音楽ナタリー Power Push - 筋肉少女帯
もはや“再結成バンド”ではない 昭和からタイムトリップしてきた男たちが描く原風景
再結成以降の筋肉少女帯は「西部警察」だった
──「おまけのいちにち(闘いの日々)」は、筋肉少女帯らしい仕掛けがいくつも施されていて。まずアルバムのオープニングは「大都会のテーマ(TVサイズ)」のカバー。「大都会」は昭和50年代に放送されていた人気刑事ドラマですね。
大槻 そうです。これにはいろんな意味合いがあるんですけども……、再結成以降の筋肉少女帯というのは、刑事ドラマでいうと「西部警察」だったと思うんです。つまり、“ゴージャスエンタテインメントハードロック”ですよね。
内田 なるほど(笑)。
大槻 改造覆面パトカーに乗った渡哲也が派手に散弾銃を撃ちまくるっていう。寺尾聰なんて44マグナムですからね(笑)。その完成形が前作で見えてきたので、ここで新たなシフトチェンジをしたいな、と。ロックバンドには「原点回帰をすることで、新たな方向性を見つける」という方法があるじゃないですか。で、「『西部警察』の原点は何だろう?」と考えてみると、その前に「大都会」という番組があったんですよね。「西部警察」の前は松田優作が出演していたハードアクションサスペンス「大都会 PARTII」。その前に「大都会 闘いの日々」というのがあって、これが最初なんです。フランスのヌーベルバーグのような雰囲気のドラマだったんですけど、筋肉少女帯もそこに戻ってからチェンジしていくのがいいんじゃないかなって。
内田 そんなに刑事ドラマが好きだったとは。全然知らなったよ。
大槻 いや、そんなに好きじゃないよ(笑)。「西部警察」なんて、実はほとんど観てなかったし。ただ帰宅部だったから、学校から帰ると「俺たちの勲章」とか、「俺たちは天使だ!」「大都会」「太陽にほえろ!」とかの再放送をやってたんですよ。
内田 日テレ系?
大槻 あ、そうだね(笑)。確かに日テレばっかり見てたかも。「池中玄太80キロ」とか「ゆうひが丘の総理大臣」とか。
──アルバムの中盤にはドラマ「特捜最前線」のエンディングテーマ「私だけの十字架」のカバーも収録されてますね。
大槻 「大都会」か「特捜最前線」を観終わった後、チャリンコで街をうろつき回るというのが、僕の「夕焼け原風景」(アルバムの最後に収録されている楽曲のタイトル)なんです。
本城 お、うまくまとまった(笑)。
二面性がないと自分じゃない
──アルバムの前半は「レジテロの夢」「混ぜるな危険」などハードロック、ヘヴィメタルを軸にした楽曲が続きます。
大槻 最近、「やっぱり若い人はハードロックが好きなんだな」ということを認識したんですよ。だから、血沸き肉躍る曲は外せないなっていう。
──ここ数年、ヘヴィメタルが復活している印象もありますからね。
大槻 いや、復活しているわけではなくて、そういう音楽は常にあるんです。……って、伊藤政則さんみたいなこと言っちゃいましたけど(笑)。ただ、時代によってはハードロック、ヘヴィメタルが表舞台に出てないこともありましたからね。今はわりと出てるんじゃないかな。
──「レジテロの夢」は橘高さんの作曲。後半のロックオペラ風の展開も印象的でした。
橘高 俺はもともと極端な二面性があるんですよ。パッと見た感じは過剰にロックな人に思われるみたいなんだけど、メンバーの中で俺だけ子供がいて、家庭を持ってたり。端と端、悪魔と天使みたいなものが共存する曲も、昔から作ってたんですよね。今回の初回限定盤に同梱のDVDにも収録されてる「僕の歌を総て君にやる」もそう。内省的なAメロがあって、Bメロはなくて、すごく広がりのあるサビが来るっていう。「レジテロの夢」も、そのまま終わっていればハードロック大会なんだけど、最後は「Hey Jude」みたいな雰囲気になって。もしかしたらまったく違う曲がつながっているように聴こえるかもしれないけど、俺の中では最初からああいう構成だったんです。そういう二面性がないと、自分じゃないような感じがするんですよ。
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- ニューアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」2015年10月7日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 「おまけのいちにち(闘いの日々)」
- 初回限定盤[CD3枚組+DVD] 5443円 / TKCA-74266
- 通常盤[CD] 3240円 / TKCA-74270
CD収録曲
- 大都会のテーマ(TVサイズ)
- レジテロの夢
- 混ぜるな危険
- 球体関節人形の夜
- 枕投げ営業
- LIVE HOUSE
- 別の星の物語り
- 私だけの十字架
- 大都会のテーマ
- 時は来た
- おわかりいただけただろうか
- S5040
- 夕焼け原風景
初回限定盤DVD収録内容
2015年4月26日「春だ出撃だ筋肉少女帯!!」EX THEATER ROPPONGI公演
- 君よ!俺で変われ!
- 少年、グリグリメガネを拾う
- 僕の歌を総て君にやる
- 未使用引換券(Vo.本城 Ver.)
- 爆殺少女人形舞一号
- 暴いておやりよドルバッキー(Single Ver.)
- 機械
- 中学生からやり直せ!
- 釈迦
- 中2病の神ドロシー
※初回限定盤にはアルバム全曲のインストバージョンが収録されたボーナスCDと、「おわかりいただけただろうか(Vo.橘高 Ver.)」「LIVE HOUSE(Vo.本城 Ver.)」「別の星の物語り(Vo.内田 Ver.)」をそれぞれ収録したCD3種類のうち1枚をランダムで封入。
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演の開催や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念したセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」、2014年には4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」をリリース。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」としてのシングル「地獄のアロハ」、10月にはテレビアニメ「うしおととら」のオープニングテーマ「混ぜるな危険」を含むアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」を発表した。