続で出場するし、ファンの人たちもそのステージに物語を見出してると思うんです。そこもほかのフェスとの圧倒的な違いなのかなって。
大野 ももクロといえば、2012年に小泉今日子さんが出演されたとき、彼女がフェスに出ただけでもすごいなと思ったのに、ステージに登場するやモノノフたちの心をつかんで“小泉今日子派”にした瞬間があって。
フジジュン わはははは(笑)。
大野 あのとき「ああ、アイドルがここでつながるんだ」って思いました。翔やん的に小泉さんはれっきとした「アイドル枠」。だからラインナップは翔やんの嗜好が出てるだけじゃなくて音楽シーンはもちろん、芸能界の歴史もたどることができるんですよね。それを生み出した綾小路翔はホント恐ろしい男だなって思います(笑)。
テレビっ子が仕掛ける化学反応
宇野 ほかのフェスと違うところだと、普通はやっぱり昼から夜に向けて盛り上がってトリでピークを迎えるものなのに「氣志團万博」ってド頭からケツまでずっとピークが続くんですね。アーティスト主催のフェスなのに、必ずしも氣志團がトリを務めるわけじゃないですし。
大野 それもすごいですよね。「クロージングパフォーマンス」という立ち位置でEXILEの曲を、しかも替え歌で一生懸命やったり(笑)。
宇野 去年の初日で強烈だったのはニューロティカ、私立恵比寿中学、筋肉少女帯、味噌汁’sっていう流れで、しかもニューロティカのライブに万単位のオーディエンスがいるとか……ありえない(笑)。
フジジュン そんなこと言わないであげてください……まあ、ありえないんですけど(笑)。
宇野 そう。だからそのありえないことを形にするという意味では、単にブッキングだけじゃなくて出演前の映像演出なんかも含めて氣志團が出演者の魅力をちゃんと観客にプレゼンできていることもすごい。ライブセットと転換を繰り返すだけのフェスがたくさんある中で、ある種1つのテレビ番組のように、最初から最後まで観続けさせるものになってる。そこに翔さんならではのプロデュース力や配慮が行き届いてる。
大野 翔やん自身がテレビっ子だからというのが大きいです。テレビが大好きで、よく研究している(笑)。「氣志團万博」っていうテレビ番組を作ってる感じがものすごくある。オープニングあり、煽りVTRあり、そして裏側密着あり、完全にテレビの手法ですよ。
フジジュン 2014年のAKB48のステージとか本当にテレビを観てるような感覚になりました。
大野 そう。直太朗とこじはるの2人で石川優子とチャゲの「ふたりの愛ランド」をデュエットするとか、もうワケわかんない(笑)。笑ったなあ。なんだったんだあれ。2人は裏で一生懸命リハしてましたよ。
宇野 去年「笑っていいとも!」の最終回で、とんねるずとダウンタウンが一緒になってみんな大騒ぎになったじゃないですか。ああいうありえない組み合わせが毎年出てくるんですよね、「氣志團万博」という場で。
大野 それを翔やんは「化学反応が起きてくんないかな……」って狙って仕掛けてる(笑)。ホント恐ろしい男(笑)。
フジジュン うんうん。
大野 舞台裏でHYDEさんと清春さんが最後に「じゃあね」って抱き合ってるシーンを伝え聞いて「うわっ!」って思いましたからね。
フジジュン その光景は震えますね!
「氣志團万博」には自由がない
大野 「氣志團万博」には自由がないですよね(笑)。すべてピークだし。
フジジュン ない。スキを見て急いでごはん食べに行きますからね(笑)。あんなあわただしいフェスないですよ。
宇野 アーティストにとっても「自分のライブを絶対食事タイムにさせない」って意地を見せる場になってるんですよね。これってフェスをやる上ですごく重要なことだなって思うんです。それにバックヤードのホスピタリティとかも異常に充実していて。例えばほかのフェスだとアーティストが出演時間の直前に入って終わったらすぐに帰ることもあるけど、フェスって本来そうじゃなかったんじゃないのって。フェスはお客さんにとってもそうだけど出演者にとっても特別な祝祭の場で、そこで普段会わないアーティスト同士が交じることでそこから何か生まれることもあって。
フジジュン そこも重要ですよね。どれだけ楽しんだかっていう。
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- 開催日程 2015年9月19日(土)・20日(日)
- 開催時間 OPEN 9:00 / START 10:30 / END 20:20(予定)
- 出演者 19日(土) 氣志團 / 郷ひろみ 他
20日(日) 氣志團 / ももいろクローバーZ 他 - 会場 千葉県 袖ケ浦海浜公園
- 料金 1日券12000円 / 2日通し券21000円 / 臨時駐車場券3000円
- チケット一般発売日 2015年8月29日(土)
- 年齢制限 未就学児入場不可 / 12歳以下は保護者同伴かつ要チケット
- 問い合わせ HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(平日 12:00-18:00)
- 氣志團ニューシングル「幸せにしかしねーから」 / 2015年2月25日発売 / 影別苦須 虎津苦須(avex trax)
- CD+DVD / 1944円 / AVCD-83189/B
- CD / 1080円 / AVCD-83190
CD収録曲
- 幸せにしかしねーから
- ジゴロ13
- 幸せにしかしねーから(カラオケ)
- ジゴロ13(カラオケ)
DVD収録内容
- 幸せにしかしねーから(ミュージック ビデオ)
- 熱闘!! 氣志團万博2014
氣志團(キシダン)
1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路翔(Dragon Voice)、早乙女 光(Dance & Scream)、西園寺 瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Drums & Drunk / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、他のフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集める。2015年9月19、20日には千葉・袖ケ浦海浜公園にて4年目となる「氣志團万博2015」の開催も決定。
宇野維正(ウノコレマサ)
音楽・映画ジャーナリスト。雑誌編集を経て独立し、現在は洋邦の音楽や映画を中心に多岐にわたる原稿を執筆。主な執筆媒体はナタリーのほか「MUSICA」「リアルサウンド」「クイック・ジャパン」「GLOW」「BRUTUS」「装苑」など。
大野ケイスケ(オオノケイスケ)
放送作家・ライター。宮沢章夫および三木聡の演出助手を経てフリーとなり、「MUSIC FAIR」「新堂本兄弟」「綾小路 翔の六本木バナナボーイズ」などの番組を担当。2012年にクレイジーケンバンドと共著で「マイ・クレイジーケンバンド」を刊行した。「氣志團万博」では毎年各アーティストの出演前に上映される煽り映像の構成を務めている。
フジジュン
(株)FUJIJUN WORKS代表取締役バカ社長。音楽・お笑いライターをメインにイベント主催、雑誌編集&デザイン、ラジオDJなどさまざまな分野で活動中。現在はLCV-FMの深夜ラジオ番組「激アツ!ロックンロール教室」に出演中。「別冊ヤングチャンピオン」で連載されている若旦那の自伝的マンガ「センター ~渋谷不良同盟~」の構成、氣志團のファンクラブ会報やツアーパンフレットの編集・執筆も担当している。