筋肉少女帯がニューアルバム「Future!」をリリースした。この作品は、カバー曲やセルフカバー曲を一切含まない完全オリジナルのフルアルバムとしては1997年発売の「最後の聖戦」以来およそ20年ぶりの新作。収録される11曲はいずれも、長いキャリアを積んだバンドの今を映した内容になっている。音楽ナタリーでは今回もメンバー4人へのインタビューを実施し、この“20年ぶりのオール新曲アルバム”の全収録曲について1曲ずつ解説してもらった。
取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 草場雄介
前に達成できなかった“11年目のアルバム”
──今回のアルバムは「Future!」というタイトルも含めて、非常にポジティブな印象を受けました。
大槻ケンヂ(Vo) 前作「おまけのいちにち(闘いの日々)」にノスタルジックな面があったので、次は逆に未来を向いていこうという気持ちはありましたね。
橘高文彦(G) 今回は大槻くんから最初にアルバム設計図みたいなものをもらったんです。「1曲目はこういう曲」っていう感じで、全曲分のアイデアがあって。
大槻 「猫のテブクロ」(1989年発表)の完全再現ライブをやって、「収録曲順にライブができるアルバムが作れないかな」と思ったんですよね。1曲目はこの曲、2曲目はこの曲で、このくらいになったらバラードで落として、みたいな感じで。結局その通りにはならなかったですけど。
橘高 「猫のテブクロ」は、今のメンバーになって最初のアルバムなんです。当時ドラムスだった太田明くんは再現ライブにはいなかったんですけど。いろいろ思い出すこともあって、いいツアーでしたね。
大槻 「Future!」というアルバムタイトルについては、ある作家の方と対談をしまして。まだ若い作家さんだったんですけど、その方の書いた本が、過去の恋愛について今思うことを述べる内容だったんです。それについて僕が「過去を振り返ったところで何も始まるわけではないよ」って話したら、「いや、大槻さんはそう思うかもしれませんけど……」って言ったので、なんとなく「そういうときは指一本立ててこう叫ぶんだ! 『Future!』」って返したんですよ。それが自分で「あ、これいいなあ」と思って(笑)。人間誰しも思い悩むことはある。そこからどうやって自分をもう1回上げていくか……そうだ、筋少の次のアルバムは「Future!」だ!って。
──素晴らしい! アルバムは当初の設計図通りに完成したんですか?
大槻 最後の最後で「3歳の花嫁」と「T 2」の曲順を逆にしたんだよね。
橘高 やっぱりアルバムはライブとは違って、いざ曲を並べると変わってくるだろうなとは思っていたけど、最初の提案があったおかげで筋少らしいバラエティに富んだ内容になりましたね。みんな得意な分野があるから、それぞれの個性を前面に押し出していいんだって後押しにもなったし。今回の「Future!」というタイトルがすごくいいと思ったのは、筋少って去年が再結成10周年イヤーだったんです。メジャーデビュー10周年のタイミングで筋少は1回活動停止したので、前に達成できなかった“11年目のアルバム”ということで、自分たちらしさに自信を持てるタイトルだなと思いながらレコーディングしてました。
01. オーケントレイン
作詞:大槻ケンヂ 作曲:本城聡章
大槻 DDTの入江茂弘選手というプロレスラーが筋肉少女帯の「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」を入場曲に使っていたんですけど、新しい入場曲を作ってくださいとお願いされまして。それでこの「オーケントレイン」と「T 2」のデモテープを渡したところ「T 2」でお願いしますということで、「オーケントレイン」のほうはまずアルバムの主旨を掲げる歌詞にしようということになりました。
橘高 大槻さんの設計図の1曲目だよね。「これから始まるぞ」みたいな。そしたら歌詞もそうなったので1曲目としてふさわしいものになりました。
──まず、タイトルが素晴らしいです。
内田雄一郎(B) メールで届いたとき大笑いしました(笑)。
大槻 “トレインもの”ってけっこうあるでしょ。「ソウルトレイン」とか「恋のブギウギトレイン」とか。ああいうのをやりたいと思っていたときに、沢木耕太郎先生の「深夜特急」を読み直して、「これでいこう」と思って。最初“OK牧場”的な「オーケートレイン」にしようと思ったんだけど、「ガッツ石松か」と思って。
──曲調もファンキーなカッティングから、どんどん展開していって。
本城聡章(G) わざと1つの方向に向かわないようにしました。最初は「こんな感じにしよう」とか話してるんだけど。
橘高 あてになんないんだよね(笑)。
本城 メンバーそれぞれ目的地が別々だから。それが筋少らしさでもあって。
──「一本指立てて Future! 叫びましょう !!」という歌詞も登場します。
大槻 元プロレスラーの木村健悟さんが指1本立てて「イナズマ!」って言うんですよ。
橘高 それで「イナズマ!」って歌ってるの?(笑)
内田 その映像よく知ってるけど全然気が付かなかった(笑)。“稲妻レッグラリアット”まで入れてくれなきゃ(笑)。
02. ディオネア・フューチャー
作詞:大槻ケンヂ 作曲:本城聡章
大槻 これと「サイコキラーズ・ラブ」は前作「おまけのいちにち」の候補曲で、今回のアルバムに合うんじゃないかなと思って引っ張り出してきました。
橘高 俺、前の曲出しのときに気に入ってたから、今回入ってよかった。とてもいい曲だから。
本城 前のアルバム用に作った曲が次のアルバムで使われるのは、自分の曲では初めてなんです。
橘高 いつも「もったいないからもう1回使おうよ」って言っても、本城くんってそのとき入れなかった曲は、言い方悪いけど全部“捨てる”人なのね。でも、今回は大槻くんが「前のをもう1回聴かせてよ」って言って。
本城 これからはむやみに捨てないようにします(笑)。
橘高 そうしましょう(笑)。バンドの財産にしましょう。
──ディオネアは食虫植物のハエトリソウのことですね。全体的に洋楽っぽさが感じられました。
大槻 僕はフジロックとかの映像を観るのが好きなんですけど、この曲は若くてサイケなことやってるブリティッシュのバンドの感じを出したいなと思って。後半のずっとリフレインするところとか。ジャケもディオネアだね。この頃に木谷美咲さんの食虫植物についての本を読んでました。
本城 ぜひ耳を澄ましてオーケンの魂の叫びを聴いてほしいです。
橘高 「ディオネア・フューチャー」はいろんな音が入ってるから、聴くたびに発見する音があると思う。
大槻 分離のいい再生機で聴くとね。
橘高 俺、何百回聴いててもビックリするもん。
次のページ »
03. 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)
- 筋肉少女帯「Future!」
- 2017年10月25日発売/ 徳間ジャパンコミュニケーションズ
-
初回限定盤A [CD+Blu-ray]
5400円 / TKCA-74581 -
初回限定盤B [CD+DVD]
4860円 / TKCA-74582 -
通常盤 [CD]
3240円 / TKCA-74583
- CD収録曲
-
- オーケントレイン
- ディオネア・フューチャー
- 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)
- サイコキラーズ・ラブ
- ハニートラップの恋
- 3歳の花嫁
- エニグマ
- 告白
- 奇術師
- わけあり物件
- T 2(タチムカウver.2)
- 初回限定盤A Blu-ray / 初回限定盤B DVD 収録内容
-
「猫のテブクロ完全再現+11(赤坂版)LIVE」2017年3月20日(月・祝) 赤坂BLITZ公演よりアルバム完全再現パートを全曲収録
- 筋肉少女帯 New Album「Future!」発売記念「一本指立ててFuture!と叫べ!ツアー」
-
- 2017年11月11日(土)愛知県 名古屋 CLUB QUATTRO
- 2017年11月16日(木)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- 2017年11月25日(土)大阪府 BIGCAT
- 2017年12月10日(日)東京都 赤坂BLITZ
- 筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
- 1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」でシングル「地獄のアロハ」を発表。2016年10月にはベストアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」、2017年10月にはオリジナルアルバム「Future!」をリリースした。