音楽ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯人間椅子

平均年齢49歳の“新人バンド”デビュー

ボーカルは間奏で何をやっていればいいのか

──6月には東京・渋谷公会堂で筋肉少女帯人間椅子としてのライブも決まってますが、どんな内容になりそうですか?

橘高 コラボのきっかけになった2012年の赤坂BLITZ公演は、シングルに同梱されたDVDにも収録されてますけど、今回のライブはさらにそこから発展してバンド感が出ると思います。DVDをチェックしてから渋公に来ると、我々が“脅威の新人バンド”だということがご理解できるんじゃないかな。ゲストとして“筋少さん”と椅子さんも出ますけど、あくまでスリーマンライブなので、筋肉少女帯人間椅子もがっつりやりますんで。

鈴木 デビューライブが渋公ってすごいですねえ。

大槻 バンドブームの頃みたいだねえ。

鈴木 筋少と人間椅子が一緒にステージに立つと、いつも俺とおいちゃんが並んでて、逆サイドに橘高くんと和嶋くんがいるんですよ。リードギター2人がソロを弾いてる間、反対側にいる俺とおいちゃんは2人とも後ろに引いてるんですよね。だから今度のライブは、もうちょっと盛り上げていこうかなと(笑)。

和嶋 今回のシングルのDVDに入ってる赤坂BLITZでのライブ映像だと、最後まで研ちゃんとおいちゃんのアップが出てこないの。あれ、俺と橘高くんがイヤな奴みたいに見えないかな?(笑)

橘高 下手のカメラが撮れてないんだよね、事情があって。もともと記録用に撮った映像素材を編集して、今回のコラボの記念にボーナス映像として収録したという経緯ですので、ご容赦ください(笑)。でも実際のライブは下手が大盛り上がりしますんで、お楽しみに。

鈴木 俺もおいちゃんも、リードギターがソロ弾いてる間はあまり目立たないようにするっていう癖がついてるんですよ。普段はそれでいいんだけど、2人並ぶとイマイチな絵面になるんですよね。ちょっと対策考えないと。

本城 赤坂のライブは、僕がまだ「研ちゃん」って呼んでいいのか悩んでいた頃だったっていうのもありますね。今はもう「ワジー」「研ちゃん」と呼べるようになったので、たぶん渋公では目一杯、はじけられると思います(笑)。

大槻 でもねえ、楽器持ってる人はまだいいですよ。長尺のソロやってる間、俺何してればいいんだろって、今からすごく困ってるもん。

橘高 それずーっと悩んでるね(笑)。MV撮影のとき、手持ち無沙汰だからってヌンチャク振ってたんだけど、ヌンチャクでやれることひと通り終わってもまだ間奏が続いてたりして。しまいにパイプ椅子持ち出して座ってますからね(笑)。

大槻 もうちょっと見栄えがいい、王者の椅子みたいのを持ってって座ってようかなあ。よくさ、やることなくなってドラムのシンバルを脇から叩いてる奴いるじゃない? ああいう、ほかの人の邪魔になることはやらないようにしますから。

ナカジマ いやいや、俺は横でいろいろやってくれても全然いいんだけど(笑)。

橘高 Kissのライブのとき、ももクロ(ももいろクローバーZ)の子が1人シンバル担当だったよ。ちゃんとやってて偉いなあと思った。

ナカジマ 銅鑼を叩くのはどう?

内田 いやあ、それはちょっと怖い気がするなあ。変なところで叩きそうだ。

橘高 あと銅鑼ごと倒れるとか、なんかドリフ的なオチがつきそうな気がする(笑)。

大槻 みんなの似顔絵をボードに描く、っていうのはどうだろう?

和嶋 それはすげえ。みんなギターソロよりそっちに釘付けですよ(笑)。

大槻 高杢(禎彦)さんとか鶴久(政治)さんとか、クール・ファイブの小林(正樹)さんとか、田代まさしさんとかに聞きたいなあ。間奏で何やってればいいのか。

和嶋 渋公のライブについては1点だけ心配事があって。こうやって今みたいにみんなでしゃべってると、楽しくてしゃべり過ぎちゃうんです。本番前にみんな疲れてグッタリしないように、ちゃんと余力を残すように気を付けたいですね(笑)。

橘高 いるいる、楽屋で盛り上がりすぎて本番で声が枯れてる奴(笑)。よくある新人バンドの失敗談だよね。

もし売れたときは自己批判をしよう!

──こういう企画って、2組がどちらも好調だからこそできることだと思うんです。どちらも勢いがあって、かつ、お遊びをする余裕もあるという。

橘高 ああ、それはあるかもね。

和嶋 実際そう思います。10年前ならできませんでした。っていうか、10年前は筋少が“凍結”してましたね(笑)。とにかく、いろいろ歯車が合ったんですよ。速い歯車と遅い歯車の周期が噛み合ったというか。

橘高 自分のバンドが大変なときにはやらないよね。

──もし1990年代にこのコラボをやっていたとしたら、全然違うものになっていたでしょうね。

和嶋 もうちょっと真面目にダークなことやってたかもしれないですよ。でもきっと、こういうのは“遊び”なくらいがちょうどいいんですよ。今回は1曲だけのわりにすごく制作がキツかったけど、またときどきやって、曲がある程度貯まったらアルバムにすることも視野に入れていいのではと思います。

橘高 ライブも年に1回とかできたらいいよねえ。

──さっき橘高さんが「脅威の新人バンド」と言ってましたが、この1回限りではなく、新しいバンドとして長く活動が続いたらいいですね。

和嶋 最近、40過ぎてから第2の人生が始まるんだなって、すっごく感じるんですよ。人生は20歳からが青春で30歳からまとめに入る、みたいに思われてるけど、好きなことを続けてれば歳を食ってからもう1ステップあるんです。そうやって実際に第2の人生に突入したおじさんたちが“新人バンド”をやる、それは素晴らしいことだと思います。

大槻 あと、これでお互いに、ほかのバンドとコラボをするノウハウを多少なりとも得たと思うので、筋肉少女帯誰々とか、人間椅子誰々とか、今度は別の人たちとバンドを始めるのもアリかもですね。そして「俺らのあとに続け」ってわけじゃないけど、若い連中にもコラボバンドをやってほしい。我々はずっとロック界で異端な存在だったけど、そうやってコラボの輪がどんどん広がっていけば、世界をひっくり返してメインカルチャーに行けるんじゃないかと思って。

橘高 ああ、サブカルチャーじゃなくてメインに行くのね。

内田 なんか「成りあがり」みたいだな(笑)。

大槻 ただ、実際そうなると我々の存在価値がなくなっちゃうんだよね。サブカルでアングラだからこそ意味があるバンドだから(笑)。そういうパラドックスを抱えてるのが俺らの面白さだよね。

和嶋 そしたら自己批判すればいいんですよ。カウンターカルチャーはどんな切り口でもできますよ。

大槻 いいね、「売れたときは自己批判をしよう!」って。取らぬ狸の皮算用で(笑)。

和嶋 まだ発売してもいないのにね(笑)。

大槻 「商業主義に巻かれた俺たちを否定する!」って、自己完結しちゃってて最高(笑)。そうなるといいな。

筋肉少女帯人間椅子
ニューシングル「地獄のアロハ」 / 2015年5月13日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
完全生産限定盤 [CD+DVD+Tシャツ+ブックレット] / 6458円 / TKCA-74221
通常盤 [CD+DVD] / 1944円 / TKCA-74225
CD収録曲
  1. 地獄のアロハ
  2. ダイナマイト(筋肉少女帯Version)
  3. 少年、グリグリメガネを拾う(人間椅子Version)
  4. 地獄のアロハ(Heavenly Version)
  5. 地獄のアロハ <KARAOKE>
  6. ダイナマイト(筋肉少女帯 Version)<KARAOKE>
  7. 少年、グリグリメガネを拾う(人間椅子 Version)<KARAOKE>
  8. 地獄のアロハ(Heavenly Version)<KARAOKE>
DVD収録内容
  • 地獄のアロハ(Heavenly Version)MUSIC VIDEO
  • 2012年5月19日 @赤坂BLITZ「地獄の決定打!筋肉少女帯 VS 人間椅子 VS 人間筋肉少女椅子帯」LIVE記録映像より
    1. 君は千手観音
    2. 僕の宗教へようこそ
    3. りんごの泪
    4. 釈迦
完全生産限定盤・通常盤(初回プレス分)封入特典

筋肉少女帯人間椅子メンバーコラボトレカ(1枚ランダム封入・全13種)

筋肉少女帯人間椅子ライブ
2015年6月7日(日)東京都 渋谷公会堂
OPEN 16:45 / START 17:30
料金:6800円(全席指定)
<出演者>
筋肉少女帯人間椅子 / 筋肉少女帯 / 人間椅子
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)

筋肉少女帯

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念したセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」、2014年には4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」をリリース。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」でシングル「地獄のアロハ」を発表した。

人間椅子(ニンゲンイス)

人間椅子

和嶋慎治(G, Vo)、鈴木研一(B, Vo)、ナカジマノブ(Dr, Vo)による3ピースバンド。1989年に出演したTBSテレビ系「平成名物TV イカすバンド天国」で高い評価を獲得し、1990年7月にメルダックより「人間失格」でメジャーデビューを果たす。その後インディーズでの活動や、ドラマーの交代などを経ながらも、コンスタントにライブやリリースを重ねていく。Black Sabbath風のハードロックと地元・青森の津軽民謡を掛け合わせた独自のサウンドや、江戸川乱歩などに影響を受けた文学的な歌詞、確かなテクニックに裏打ちされたライブパフォーマンスで、音楽ファンの厚い支持を集め続けている。2012年、ももいろクローバーZのシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」に収録された「黒い週末」に和嶋がギターで参加したことが話題に。2013年にはオジー・オズボーンのオーガナイズにより千葉・幕張メッセで開催されたロックフェス「OZZFEST JAPAN 2013」に出演し、そこでのパフォーマンスが大きな評判を呼ぶ。また2014年には、ふんどしの普及に貢献した著名人を表彰する「BEST FUNDOSHIST AWARD 2013」を受賞。同年6月にオリジナルアルバム「無頼豊饒」、12月にベストアルバム「現世は夢~25周年記念ベストアルバム~」をリリースし、2015年1月に約23年ぶりとなる東京・渋谷公会堂でのワンマンライブを成功させた。同年、筋肉少女帯とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」を結成し、シングル「地獄のアロハ」を発表した。