音楽ナタリー Power Push - 吉川友
ソロアイドルの流儀
茨城の田んぼ道で練習してた
──そんな吉川さんに早くもチャンスが到来します。2008年にテレビアニメ「きらりん☆レボリューション」内のユニット・MilkyWayの一員として久住さん、北原沙弥香さんとともに活動することになりました。
この出来事は本当にすごいプレゼントでしたね。ビックリしました。憧れていた人とこういった形で一緒になることができるなんて考えもしてなかったのでうれしかったです。
──でも、久住さんとこんなに早く近くで一緒に仕事できるのはうれしい反面、緊張もあったのでは?
終始緊張でした。ハロプロエッグに入って1年くらい経ってから来たお話だったので、まだ右も左もわからないような状態で。ダンスもまったくできなかったので活動中はずっと不安しかなかったです。
──久住さんから何かアドバイスをもらったりは?
それが久住さんと落ち着いてお話ができるような余裕が私になくて。それに久住さんはモー娘。の活動がすごく忙しい時期だったこともあって、一緒にいることがほとんどなかったんですよ。だから私が足を引っ張らないように1人で必死にダンスを覚えましたね。
──MilkyWayはすごくアイドルらしいアイドルでしたけど、夢に見ていたアイドルになってみて率直にどう思いました?
ハロプロエッグに入った当初もMilkyWayになったときも、いわゆるアイドルらしいアイドルというものに若干抵抗はありました。私、アイドルのかわいらしさっていうより田舎のイモ臭さが出ちゃって。だから容姿がかわいらしくてふわふわしたアイドル像というよりは、元気で活発な女の子っていうキャラクターを全面に出していたと思います。私は自分のそういうところを押していこうと。
──同じ頃に入ったほかのハロプロエッグの研修生たちと比べても、吉川さんにはかなりチャンスがあったと思いますが、ご自身としてはどう思っていましたか?
そういった状況を理解したうえで、だからこそほかの子には負けられないっていう気持ちは常にありました。苦手なダンスも得意な歌も実家の茨城の田んぼ道でずっと練習してました。周りに家がないから誰にも怒られないんですよ(笑)。そこで人一倍がんばりました。
──モー娘。のオーディションでも吉川さんは歌唱力が評価されていたと思うんですけど、自分としてもその部分をもっと伸ばしていこうと?
そうですね。当時つんく♂さんからも歌唱力については褒めていただいてたので、これは自分の武器になるって思ってました。
よく泣いていたことだけ覚えている
──そして2011年11月の新人公演の終了後にユニバーサルミュージックからソロデビューすることが発表されました。
まさに「キターッ!!」って感じで。でもソロでやるとは思ってなかったんですよ。自分としてはグループでの活動を志望してたので。
──それはソロ活動に対しての不安があったと?
そうですね。発表されたときは不安しかなかったです。その日は東京のホテルで1人だったんですけど、不安すぎてコーヒーこぼしましたから。
──動揺して?
はい。そのあとも壁にぶつかったりして。すごい動揺っぷりでしたね。
──見かけによらず、プレッシャーには弱いんですか。
実はすごい弱いです。
──ステージでの堂々としたパフォーマンスを観る限りでは、そんな風には思えないんですけどね。
いやいや。けっこうビビりですよ。
──それでもソロデビューや自身が主演の映画「きっかけはYOU!」も決まって、トントン拍子でいろんなことが進んでいきました。この当時の吉川さんはどんな心境だったのかと。
正直、やることが多すぎてよく覚えてないというのが事実です。今思い返してみても本当に記憶がないんですよね。ただ、よく泣いていたことだけは覚えてます。
──それは悔し泣き?
そうですね。歌に自信があったにもかかわらず、その歌がちゃんと歌えなくて泣いてました。ハロー!プロジェクトのお正月コンサートに出演したときも、ステージ上で歌詞を忘れて泣いてしまって。だから当時から私のことを観てくださってるファンの皆さんにとっては“泣き虫”っていうイメージが強いかも。
──華やかなはずのソロデビューも最初の頃はボロボロだったと。
声も枯れちゃって歌えなくなってしまいましたし。そのとき、先輩の道重さゆみさんが吸入器を貸してくれたり、いろんな方が心配してくださって、それでまたうれしさと申し訳なさで泣いてしまって(笑)。まあ、あの頃の私はとにかく泣きまくってました。ファンの皆さんの前で泣いたのはハロプロのコンサートですけど、それ以外のライブでも歌い終わったあとはステージ裏でほとんど泣いてました。レコーディング中も、ずっと涙です。
1人で活動するほうが性に合ってる
──ハロプロ所属としてソロデビューしてはいませんが、やっぱりハロプロ出身者はパフォーマンスでのクオリティを求められますよね。先輩方が築いてきた歴史もありますし、下手なことはできないという無言のプレッシャーがあるんじゃないかと。
そうなんです。怖いですね(笑)。
──ソロ活動で一番大変なことってなんですか?
歌詞を覚えることですね。
──それ、ソロっていうよりは歌手にとって超基本だと思うんですけど(笑)。
私、とにかく歌詞やセリフやコメントを覚えることが苦手で。デビュー当初はそれですごく苦労しました。まあ今でも苦労してるんですけど。
──確かに、グループなら歌詞もMCも分担してできますもんね。
あと、1人だとモチベーションを保つのが難しいんです。メンバーがいたら「がんばろう!」って励まし合うこともできると思うんですけど、1人だとそれも難しくて。すべて自己解決。
──モチベーションを上げるのは今でも苦労してるんですか?
今は衣装が派手になったので、あの衣装を着てると発言も自然とワイルドになるんですよね。だから昔よりは自分1人だけでモチベーションを上げやすくはなってると思います(笑)。
──アップアップガールズ(仮)、チャオ ベッラ チンクエッティ、吉川さんの3組からなるチーム・負けん気の中でも、サンバ衣装を着た吉川さんはひと際目立ってますよ。
あれだけ個性が強い面々ですからね。私としては派手な衣装もそうですが、あの集団の中でも飛び抜けて異質な人になりたいなとは思ってます。
──2組を近くで見てて、やっぱりグループでの活動をうらやましいと思うことも多いのでは?
私のほうがアプガよりも先にデビューを決めたんですけど、その後に出てきたアプガの活動を見て、みんなで上を目指していく姿が正直うらやましいなとは思いました。でもグループは人が多いので、だからこそ人間関係とか難しい問題もあると思うんですよ。そういう意味では私は1人で活動していくほうが性に合っているのかなって、改めて思うことはありますね。
──確かに、吉川さんがもしアプガのメンバーだったらと想像すると個が強すぎてグループの枠から飛び出してしまうような気がします。だから吉川さんはソロになるべくしてなったのかなと。
私もそう思います。性格も含めて。
──性格?
昔はそうでもなかったんですけど、人ごみの中にいるのがどうも苦手になってて。チーム・負けん気のときも基本的には楽屋に1人でいたいんです。だから楽屋から出て廊下とかで練習することも多くて。今の性格的にもソロは適正なんだと思いますよ。
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- 3rdアルバム「YOU the 3rd. ~WILDFLOWER~」 / 2015年10月14日発売 / アップフロントワークス
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4000円 / POCS-9104
- 通常盤 [CD] / 3000円 / POCS-1366
CD収録曲
- URAHARA テンプテーション
- アカネディスコ
- 「すき」の数え方
- あまいメロディー
- プラネタリウム
- いいじゃん
- こんな愛しちゃ
- 花
- WILDSTRAWBERRY
- Stairways
初回限定盤DVD収録内容
- WILDSTRAWBERRY(MUSIC VIDEO)
- WILDSTRAWBERRY(メイキング映像)
- 吉川友 初の台湾公演!ゆるゆるドキュメンタリー
吉川友 2015秋TOUR ~WILDSTRAWBERRYを召し上がれ~
- 2015年10月24日(土)北海道 MESSE HALL
- [第1回] START 13:30
[第2回] START 17:00 - 2015年10月31日(土)東京都 AKIBAカルチャーズ劇場
- [トークイベント] START 13:00
[第1回] START 16:00
[第2回] START 19:00 - 2015年11月14日(土)大阪府 心斎橋CLUB DROP
- [第1回] START 13:30
[第2回] START 17:00 - 2015年11月15日(日)愛知県 名古屋ライブホールM.I.D
- [第1回] START 13:30
[第2回] START 17:00 - 2015年11月29日(日)福岡県 VIVRE HALL
- [第1回] START 13:30
[第2回] START 17:00
吉川友(キッカワユウ)
2007年よりハロー!プロジェクトの研修生・ハロプロエッグとして活動をスタート。2008年には久住小春、北原沙弥香とともにテレビ東京系テレビアニメ「きらりん☆レボリューション」内のユニット・MilkyWayのメンバーとなりCDリリースを果たす。2010年11月にはユニバーサルミュージックよりソロデビューが決定したことが発表され、翌2011年5月に1stシングル「きっかけはYOU!」を発表した。その後も精力的にライブ活動を実施し、持ち前の歌唱力の高さで徐々にファンを拡大。フランスやブラジル、台湾などの海外でもライブを行い、ワールドワイドな展開を見せる。2015年5月には17分にも及ぶ大作シングル「花」をリリース。同年10月にはオリジナルフルアルバム「YOU the 3rd. ~WILDFLOWER~」を完成させた。