音楽ナタリー PowerPush - キバオブアキバ
“ヲタイリッシュ・デス・ポップ”の真意
キバオブアキバが1stフルアルバム「YENIOL」(イエニオル)をリリースした。今作は既発曲6曲の新録バージョンと新曲5曲からなる作品で、1stアルバムにしてベスト盤とも言える充実作。今回ナタリーではアルバム発売を記念して、ふとし(Vo)とみつる(B)にインタビューを行い、バンドのバックグラウンドや、BABYMETALへの楽曲提供、アニソンシンガー・鈴木このみとのコラボなどを振り返ってもらったほか、“ヲタイリッシュ・デス・ポップ・バンド”と自称するバンドの目指す方向性について話を聞いた。
取材・文 / 田中和宏 撮影 / 上山陽介
スタイリッシュかつオタクに生きたい
──1stアルバム「YENIOL」が完成しました。まずは自己紹介の意味を含めて2008年に結成してからこれまでの活動を簡単に振り返っていただこうと思います。
ふとし(Vo) 大学のサークルでバンドをやっていたのが始まりです。僕は主に特撮が好きで、アニメにもハマったりしながら、音楽以外の自分の好きなものを打ち出していくっていうことをコンセプトにキバオブアキバをやってます。
──なるほど。インターネットやアニメにまつわる内容の歌詞も多いですね。
ふとし あんまり人間関係や恋愛みたいなものに興味がなくて、最初に作った曲は「家でインターネットしてたら……」っていう内容だけを歌った「Internet In Da House」でしたね。音楽的なところだと、基本はメタル育ちなのでおしゃれにはなれないんですけど、好きなメタルをそのままやるんじゃなくていろんな要素を取り入れた音楽をやりたいと思ってました。“ヲタイリッシュ”にはスタイリッシュかつオタクに生きたいなっていう意味が込められてます。
──初の流通作品は缶バッジにCDが付いた「ヲタイリッシュ缶バッジ」(2011年発売)という形態でした。1発目から珍しい試みでしたね。
ふとし ほんとはトレーディングカードがよかったんですよね。僕らのCDを買ってくれた人同士でそのカードを使って戦ってほしかったんですけど、制作上の都合で缶バッジになりました。
──2作目がBABYMETALとのスプリット盤「BABYMETAL×キバオブアキバ」(2012年発売)でした。
ふとし BABYETALのプロデューサーさんからお話をいただいて実現した企画なんですが、組み合わせとして面白いと感じてもらえたみたいです。
みつる(B) BABYMETALもまだ活動して日が浅くて、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のPVが話題になり始めた頃だったし。
ふとし 企画がスタートした段階で、彼女たちが大きな存在になるだろうなと感じていましたが、僕らは正直そんなに前に出たいって意志があんまりないんで、エフェクター的な存在になれたらうれしいですね。添えものみたいな存在でいたいというか……。この活動ペースを見ていただければわかる通り(笑)。
──ははは(笑)。
みつる 僕らが目立とうとすると、悪目立ちするからオプション的な感じでよかったなと。僕らは“渋さ”を重要視してまして、グイグイ前に出るというよりかはもう少し尊い感じでやってきたいんですよね。
──我が強く出ないぶん、他ジャンルともクロスオーバーしやすいんでしょうか。BABYMETALとのスプリット盤をリリースしたあと、アニソンシンガー・鈴木このみさんとシングル「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」(2013年発売)でコラボしたり、「東方Project」の同人メタル界隈の人たちと競演したりと幅広い展開を見せます。
ふとし そうですね。僕らは常に遊撃隊みたいにいろんなシーンでフラフラしてるというか(笑)。ハンパっちゃハンパだけど、そこに誇りを持ってる感はあります。
ベストアルバムのような1stアルバム
──1stアルバムはタイトルが「YENIOL」(イエニオル)。これは「家にいる」って意味ですよね。
ふとし そうです。例えば「エヴァンゲリオン」で使徒の名前が“第◯使徒◯◯エル”ってなってますよね。なんか末尾がエルとかオルとかアルになってるのはカッコいいなあと(笑)。で、自分の思う天使はどこにおるかなって考えたら、家におるなと思ってタイトルを「YENIOL」にしました。
──今作は既発曲6曲、新曲5曲という構成で1stアルバムにして集大成的な作品になりましたね。
みつる 今までアルバムを出さずに4曲入りとか出してきたのも、捨て曲が嫌いで、自信を持って出せる曲だけを集めてたからなんですよね。僕たちが解散するときに初めてベストアルバムを出すっていうくらいの心構えでずっと活動してきたんです。だから本来は今年の5~6月くらいに新曲だけでCDを出そうと思ったんですけど、曲数が貯まってきたってこともあってこのタイミングでアルバムを出すことになりました。
──5~6月というと、元メンバーのもら(G)さんが脱退したタイミングですね。もらさんの脱退後、バンドに変化はありましたか。
ふとし 彼が作ってる曲もあるし、単純にすごい寂しくなるなっていうのはあった。メンバー脱退で大事な要素が1つ減ってしまったけど、そのぶんほかを足す工夫はするようになったかな。
みつる 脱退は残念だったけど、いろいろ知識を得て試行錯誤する中でメンバーを固定する必要性はそこまで感じなくなりましたね。
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収録曲
- Animation With You
- はかせをめざせ
- The Power And The Museum
- Internet In Da House
- Party @The BBS
- Oh,My Parsonal Computer Is Dead!!!
- Firewall
- 全部宇宙が悪い
- The Stay-Home Superstar
- ゾンビ奴
- ファイナル☆クエスト
キバオブアキバ「ONE CLICK WONDER 『YENIOL』RELEASE SHOW」
- 2014年12月7日(日)東京都 GARRET udagawa
- キバオブアキバ / Arbus / and more
- 2014年12月14日(日)京都府 GROWLY
- キバオブアキバ / FEAR FROM THE HATE / LABRET / 極楽浄土
キバオブアキバ
ふとし(Vo)、みつる(B)、浅井(Samp, Vo)、VAVA(Dr)、青木昆陽(Key, 蘭学)の5人組。2008年に京都で結成され、“ヲタイリッシュ・デス・ポップ・バンド”をコンセプトに掲げて活動している。2011年にCD付きの缶バッジセット「ヲタイリッシュ缶バッジ」、2012年にはBABYMETALとのスプリットシングル「BABYMETAL×キバオブアキバ」を発表した。スプリット盤では「Animation With You」を女子目線の歌詞にアレンジした「君とアニメが見たい ~Answer for Animation With You」をBABYMETALに提供。2013年にはアニソンシンガー・鈴木このみとのコラボ名義「鈴木このみn' キバオブアキバ」でテレビアニメ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」のオープニングテーマを発表し、同年8月に開催されたアニソンイベント「ANIMERO SUMMER LIVE2013」では、鈴木このみn' キバオブアキバ feat ZAQのゲストとしてふとしがバンドを代表して出演して会場を沸かせた。2014年11月に初のフルアルバム「YENIOL」をリリース。12月には自主企画「One Click Wonder」を開催する。