音楽ナタリー Power Push - KIRINJI
再構築で再発見したメンバーの個性
KIRINJIが現体制となって3年目に突入した。兄弟2人組のユニットから6人編成の音楽集団へと大きな変貌を遂げた彼らは、昨年8月発表のアルバム「11」でその新たなスタイルを提示した。そして次に届けられた新作「EXTRA 11」では、ライブでの演奏を元に「11」の楽曲を再構成。ライブならではの臨場感を生かしつつ、スタジオでの緻密な作業を繰り返して作り上げられたポストプロダクション作品だ。音楽ナタリーでは堀込高樹(Vo, G)とコトリンゴ(Vo, Piano, Key)の2人に、バンドの現状とアルバム制作秘話を聞いた。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 下屋敷和文
3年目のKIRINJI
──KIRINJIが現在の6人体制になって3年目に突入しましたが、バンドの状況はいかがですか?
堀込高樹(Vo, G) まあ3年もやっていれば当たり前だけど、打ち解けましたね(笑)。
──新体制が発表されたとき(参照:KIRINJIがコトリンゴ、弓木英梨乃ら加えた6人編成に)の驚きは2年以上経って落ち着いたものの、例えばニュースで「コトリンゴ(KIRINJI)」や「千ヶ崎学(KIRINJI)」と書くのはいまだに不思議な感じがあって。
コトリンゴ(Vo, Piano, Key) あははは(笑)、そうですよね。
──もともと個々に活動のある人たちの集まりという特殊な成り立ちですしね。こうしてメディアに露出する際にも全員がそろう機会はあまりなかったりして。
堀込 みんな忙しいんで、なかなか6人そろわないんですよ。もともと大学のサークルで集まったようなバンドではないし、みんなそれぞれキャリアがあって、それぞれに仕事があるので、こういう形になるのは自然というかやむを得ないというか。
──コトリンゴさんはもうKIRINJIの看板には慣れましたか?
コトリンゴ ソロの活動をしていて初めてお会いした人にもKIRINJIのお話をされることがよくあって、やっぱりKIRINJIのファンは多いんだなあと思うと……変なことできないですね。
堀込 そんなことないよ(笑)。
コトリンゴ ソロで活動しているときもちゃんとしなきゃなあって。
──ご自身の中でソロとKIRINJIのバランスはうまく保てていますか?
コトリンゴ ソロの活動だと1人で動くことが多いので、MCでも打ち解けようと一生懸命しゃべったりとか反応を気にしたりするんですけど、KIRINJIだと6人いて、リーダーの堀込さんが歌もMCも中心になってされるので、ヒュッと演奏モードがオンになって、やっぱり1人のときとは違う感じがします。
特殊な楽器自体がバンドのカラーになる
──新生KIRINJIとしてのスタイルはすっかり定着してきたかと思いますが、堀込さんとしてはこれは当初思い描いていた設計図通りですか?
堀込 けっこううまくいってるんじゃないかと思います。スケジュールを組む苦労は予想以上に付いて回りますけど(笑)。やっぱり6人ないし7人で演奏したときに、それぞれのキャラクターが立っているから、見た目的にも面白いと思うんですよね。男性メンバーは昔から一緒にライブもやっていたから、それぞれのクセも知っているので阿吽の呼吸なんですけど、コトリさんや弓木(英梨乃 / Vo, G, Violin)さんのアプローチもだんだんわかってきて、いろんな組み立てが成立するようになってきました。
──田村玄一さん(Pedal Steel, Steel Pan, G, Vo)のように個性のある楽器を演奏する人が正規メンバーとしていると、バンドアンサンブルに制約も出てくるのかなと当初は思っていたのですが。
堀込 大体バンドってドラム、ベース、ギター、ピアノみたいな基本形があって、たまに管楽器が乗ったりするような感じですけど、ペダルスチールやスチールパンのような特殊な楽器をプレイする人がメンバーにいると、それだけでバンドのカラーになり得るわけですよね。それに田村さんはペダルスチールでもカントリーに寄った奏者ではなくて、もっと現代的なアプローチをする人だし、ペダルスチールという楽器から連想されるイメージとは別のものになるとは思っていたので。例えばコトリさんがピアノを弾いていて、後ろにパッドやオルガンのような音が欲しいときは田村さんが埋めてくれたりするから。昔のキリンジではキーボードを2人入れたりしてましたけど、2人いるぐらいだったら多彩なプレイができる人がいるほうが、それだけでカラフルになると思ったんですよね。
──結果やはり田村さんの存在が、KIRINJIのカラーを際立たせている印象があります。あとライブでは矢野博康さんがサポートを務めていて、本作もアレンジは矢野さんとの合同クレジットになっています。もはや第7のメンバーとも言える存在ですよね。正規メンバーにはならないんでしょうか。
堀込 ドラマーは楠(均 / Dr, Perc, Vo)さんがいるし、あとはアルバムを作るときなんかに、コトリさんはソロでも作品を作っているし、田村さんもいろいろ意見を言ってくれるし……船頭が多いんですよ。そんなにたくさん船頭がいたら前に進まなくなってしまうので(笑)。矢野さんには、外側から俯瞰で見てくれるスーパーバイザーのような役割を果たしてもらっていますね。
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収録曲
- だれかさんとだれかさんが
- fugitive
- ONNA DARAKE!
- 狐の嫁入り
- 虹を創ろう
- 雲呑ガール
- ジャメヴ デジャヴ
- 心晴れ晴れ
- 進水式
収録曲
- 真夏のサーガ
- 水郷
<ボーナストラック>
- 虹を創ろう
- 雲呑ガール
- ジャメヴ デジャヴ
- 進水式
- アルバム「11」2014年8月6日発売 / Verve / ユニバーサルミュージック
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / UCCJ-9129 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3024円 / UCCJ-2117 / Amazon.co.jp
KIRINJI LIVE 2015
- 2015年11月21日(土)
- 東京都 EX THEATER ROPPONGI
- 2015年11月25日(水)
- 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
KIRINJI(キリンジ)
1996年10月に堀込泰行(Vo, G)、堀込高樹(G, Vo)の兄弟2人で結成。1997年5月にインディーズデビュー盤「キリンジ」、同年11月にマキシシングル「冬のオルカ」がリリースされると、複雑ながらポップなサウンドと独自の詞世界が大きな注目を集め、1998年にシングル「双子座グラフィティ」でメジャーデビューを果たした。2013年4月に泰行がグループを脱退し、同年7月より楠均(Dr)、千ヶ崎学(B)、田村玄一(Pedal Steel)、コトリンゴ(Key)、弓木英梨乃(G)の5人を加えた新体制に。2014年8月に通算11枚目にして新体制初のアルバム「11」をリリース。アルバム発表後は合計13公演のワンマンツアー「KIRINJI TOUR 2014」を開催した。また各地の音楽フェスに出演するなど、精力的なライブ活動を行っている。2015年6月には東京・Billboard Live TOKYOでワンマンライブを実施。このライブの音源をもとに、スタジオでのポストプロダクションを施してアルバム「11」を再構築した「EXTRA 11」が11月にリリースされる。