音楽ナタリー Power Push - 筋肉少女帯

もはや“再結成バンド”ではない 昭和からタイムトリップしてきた男たちが描く原風景

筋肉少女帯がニューアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」を10月7日にリリースした。

2014年10月発売の前作アルバム「THE SHOW MUST GO ON」オリコンのウィークリーチャートでトップ10入りを果たし、続く全国ツアーも大盛況。さらに2015年5月には人間椅子とのユニット「筋肉少女帯人間椅子」名義でシングル「地獄のアロハ」をリリースし、「JOIN ALIVE」「WORLD HAPPINESS」「氣志團万博」などのフェスにも積極的に参加するなど、ここにきてさらに活動のペースを上げている彼ら。アニメ「うしおととら」のオープニングテーマになったシングル「混ぜるな危険」や、野水いおりに提供した「球体関節人形の夜」のセルフカバーなどを収録した、奔放なクリエイティブに貫かれた本作「おまけのいちにち(闘いの日々)」からも、現在の筋少の充実ぶりが伝わってくる。

音楽ナタリーでは昨年の特集(参照:筋肉少女帯「THE SHOW MUST GO ON」メンバー全員インタビュー)に続いて、今回も大槻ケンヂ、内田雄一郎、橘高文彦、本城聡章にインタビューを実施。昭和40年代、50年代の原風景をテーマにしたという本作について語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

“再結成したバンド”としてやることは前作で突き詰めることができた

──前作「THE SHOW MUST GO ON」からちょうど1年のインターバルで、ニューアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」がリリースされます。全国ツアー、「筋肉少女帯人間椅子」名義の「地獄のアロハ」のリリース、フェスやイベントへの出演など精力的な活動が続いていて。活動のペースは確実に上がってますよね。

大槻ケンヂ(Vo)

大槻ケンヂ(Vo) ホントにそうだよね。ありがたいことです。

橘高文彦(G) おかげさまで前作が20年ぶりにオリコンのトップ10に入ったり、バンドの状況はすごくよくて。創作意欲はいつでもあるので、出せるときはどんどん出したいんですよね。

本城聡章(G) 出させていただけるのなら、いくらでもやりますよ。

大槻 この年代のバンドが、CDが売れないこの時代にアルバムを出させてもらえるんだからね。ありがたいですよ。

内田雄一郎(B) そういうところは前向きだよね。年も考えずに「やれるんだったら、やりまっせ!」って、あとでヒーヒー言うことになるんだけど。

本城 今年の2月くらいから、ずっとレコーディングしてる感じですからね。「地獄のアロハ」を人間椅子と一緒に作って、その後は「混ぜるな危険」を録って、そのままアルバムの制作に入ったので。

──アルバムの制作に入ったときは、どんな全体像があったんですか?

大槻 全体像はね、曲選びをしているときに出てきたんですよね。

内田 そうだね。

大槻 「再結成以降とは、また違った感じの楽曲も入れてみよう!」という気持ちが出てきまして。再結成してからオリジナルアルバムを4枚(「新人」「シーズン2」「蔦からまるQの惑星」「THE SHOW MUST GO ON」)出してきて、路線が決定してきた感があったんですよ。今回はそれを崩してみようと。

橘高 それはアルバムのコンセプトにも関わってくる話だよね。筋肉少女帯は再結成バンドじゃないですか。我々は再始動と言っているんですけど、それ以降にリリースした4作には「ライブを一番大切にしたい」という気持ちがあったんです。フェスやイベントに出て、パッと聴いたときに印象がいい曲を我々も求めていたし。歌詞の内容も「ライブとは?」というものが多かったんだけど、そこは前作で突き詰められたと思うんですね。それを踏まえて今作は、活動停止する直前の「最後の聖戦」に続くアルバムみたいになればいいなと思ってたんです、個人的には。で、実際そうなったなと感じていて。90年代の筋少もそうだったんだけど、何度も何度も聴いて、そのたびに新しい発見をしてもらえるようなアルバムになったんじゃないかな。

──再始動から9年経ち、新たなフェーズに突入したということですか?

橘高 “再結成したバンド”という感じがひと段落して、もともと持っていたものが自然と出てきたんだと思う。ライブの勢いを意識するという縛りからも解き放たれて、ひさびさにスタジオ主義のアルバムが作れたと思うし。

生きること自体が闘いの日々

──「おまけのいちにち(闘いの日々)」というタイトルについては?

大槻 これはですね、「おまけのいちにち(その連続)」というタイトルのエッセイ集を今年発売していて。そのタイトルがわりと気に入っていたので、それに絡めようということですね。筋肉少女帯は来年でメンバー全員が50歳を越えるんですけど、20代の頃とは違って、1日1日が“おまけの1日”っぽいなと思うようになって。悪い意味ではなく、お得感があるというか。

一同 ハハハハハ(笑)。

大槻 ただね、おまけの日々というのは、意外にも闘いの日々でもあるんですよ。長い目で見ると、生きるということ自体がそういうことだとも思うんですよね。

──人生とは闘いの日々である、と。

内田 「小沢昭一的こころ」だね。永六輔に語ってほしい(笑)。

大槻 小沢昭一的な言葉の意味が多少わかってきたのかもね。

内田 まあ、実際はそこまでの変化は感じてないですけどね。忙しくて。

本城 内田くんはまだ49歳だから。50歳になったら感じてくるよ。

内田 そうか。じゃ、来年ガーン!と来るのかな。

本城 50になったとたん、時間の流れがより一層早くなった感じがして。やりたいことをやる時間がなくなってきているというか、必死にやりたいことをやらないと、アッという間に1年が終わってしまう気がして。それを含めて“闘いの日々”ですよね。

ニューアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」2015年10月7日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
「おまけのいちにち(闘いの日々)」
初回限定盤[CD3枚組+DVD] 5443円 / TKCA-74266
通常盤[CD] 3240円 / TKCA-74270
CD収録曲
  1. 大都会のテーマ(TVサイズ)
  2. レジテロの夢
  3. 混ぜるな危険
  4. 球体関節人形の夜
  5. 枕投げ営業
  6. LIVE HOUSE
  7. 別の星の物語り
  8. 私だけの十字架
  9. 大都会のテーマ
  10. 時は来た
  11. おわかりいただけただろうか
  12. S5040
  13. 夕焼け原風景
初回限定盤DVD収録内容
2015年4月26日「春だ出撃だ筋肉少女帯!!」EX THEATER ROPPONGI公演
  1. 君よ!俺で変われ!
  2. 少年、グリグリメガネを拾う
  3. 僕の歌を総て君にやる
  4. 未使用引換券(Vo.本城 Ver.)
  5. 爆殺少女人形舞一号
  6. 暴いておやりよドルバッキー(Single Ver.)
  7. 機械
  8. 中学生からやり直せ!
  9. 釈迦
  10. 中2病の神ドロシー

※初回限定盤にはアルバム全曲のインストバージョンが収録されたボーナスCDと、「おわかりいただけただろうか(Vo.橘高 Ver.)」「LIVE HOUSE(Vo.本城 Ver.)」「別の星の物語り(Vo.内田 Ver.)」をそれぞれ収録したCD3種類のうち1枚をランダムで封入。

筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演の開催や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念したセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」、2014年には4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」をリリース。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」としてのシングル「地獄のアロハ」、10月にはテレビアニメ「うしおととら」のオープニングテーマ「混ぜるな危険」を含むアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」を発表した。