ナタリー PowerPush - キノコホテル

集団中毒!ようこそキノコホテルへ。メジャー震撼のデビューアルバム完成

ハレンチかつエレガントなビジュアルと「過激でポップな中毒性の高い大衆音楽」でインディーズシーンを賑わしていたキノコホテルが、2月3日に発売される1stアルバム「マリアンヌの憂鬱」で一躍メジャーシーンに躍り出る。支配人・マリアンヌ東雲を中心とした、奇妙なムードを醸し出す4人の女性。彼女たちはメジャーの世界で何を表現しようと企んでいるのか。ナタリーではキノコホテルのメンバー4人と、その独特な音楽を影から支えるプロデューサー・サミー前田に話を聞いた。

取材・文/臼杵成晃

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ガレージバンドって言わないで

──キノコホテルは、いわゆる「ガレージパンク」「グループサウンズ」と呼ばれる昭和40年代のバンドに通じるサウンドが主体ですが、どのような過程でこのスタイルに至ったのですか?

マリアンヌ東雲(キノコホテル支配人/歌と電子オルガン) 至った、というか初めからこうでしたので。

──最初に「こういうバンドをやろう」と思った動機は?

東雲 わたくしが趣味で曲を作るようになって。それ以前は特に歌もバンドもやっていなかった。

──ちなみにそれはいつぐらいの頃からですか?

東雲 キノコを始める1年くらい前かしら。バンド活動をやるつもりはそんなになかったけれど、なんとなくすることもなかったので。キノコの前に何カ月かだけ、ちょっと練習がてら人を集めてやっていたのですが、男のコとはケンカが多くて懲りたので、女のコだったらもう少し言うこと聞いてくれるのではないかと思って。そのときは、相手が女のコだろうが何だろうが結局ケンカになるとも知らずにね(笑)。

──最初にオリジナル曲を作り始めた段階から、今と変わらないスタイルだった?

写真はアルバム収録曲「もえつきたいの」ビデオクリップ制作時のひとコマ。撮影は川崎の老舗ラブホテルを舞台に行われた。

東雲 そうですね。ビジュアルやコンセプトも曲に合わせて作っていったというのがあるので、別にGSをお手本に……なんて考えたこともなく、成り行きで。

──みなさん女性ですので厳密な年齢を聞くのは心苦しいのですが……。

東雲 そうね、野暮な質問かと思うわ。第一、みんなお互いの年齢を知らないし。

イザベル=ケメ鴨川(電気ギター) うん、知らない。

──リバイバル的なブームも含め、おそらくGSに触れる機会のあまりない世代だということは間違いないですよね。

東雲 もちろん、さすがにリアルタイムではないわよ(笑)。でも今は便利な世の中で、昔はなかなか聴けなかったようなものが簡単に聴けるようになったりもしていますので。

──でも迷いなくこの方向で、というのも珍しいですよね。

東雲 そうかも知れないけど、今後、曲が変わっていけばバンドの嗜好も変わる可能性はあるかもしれません。

──ほかのみなさんに関しては、支配人が同じ方向性を持っていそうなメンバーを見つけてきた、という流れでしょうか。

東雲 そもそもここにいる他の3人は、もうみんな2代目、3代目で、当初のメンバーはもはやわたくしだけ。前のメンバーが次々といなくなったときに、活動を止めてしまうのはもったいないと感じて、新社員の募集を始めて……。

──では、みなさんはもともとキノコホテルの音楽性がわかっていて「これならやりたい」と?

東雲 ……どうなの?

エマニュエル小湊(電気ベース) うん。だって観てたもん。

──メンバーチェンジなども経つつ、2年ちょっとでメジャーデビューというのは、結構ハイペースですよね。戸惑うところもありますか?

東雲 そこまで先のことを考えて始めたわけではなかったので。なかなか早いなぁとは思いますけれども。

──ガレージサウンドを継承するバンドはこれまでにも多くいましたが、そのままの音でメジャーデビューまでしたバンドはあまりいませんよね。ましてや2010年の今、なぜキノコホテルがメジャーデビューするに至ったのか。これはむしろレコード会社の人にお聞きしたほうがいいのかもしれませんけど……。

ファビエンヌ猪苗代(ドラムス) それ聞いちゃうんですか?

(スタッフ苦笑)

鴨川 アハハ。それわたしも知りたいかも。

東雲 ガレージバンド扱いされますけど、楽曲や表現の幅も広いし、大衆的なところもあると思うので、わたくしとしてはまったくそういう認識はありません。

──どのようなバンドだと思いますか?

東雲 ただ単にわたくしのオリジナル楽曲を演奏するバンドであって、そこに無理矢理ジャンルをあてはめる必要はないでしょう。

あんたたちみんな何を観にきたの?

──僕はキノコホテルを、渋谷「青い部屋」や高円寺「UFO CLUB」などで受け継がれている、独特のアンダーグラウンドな文化の中から出てきたバンドだと認識してたんですね。

東雲 ええ、確かに。

──その周辺には絶えずガレージサウンドの志を受け継いでるバンドがいて。そういった文化に触れたことから出てきたバンドだと思っていたんです。

東雲 あなた、まだガレージって言うの?(笑)まあ確かに、創業当初の活動拠点が主にそういった界隈だったのは事実です。いきなり普通の人達に受け入れられるわけがないと思っていたし。

──地方でのライブ本数も増えてきたと思うんですけど、反応はどうですか?

東雲 東京が一番反応がないぐらいです。東京の人はみんなすごく静か。キノコホテルしか出ないときもね。「あんたたちみんな何を観にきたの?」って疑問に思うわね。逆に関西方面はなかなか反応がいいかしらね。

鴨川 うん。めったに行かないから待ってくれてる人も多くて「やっと来た!」って盛り上がってくれてるのかな。

東雲 それもあると思う。だから地方に行くのは楽しいです。とても。

──皆さんはキノコホテルに入る前はどんな音楽をやっていたんですか?

鴨川 わたしはエレキインストバンドと、昭和歌謡をコピーするガールズバンドを、それぞれ1年ずつぐらい。

小湊 わたしは、イマドキの下北沢にいるような普通のバンド……ナヨナヨした男の子がやるような、ああいうバンドです(笑)。

猪苗代 エマさんが下北系ならわたしは渋谷系ですかね。

東雲 ピチカート的な?

猪苗代 60年代ポップスの要素を取り入れているバンドが好きで、それを新しいと思って聴いてたんです。

メジャー1stアルバム『マリアンヌの憂鬱』 / 2010年2月3日発売 / 2500円(税込) / 徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-73507

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CD収録曲
  1. 静かな森で
  2. 真っ赤なゼリー
  3. もえつきたいの
  4. 還らざる海
  5. ネオンの泪
  6. あたしのスナイパー
  7. 夕焼けがしっている
  8. キノコホテル唱歌

PV「もえつきたいの」(CD-EXTRA)収録

キノコホテル

アーティスト写真

2007年6月、支配人のマリアンヌ東雲(歌と電子オルガン)を中心に結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2008年12月には現在のメンバーであるイザベル=ケメ鴨川(電気ギター)、エマニュエル小湊(電気ベース)、ファビエンヌ猪苗代(ドラムス)が揃った。都内を拠点に精力的な実演活動を行いながら、自主制作でシングル「真っ赤なゼリー」、会場限定CD「キノコホテル実況録盤」、映像作品「キノコホテルの夜明け~初期実演会」、CD&DVD「サロン・ド・キノコ~実況録音盤」を発表。オリジナル楽曲はすべてキノコホテル支配人・マリアンヌ東雲が手がけており、その独特の世界観は各方面から高い評価を集めている。2010年2月3日に1stアルバム「マリアンヌの憂鬱」で徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビュー。