音楽ナタリー Power Push - 己龍×Royz×コドモドラゴン

3バンドのボーカリスト集結! 先輩後輩の垣根を超えたガチンコ決起集会

後輩がビリでいい理由なんてないですから

──コドモドラゴンは3組の中では一番後輩になるわけですが、3組で回る初のレーベルツアーをどう捉えてますか?

コドモドラゴン

ハヤト 率直にうれしかったです。僕らは昔、己龍さんとRoyzさんのツアーにオープニングアクトとして同行したことがあるんですが、今回のツアーでは同じ立場で回らせてもらえるんで。先輩バンドに対してもお客さんに対してもいいところを見せたいし、後輩がビリでいい理由なんてないですから。あと「お客さんの中にいろいろなネガティブな意見がある」ということに関しても、俺はそういうのが嫌いで。「ワンマンが楽しい、イベントはつまらない」って言ってる人はごちゃごちゃ言わずに黙って好きなものを選べばいいだけですからね。2度とワンマンをやらないって言ってるわけではないし。だいたい「イベントはつまらない」って意見は、バンドをディスっていることだと思うんです。俺は「どんな形であれ、いいライブをすれば楽しませられる」と思ってるし、真剣に考えてるんですよ。つまらないイベントになるんだったら、最初からやらないですよ。特に自分たちのファンには「イベントだとつまらない」って言ってほしくないです。

 わかる、それ。「ワガママか、お前ら」って。

黒崎 「FAMILY PARTY」と冠したイベントをやるわけだから、変に毛嫌いしてほしくないよね。否定的な意見があってもいいとは思うけど、実際に観てもらったら楽しいはずです。否定的な考えを変えるくらいの力がこの3バンドにはあると思うし。

 そうですね。「3バンドの競演を楽しみにしてます」という人もいるわけで、その思いを否定してほしくないっていうのもあります。僕らのファンの中には「初めて己龍とコドモドラゴンを観る機会ができてうれしい。曲を聴いて勉強しておきます」って言ってくれる人もいるんですよ。自分から楽しもうとしてくれるのはうれしいし、そういうファンを誇りに思いますね。とにかく食わず嫌いはやめてほしい。1回食ってみて、気に入らなかったら次から食べなければいいだけの話だから(笑)。

ハヤト できればものは試しで3回くらいは試食してほしいですけどね(笑)。己龍さん、Royzさんのファンの人たちにも「コドモドラゴンの時間はつまらなかった」なんて言ってほしくないから、全力でぶつかっていきますし。ガチンコのつぶし合いでもいいと思ってるんですよ、俺は。バンドの未来を切り開けるのはバンド自身でしかないし、最後は「自分たちはどうしたいのか?」ということじゃないですか。それは各バンドが絶対に持っている意識だし、先輩方も強い意志を持ってこのツアーに臨んでくると思うんですよね。

黒崎 そうだね。要するに馴れ合いが嫌いなんですよ。「みんな、ひとつになろうぜ!」みたいなのはすごくイヤなんで。

レーベルツアー開催が決まったときの心境

──己龍、Royz、コドモドラゴンの3バンドによる合同ツアーは初めてですが、決まったときの心境を聞かせてください。

黒崎 己龍は武道館公演が終わってから日本でワンマンライブをほとんどやってないんですよ。つい最近のツアーも対バンツアーだったし、その前は海外公演が入っていて日本にいない時期もあって。ファンが求めていたのはワンマンツアーだと思うんですけど、そういう中で今回のレーベルツアーが発表になって……。最初は「この形式のツアーをやることによって、ファンはどう思うだろうな?」ということを強く考えてしまったんですよね。

──レーベルツアーに対する明確な意味付けが必要だった?

黒崎眞弥(己龍)

黒崎 3バンドともそうだと思うんですけど、ツアーのファイナルで次のツアーを発表するっていうのを繰り返してるんです。つまりワンマンツアーの体制ができあがってるんですよね。ただ、レーベルツアーが決まったことで「ワンマンツアーを中心とした活動が当たり前ってわけじゃないんだな」って気付かされました。この先々で行われる単独公演に対する思い入れもレーベルツアー決定によってすごく強くなったし、そういう意味ではいいきっかけになったなって。まずはレーベルツアーでめいっぱい己龍を打ち出して、2組のファンを取り込んでいきたいと思っていますね。

 最初は「そうなんだ……」くらいの感想だった。いろんな意味で大変そうだなって思いました(笑)。

──正直なコメントですね(笑)。まずはマイナスなイメージから入ったんですね。

 お互いに「負けたくない」って思ってるだろうし、いつも以上に緊張感があると思うんですよ。それが毎日のように続くって思っただけで、疲れるだろうなって。もちろん「それ以上に得られるものがある」っていうのもわかってるんで。でもお客さんからネガティブな反応が来るだろうなって想像しちゃったんですよ。各バンドの出演時間がワンマンよりは必然的に短くなるわけですから。

黒崎 うん。

 このレーベル自体が好きっていう人はわずかだろうし、「3バンドとも好きになってくれ」っていうのは、こちら側のエゴだと思うんです。そのバンドにしかないよさがあるわけだから。で、レーベルツアーを発表したら、案の定、ネガティブな意見もあって……。ただ、自分としては「どうせやるんだったら、楽しもう」と思ってます。ウチのレーベルって結局、「最初はいろいろ言ってたけど、なんだかんだ盛り上がったね」ってことが多いので。

黒崎 そう、まだツアーをやる前だからね。実際にやってみたら、いろいろと変わってくると思うんですよ。

 たとえば海外公演もそう。行く前は「海外だし、お客さんも少ないだろうな」とかネガティブなことを考えることも多いんですけど、行くたびに必ず得られるものがあるし、結果的に「また行きたい」っていう気持ちになるので。

ハヤト、己龍のライブをノリノリで観る

──己龍は今年の7月31日に日本武道館ライブを成功させました。ほかの2組はそれに対して「悔しい」っていう気持ちが湧きましたか?

ハヤト いや、それはちょっと違うんです。一緒のステージのときは「負けない」って思うけど、ワンマンを観るときはファン目線になっちゃうんですよ、もともと己龍さんが好きだから。ライブが終わったあとも「今日のセトリ、よかったっすわ!」みたいになって(笑)。

黒崎 あ、思い出した! 武道館の前に47都道府県を回ったとき、千葉の柏にあるライブハウスまでハヤトが観に来てくれたんですよ。ライブが終わったあと、バンギャルみたいな雰囲気で「あそこがよかったです……」みたいになってて。ファンが言ってくれるぶんにはうれしいんですけど、ハヤトがそうやって話しかけてきたんでちょっと気持ち悪かった(笑)。

ハヤト いやいや、あの日はマジでよかったんですって! なのに「褒めすぎて気持ち悪い。そういうのイヤ」とかメチャクチャ言われて。己龍のスタッフの方にも「ハヤトさん、ずっとノリノリで観てましたね」って言われましたし、本気で楽しんでました。

黒崎 身内の先輩バンドだからって、クソなライブだったらそういう反応はしないだろうし、それは素直にうれしかったな。社交辞令じゃなくて本心から「いい」と思ってくれたから、ああいう気持ち悪い感じになったんだなって今わかりました(笑)。

ハヤト もともとこの事務所に関わらせてもらったきっかけが、己龍のワンマンライブを観て感動したことですからね。己龍に憧れて、オープニングアクトをやらせてもらったという流れなので。

──それにしても己龍とコドモドラゴンの音楽性がまったく似てないのも面白いですね。好きなバンドに似ていくパターンもあると思いますが。

ハヤト だって、先を走ってるバンドと同じことやっても追い付けないじゃないですか。音楽性というよりも、己龍というバンドそのものに憧れたんですよね。「こんなライブをやれるバンドになりたい」と思ったのも初めてだったし。

──B.P.RECORDSにはいわゆるレーベルカラーみたいなものも感じられないし。

黒崎 バラバラですね。そこがこのレーベルのいいところだと思いますね。どのバンドも似通ってないっていう。

Royz

 ほかのところだと「ここの事務所のバンドはこういう感じ」っていうカラーが少なからずありますからね。

黒崎 そういうのも嫌いなんだよ。

 そのバンドにしかないモノってありますからね。いくら好きでも、そっちに寄せちゃうと真似事になるから勝てないし。

ハヤト そうなんですよね。だからこそ同じステージに立たせてもらえるときは、礼儀として全力で立ち向かうべきだなって。あわよくば寝首を掻くくらいの気持ちで。

黒崎 言うねえ!

ハヤト そうやって盛り上がったほうが面白くないですか?

 うん、ワクワクするね。

己龍(キリュウ)

己龍

黒崎眞弥(Vo)、酒井参輝(G)、九条武政(G)、一色日和(B)、遠海准司(Dr)からなるヴィジュアル系バンド。2007年に結成し、バンドのサウンドコンセプトを「和製ホラー」、ビジュアルコンセプトを「痛絶ノスタルジック」と銘打ち活動している。2009年10月にリリースしたシングル「月ノ姫」がオリコンのインディーズチャートで1位を記録するなど着実に知名度を上げ、2012、13年の間に47都道府県ツアーを2回開催。海外にも進出しており、2014年4月に韓国、中国、香港、台湾を巡る単独アジアツアーを敢行。同月に4thフルアルバム「暁歌水月」を発表し、ワンマンツアー「己龍単独巡業『暁歌水月』」を行った。11月から12thシングル「天照」のリリースを記念して全国ホールツアー「己龍単独ホール巡業『雅神天照』」を実施。2015年4月に13枚目のシングル「九尾」をリリースし、3度目の47都道府県ツアー「47都道府県巡業『龍跳狐臥』」を開催。7月31日に東京・日本武道館で千秋楽を迎えた。

Royz(ロイズ)

Royz

昴(Vo)、杙凪(G)、公大(B)、智也(Dr)からなるネオヴィジュアル系バンド。2009年9月に活動を開始し、デジタルロックサウンド、切なさや愛を歌った歌詞、昴の透明感あふれる歌声で徐々にファンを増やしていく。2010年1月にライブ会場限定シングル「星に願いを」を発表し、4月に初の自主企画「季節はずれの打上げ花火~Royzと一緒におバカさん~」を開催した。2011年4月にB.P.RECORDSに所属し、リリースのペースを落とさずにインストアイベント、ワンマンツアーなどで積極的に全国各地を回り続けている。2014年6月の東京・赤坂BLITZ公演をもってオリジナルメンバーの和稀(G)が脱退するも、翌7月からアジア公演を含むツアーを敢行。2015年5月に通算11枚目のシングル「THE BEGINNING」をリリースし、初の47都道府県ツアー「Royz 47都道府県 ONEMAN TOUR『The 47th Beginners』」を開催した。9月には大阪・なんばHatchでバンドの活動開始6周年を記念したワンマンライブ「6HEAVENS」を行い、成功を収めた。

コドモドラゴン

コドモドラゴン

2010年に結成されたヴィジュアル系バンド。メンバーはハヤト(Vo)、華那(G)、ゆめ(G)、meN-meN(B)、チャム(Dr)の5人。カラフルなビジュアルと、ポップス、プログレ、メタル、ハードコアなどさまざまなジャンルを融合させた楽曲でパワフルなライブを展開している。2013年6~9月に己龍の47都道府県ツアー「愛 怨 忌 焔」のオープニングアクトに抜擢され、同年11月には自身初のワンマンツアー「NEPENTHES.」で全国5カ所を回る。2014年1~4月にRoyzのワンマンツアー「Red Desire『LILIA』」に参加。4月に1stアルバム「Children's Dope.」をリリースし、その後「【VIper】」「SODOM」「WARUAGAKI」という3枚のシングルを発表。さらに台湾、香港、韓国でのライブに出演するなど活動の幅をアジア圏に広げた。2015年7月に2ndアルバム「下剋上。」を発表。同月より新作のリリースを記念した6度目のワンマンツアーを実施し、9月に東京・赤坂BLITZでツアーファイナルを迎えた。