サスケ×キボウノアカリ|音楽がつなぐ、みんなの願い

音楽の出番はいつか来る

──タイアップ曲というと、アーティスト側はどこかで肩肘を張ってしまう部分もあるかと思うんですが、この曲はサスケさんの新曲として自然に響いてくるというか、違和感なく楽しむことができました。

北清水 ありがとうございます。まさに今言っていただいたように、今回の曲は肩肘を張らずに作りたいなという思いがあったんです。「コロナ禍の中で人々が抱いている希望」という大きなテーマがあるものの、曲はキャッチーかつポップで、誰もが自然と口ずさみたくなるようなものにしたかった。アレンジやサウンドの方向性も、ポップスのきらびやかさや音楽の楽しさを感じられるものになるよう決めていきましたし、そういう音に乗せて、強いメッセージを込めた歌詞をじっくり聴いていただけたらなと。アレンジをテーマに合わせすぎて、壮大なピアノバラードとかにしてしまったら、きっと聴く人も構えてしまうだろうなと思って。今回は顔を上げて誰かと一緒に歌いたくなるようなものになるよう意識しました。

──確かにサウンドは明るさであふれている一方で、歌詞にはけっこうビターな部分もありますよね。「心の傷を隠して 無理やりに笑ってみせるあの子」「愛する人に二度と会えないこと」など。

北清水雄太(Vo, G, Piano, Harmonica)

北清水 はい。そこは歌詞とサウンドとの振り幅が出るよう気を付けた部分でもあります。悲しいことを悲しい音色で表現するのではなく、明るいサウンドで表現することで、より鮮明にメッセージを伝えることができたり、聴く人の間口が広くなるかなと。冒頭の「降りかかる悲しみに耐えながら スコップ持って汗をかくあのひと」という歌詞は、僕自身がこの数年で見聞きしたこと……震災や水害が起こったり、つらくて悲しい出来事がたくさんあったなと思い出しながら書きました。そういうことを実際にご自身で経験された方がこの曲を聴いたときに、その人の背中を少し押すというより、さすってあげられる曲になればいいなと。

──なるほど。

北清水 正直、大きな困難に直面した状況で、音楽に誰かの背中を押す力があるかどうかわからないんですよね。今回のコロナ禍でもそうでしたが、ミュージシャン、ソングライターであることの無力感をものすごく感じたんです。人々が危機に瀕したときも、音楽は衣食住からまったく遠ざかったところに存在していて、それを仕事にしている僕らはどうしようもなく無力だなと。だけど「お手上げだ」とふさぎ込んだりはしていませんし、今も、音楽の出番はいつか来ると思っているんです。その瞬間はこちら側から働きかけて作るものじゃなくて、誰かが音楽を必要だと手を伸ばしてくれたときに訪れるものなんじゃないかなって。僕ら自身も音楽大好きというところから始まっていますし、音楽が役割を果たすときがいつか必ず来ると信じています。

──この曲が音楽を必要としている誰かに寄り添える存在になれたらいいですよね。

北清水 本当にそう思います。世の中全体を前向きにすることは簡単ではないけれど、まず誰か1人。この曲には「君がもしこの曲を聴いて、癒されたり楽しくなったりしてくれたらうれしいな」という思いを込めました。

──音楽が不要不急という言葉でひとくくりにされるたび、北清水さんのようにいろいろなことを考えるミュージシャンは多いと思います。そこを越えて人の心に届くべき音楽があると信じたいですね。

サスケがレコーディングに使用したマイク。

北清水 そうですね。音楽の力を人一倍信じているのは、やっぱり音楽をやっている側の人間なので。僕も音楽に救われた経験があるので、誰かにとっても僕らの音楽がそうなれたらと思っていますけど、今は真っ先にそう言えない状況にある。だけど胸の中にはしっかりとその思いはありますし、いつかどこかで僕らの音楽が誰かの役に立てたら、こんなに幸せなことはないなと。

奥山 ここ1、2年は、僕らの周りのミュージシャンもジャンルを問わず解散することが増えてきているので、そういうお知らせを目にするたびに胸が痛くなっていました。みんなそれぞれの事情があって音楽活動を止めるという選択をしたんだと思いますけど、僕ら2人はこういうふうに音楽を続けられているのは幸せだなと。僕らは学生時代からの付き合いなので、もう30年近く一緒にいるわけですから。

──1人だったらどこかで折れてしまっていたかもしれないけれど、2人だからなんとかなってきたという。

奥山 ホントそうです。相手がいるから自分も踏ん張れるというのはありますよ。

行けない代わりのご褒美

──今回テーマソングを制作する際、皆さんから投稿されたたくさんの“キボウ”を読まれたと思うんですが、その中で特に印象に残っているものはありますか?

奥山裕次(Vo, G, Pianica)

奥山 「友達と遊びたい」というすごく純粋な願いですね。これって、少し前まではごく当たり前にできていたことだったじゃないですか。誰かと気軽に会うことが願い事になってしまうなんて、みんなここまで追い込まれているんだとハッとさせられました。でもコロナ禍で、友達や仲間の存在の大きさや、大切な人と会える喜びを再認識できたと思うんです。僕自身も、人と会うことって本当に大事だなとコロナ禍で噛み締めたのを思い出しました。

──奥山さんはディズニーのグッズコレクターという一面もお持ちですが、気軽にディズニーグッズを買いに行けないという苦しい日々が続いているのでは。

奥山 Twitterの専用アカウントも見てくれたんですね(笑)。いや、ホントにそうなんですよ……。

北清水 奥山の本当の“キボウ”は、「心置きなくディズニーのグッズを買いに行きたい」だったんじゃないかな。ミュージシャンであることを気にして「ワンマンライブを実現させたい」にしていただけで(笑)。この間の配信でも、「限定グッズを買えなかった」って悲しそうに嘆いていましたから。

奥山 なかなか気軽にグッズを買いに行けなくて……。僕はアミューズメントパークが大好きなので、そういう場所に長らく行けていないのもつらいですね。趣味が外に出て遊ぶことだった人にとっては、それが叶わない状況というのはやっぱりストレスだと思います。でも、今はその窮屈さも、テレビに出ることによって解消されている気がします(笑)。ディズニーに行けない代わりに、ご褒美としてテレビのお話が来てるのかなと。

スタジオでギターを弾く北清水雄太(Vo, G, Piano, Harmonica)。

北清水 はははは! そう捉えるか。

──そんなふうに、自分が好きなことや楽しいと思えることをみんながどんどん口にしていくことで、世の中が明るい方向に向かえばいいですね。

奥山 本当にそうですね。このご時世、何かをすると否定的な意見が出てくることが多いですけど、その一方で新たな動きや変化を求めている人は必ずいますからね。各々ができる範囲で、やりたいことをやれるようになればいいなと思います。

トンネルを抜けた先に

──現在「#キボウノアカリ」では、皆さんからの“キボウ”を映像化したプロジェクトムービーを制作中だそうで。お二人が制作されたテーマソングもこの映像に使用されるそうですが、ムービーはどんな作品になりそうですか?

北清水 観る人が前向きになれる映像作品にしたいねと話していて。絶賛制作中なので、自分たちも出来上がりが楽しみです。実はテーマソングの最後のサビに、1回落ちたあとにまた盛り上がって戻ってくるという部分があるんですが、そこにムービーとリンクするような、ちょっとした仕掛けがありまして。今回の曲ではサビそのものを転調させているんですが、1番、2番ときて間奏後の落ちサビは転調せずにメロのコードで進行して、その後ラストのサビで、また1番と2番のサビと同様のキーに転調するんです。そうすることで、子供たちも交えて「No Rain, No Rainbow」と歌ったときの高揚感が楽しめるようになっているんですが、この部分、映像的にもすごくドラマチックな、光を感じられる内容にできたらと考えています。みんなの“キボウ”が空に舞い上がっていくような映像になるはずなので、ぜひ観ていただきたいですね。

──ムービーは7月中に公開される予定とのことで楽しみにしています。その頃にはサスケさんの夏以降の活動予定も発表されていそうですね。

北清水 はい。2月に総合格闘家の朝倉未来さんとのコラボ曲「桜風」を発表させていただきましたけど、サスケ単独の名義では今回のテーマソングがひさしぶりの新曲にあたるので、これからこの曲もたくさんの方にライブで届けられたらうれしいです。

奥山 ありがたいことに今年の夏もいろいろなイベントに誘っていただいていて、学校に歌いに行ったりするお話もあります。少しずつでも歌を届けられる機会が増えていけばいいなと思うので、自分たちも楽しみにしています。

奥山裕次(Vo, G, Pianica)

北清水 僕ら自身もライブという場を欲していますが、きっと待っていてくれた人たちの熱って、ものすごいものになると思うんですよね。その熱が温まった場所で僕らの思いを一気に解放したら、これまでやってきたライブ以上の感動が待っているんじゃないかなって。客席からは大声を出せなかったり、一緒に歌えなかったりという状況はあるかもしれないけど、お互い声にしなくても通じ合えるような新しいライブになる気がします。新曲「キボウノアカリ ~No Rain, No Rainbow~」に込めた、雨が降るから虹が架かるというメッセージの通り、僕らもこのトンネルを抜けたときに、待っていてくれた人たちとの絆を感じられるような大切な時間を作りたいなと思っています。

──ステージからファンの笑顔が見られる日が早く来るといいですね。そういうお二人は今もバラエティ番組を通して皆さんに笑顔を届けていますが。

奥山 はははは。それでいうと、僕らはお笑いが大好きなんですよ。もともとは芸人になりたかったくらい。

北清水 最初は芸人志望だったんですけど、音楽のほうに道が逸れたというか(笑)。だから今、時を経てバラエティ番組に出られたり、好きな芸人さんと共演できているのも夢みたいです。僕らがもし芸人を志していたら、逆にテレビに出られていなかったかもしれないし。

奥山 確かに(笑)。でも、ちゃんと音楽ありきで番組に呼んでもらっているところもめっちゃうれしいです。

北清水 すごくありがたいよね。

奥山 僕らとしては面白ければすべてOKなんですけどね。爆破でもなんでも。

──サスケさん、爆破OKなんですか!?

奥山 もう全然!

北清水 奥山に関しては、普段から才能だなと思うくらいリアクションが面白いんですよ。おでんを食べると、からしをつけた糸こんにゃくに必ずむせて、口から糸こんにゃくが飛び出て歌舞伎に出てくる蜘蛛の巣投げテープみたいな状態になるし(笑)。「毎回そうなるのに、なんで学ばないの?」と思ってます。あとおでんのたまごを3mくらい飛ばしたこともあるよね。あのときは何か生まれたのかと思ったよ。

奥山 目標はテレビタレントになることです。

──夢が変わっちゃってますけど(笑)。

北清水 まあ、これもサスケの1つの顔ということで。彼は今「アウト×デラックス」(フジテレビ系)を狙っているようです。

奥山 あと「水曜日のダウンタウン」(TBS系)にも出たい。「#キボウノアカリ」プロジェクトでやりたいことは声に出していくことが大事だと思ったので、今後も遠慮せず、どんどん言っていこうと思います!(笑)

サスケ