取材・文 / 柴那典　撮影 / 太田好治
スタイリング / 二村毅（little friends）　ヘアメイク / YOSHIKO（SHIMA）

中学時代に読んだ作品の1つ

──皆さん、「寄生獣」は原作コミックをリアルタイムで読んでいたんですよね。

直井由文（B）　はい。僕らが中学生の頃にみんなで単行本を貸し借りしてました。

増川弘明（G）　その頃はまだ完結はしてなかったかな。

──その頃からいろんなマンガを4人で貸し借りしていた？

直井　してたよね？

升秀夫（Dr）　うん。してた。

増川　当時流行ってた「SLAM DUNK」とか「幽☆遊☆白書」とかも貸し借りしてたね。あと覚えてるのは「ドラゴンボール」のキャラをどれだけたくさん言えるかみたいな遊びをやっていたこと。誰も藤原くんに勝てなかった（笑）。

藤原基央（Vo, G）　負けたことないな（笑）。

直井　（笑）。今まで読んできたマンガの中でも、「寄生獣」は読み終わったあとにみんながいろんなことを考え続けてしまう作品でしたね。

突然のオファー

──アルバム「RAY」のアートワークやツアーのオープニング映像を手がけた山崎貴監督が映画「寄生獣」を作っているという話を聞いたときはどう思いましたか？

藤原　実は他人事みたいな感じでした。山崎監督とみんなでごはん食べる機会があって、そのときに「寄生獣を撮ってるんだよ」って聞いて。

直井　「マジですか？」って。

藤原　「監督が『寄生獣』を撮ってるんですか。すごく観たいです！」みたいな（笑）。単純にワクワクしていました。

──その時点では皆さんが「寄生獣」の主題歌を担当するという話はなかったんですね。

直井　そうですね。話を聞いた限りもうオファーが来てもおかしくないところまで進んでいたので、僕らじゃないと思ってました。

升　もうほかの人で決まってるんだろうなって思ってましたね。

──それからしばらくして、正式にオファーが来た。

藤原　そうですね。

直井　「今!?」っていうようなギリギリのタイミングでしたね。

升　「この締め切りで!?」っていう（笑）。

──山崎監督との座談会（参照：BUMP OF CHICKEN「RAY」特集 メンバー×山崎貴×川田十夢［AR三兄弟］座談会）をやったときに、山崎監督が「BUMPとの仕事は無茶ぶりが多い」と言っていましたよね。今度は山崎監督からバンド側に無茶ぶりが来た、という？

藤原　来ました（笑）。

直井　でもやるってことはすぐに決めたんです。「今!? そっか……じゃあどうする？」みたいな感じでしたね。それでまず藤原君が前編のラフを観て。

藤原　そう。

直井　そのとき、藤原君は「ファイター」（マンガ「3月のライオン」のテーマソング）も作っていたんですよ。

藤原　もともとスタジオを2日間押さえてあって、その2日で「ファイター」を作ろうということになっていたんです。で、1日かけて半分くらい書けたんで、その日は家に帰って寝て。2日目の午前中に「寄生獣」を観て、スタジオでまた「ファイター」を書くっていう。

──大変な状況だったんですね。

藤原　そうですね。同時進行でした。

作ることを楽しむという姿勢

──メンバーの皆さんが抱いている山崎貴監督の印象について聞かせてください。10年くらいお仕事を一緒にされて、今や日本を代表する映画監督の1人になりました。以前と変わった感じはありますか？

直井　本当に変わらないですよね。まったくブレてない。

升　出会った頃からすごい人だったんです。そこは当然として、人との接し方とか、物事を面白がって作っていく姿勢だとか、そのへんはまったく変わらない。

増川　年を追うごとに「本当にこの人はすごいな」って尊敬の念が強くなっていく感じがありますね。本当に懐が深い人だと思います。

直井　頭がいいしカッコいいし、役者みたいな人、というか監督自身が映画そのものみたいな感じがする。僕らがくだらないことをずっと話していたら、それを長編のオリジナルストーリーにして話してくれたこともあって。それに「ビヒューン！」「バーン！」みたいな擬音の使い方がうまい（笑）。

藤原　何かを作ることが好きで、作ることを楽しんでいるところが根底にあって、そこがまったくブレない。誰からも、何者からも侵食されない。そういう感じがします。だから、すごく信頼できる。そういう方が僕らを選んでオファーしてくれたということは、すごく誇りに思えるし、勇気も出ます。

──作ることを楽しんでいる、というのは？

藤原　例えば僕らのアルバム「RAY」のブックレットのイラストをお願いしたとき、山崎監督はすごく忙しかったんですよ。それこそ「寄生獣」を作っていたときでしたから。

升　「永遠の0」も「STAND BY ME ドラえもん」もあったしね。

藤原　だから、監督本人のイメージに近いイラストレーターの方を探していたんですが、結局「自分じゃないと気が済まない」ということで、監督ご本人が描いてくださったんです。あと僕らが大事にしている「星の鳥」というバンドのモチーフを3Dでモデリングしたものも作ってくださって。羽の1枚1枚を手作業で描いた、すごいものが送られてきたんですよ。そんな手間がかかることは、作ることを楽しんでいないと絶対にできないことだと思います。「こうやったら楽しいだろう」「こうやったらカッコいいだろう」という気持ちが忙しさを凌駕するんでしょうね。だから山崎監督から「この作品に主題歌をお願いしたい」とお話をいただけたのは本当に光栄なことで。心から誇りに思いますし、すごくうれしいです。