ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯

オーケン&うっちーが振り返る4半世紀

今年メジャーデビュー25周年を迎えることを記念して、筋肉少女帯が新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」をリリース。これを受けてナタリーではバンド結成時からのメンバーである大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)にインタビューを行い、バンドブーム、活動凍結、仲直り、そして現在までの激動の4半世紀を振り返ってもらった。

取材・文 / 吉田豪 撮影 / タカハシアキラ

音楽的な素養もなくロックバンドで25年

──大槻さんと内田さんの取材ができるのはホント感慨深いですよ! 2人がロフトプラスワンで和解する瞬間を見ている者としては。

左から内田雄一郎(B)、大槻ケンヂ(Vo)

大槻 あれがもう4~5年前?

内田 いや、7~8年。

──そんな和解を経て筋肉少女帯が復活し、こうして新録ベスト盤を出すに至ったわけですけど。そこに収録されている新曲の「中2病の神ドロシー」は非常に筋少らしいというか、「ポストウォーター」のCMで使われてもおかしくない曲だと思いました。

大槻 「ポストウォーター」のCMか……(笑)。これは橘高(文彦)さんの作った曲ですね。

──歌詞について説明してもらってもいいですか?

大槻 え! 普通に?

──ええ、最初ぐらいは普通に音楽的なことも聞いておこうかと思いまして(笑)。

大槻 そんなの初めてだ!

──やらなくても全然いいですけど……。

大槻 いや、やりますよ! やっぱり個人的な思いとして、僕は音楽的な素養もなく学習もしてこなかった。それなのに気がついたらロックバンドのボーカリストになってて、気がついたらデビューまでしてしまって25年もやってきたわけですよ。しかもハッと周りを見れば、日本屈指の超絶技巧プレイヤーとやってる。これはおかしいな、と。

──確かにおかしいです!

大槻 おかしいだろ、そうと思って。これはよくも悪くも夢みたいな話で。しかも、いわゆる中2病のヤツが見るような。音楽とかやったことないヤツがロックバンドで25年歌ってきてしまったっていうね。

──後追いで音楽を勉強したタイプですからね。

大槻 うん、まだ勉強してないぐらいの。だから、まさに中2病の見る夢のようだっていう歌ですよね。

梶原一騎の洗脳が効いてるから、僕は話を盛るんですよ

大槻ケンヂ(Vo)

大槻 今エッセイ集のサイン会をやってて、「そんな若いのにどうして僕なんか知ってるの?」って言うと、「YouTube観て」とかいろいろ言うんだけど、「お母さんがファンで」とか「お父さんに聴かされて」っていうのも多くて。こないだ来た男性が「先日、初孫が生まれまして」って、ついに3世代アーティストに。

──おじいちゃんが聴く音楽になった!

大槻 おじいちゃんが聴く音楽です! 前にけっこう年配の人が集まるイベントに行ったら、おりも政夫さんが出てきて、「北公次が亡くなり、青山孝史が亡くなり、今年は江木俊夫が亡くなり……まだ死んでないでしょ」。それで客席からワハハハハハって笑いが出て、そのあと「踊り子」を歌うっていう。なんか……そうなるんじゃないですかね、我々も。

──次々と亡くなって(笑)。

大槻 そうそうそう。

──でも実際、生きてるうちに再結成しなきゃ、みたいな気持ちにはなりますよね。

内田 うんうん、若干ありましたね。

──ほかのバンド、特にチェッカーズとか見てると思うじゃないですか。

大槻ケンヂ(Vo)

大槻 チェッカーズね。

──揉め続けて修復不可能になって誰か亡くなる前に、っていう。お2人は出会って30年ぐらいでしたっけ?

大槻 中1からだから。

──相当いろいろあったとは思いますけど。

大槻 それは内田さんに聞いてくださいよ。

──大槻さん側の観点で語ると揉めごとが起きますからね(笑)。それに何度も語ってきたし。

大槻 そうそう。何度も語ってきたし、僕は話を盛るんですよ。

──よく知ってます(笑)。

大槻 ボーカリストだから。あと作家だから。

──日記形式の原稿にすら本当のこと書かない人ですからね。

大槻 そう、書かない書かない。「みんななぜ話を盛らない?!」とか思うタイプだから。

──それじゃつまんないじゃんっていう。

大槻 そうそう、話の流れ上こうなったんだったらそれでいいじゃんっていう、梶原一騎の洗脳が効いてるから。でも、内田くんは戦記とかそういうのが好きだから事実を列挙したいタイプなの。主観がまったく違うんだよね。

内田雄一郎(B)

内田 だから余計なことまで長々と書いてしまう。

大槻 俺、時系列なんてどうでもいいから面白くしたいと思うタイプだから。今日は内田主観の筋少25年を聞きたいね。

内田 そうすると、こと細かなディテールを話し始めて終わらなくなっちゃうから。

──内田さんは当然、大槻さんが話してることを聞いて「違うだろ」って思うことは多々あるわけですよね。

内田 うんうん、昔は思ってましたよ。それ違うよって思ってたけど、面白けりゃいいやとも思いつつ。

大槻 あと、人は真実とかそんなに見ないからね。どんな話がファンのあいだで受け継がれていくかっていうと、自分がバンドについてここは言いたいっていうところは必ずスルーされて、どうでもいいだろっていうところだけが延々と残っていくっていうのがあるから、バンドの話は面白ければいいだろと思ってたんですが、最近はさすがにちょっと、もう梶原一騎の時代でもないなと思って。

──梶原先生が亡くなって何年経つんだって話ですよ(笑)。

大槻 だから内田さんお願いします!

内田 筋少史ね……途中8年ぐらいやってないですけどね。

ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」/ 2013年5月29日発売 / 3000円 徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-73905
収録曲
  1. 中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲
  2. 妖精対弓道部 ~「妖精対弓道部」主題歌
  3. 日本印度化計画
  4. 踊るダメ人間
  5. 釈迦
  6. 香菜、頭をよくしてあげよう
  7. 機械
  8. 再殺部隊
  9. 蜘蛛の糸
  10. キノコパワー
  11. パノラマ島へ帰る
  12. くるくる少女
  13. 孤島の鬼
筋肉少女帯(きんにくしょうじょたい)

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表した。