音楽ナタリー Power Push - Ken Yokoyama
40代“ギター小僧”がたどり着いたロックンロール
脱メロディックパンクオンリーのバンド
──“Ken Bandらしさ”ってなんでしょうか。
ちょっとしたフックであったりアレンジの加減であったりコード使いであったり、うん……らしさっていうか、メンバーが「これはアリだ」って思えるかどうかってことだと思うんです。Junちゃんなんかは音楽をスタイルで考えられる人なんで、こういうのもアリだよね、って考えられるんですけど、Minamiちゃんはもっと“Ken Bandかくあるべし”っていうのを誰よりも、僕よりも持ってる人なんで。ハードル高かったですねえ。
──Minamiさんが考える“Ken Bandかくあるべし”ってどういったところですか?
やっぱり、かっこいいメロディックパンクバンド……だと思うんですよ、彼にとっては。だからその枠から広がっていこうとする僕に対して「大丈夫かな?」と思った時期もあったでしょうね。
──「それ以上いったらKen Bandじゃなくなるよ、健さん」と。
そうすね。そこはもう話し合いですね。あとはもうメロディックパンクじゃないけどやってて楽しいよね、ってクオリティの楽曲を僕が作っていくか。そういったことで解消していくしかなくて。
抑え切れなくなった“ロックンロール欲”
──従来路線のメロディックパンクだったら横山さんはすぐに書けるだろうし、バンドもツーカーですぐできる。でもあえてなじみのない曲を持っていって、なんとかメンバーに気持ちよく演奏してもらわなきゃいけない。面倒臭さはありませんでした?
ありましたよ。実際練習スタジオがものすごい不穏な空気になりましたからね。「Roll The Dice」って曲を持っていって、僕がイントロを弾いたときとか特に。「これをどうしろっていうんですか……」って空気になるんですよ。そこで一生懸命「ここでコーラスが入って、サビはこうして」とか説明するんだけど、みんな怪訝な顔で聞いてる。それでも演奏を始めて、あるところまでいくと、だんだん曲になってきてみんなのスイッチが入ってくるんですけど、最初はもうポカーンとしていて。なんとか僕が1人でテンションで持ち上げていく感じでしたね。「これ、やってみようよ! Minamiちゃんが弾いて、オレが裏でギター入れるから。ンチャ、ンチャ、って、この絡みがいいじゃん! The Rolling Stonesみたいでさ!」みたいに、すごいミニマムなところで戦ってましたね(笑)。
──でもKen Bandでこの曲をやれば絶対面白くなる、という確信があったわけですね。
はい。でも最終的にカッコよくなるかどうかは結果でしかなくて。僕は1曲1曲の曲作りの過程を楽しんでたのかなあ。エキサイトしながらも不安になり……でも物作りの肝ですよね、それって。
──そうして新しいことをやろうとしたのは、ハイスタからKen Bandを経て、メロディックパンクのスタイルを自分なりにやり尽くしてきたという思いもあったんでしょうか。
まだやり尽くしたとは思っていないですけど……今後もいいメロディを書いていきたいし。どちらかというとロックンロール欲が収まらなくなっちゃった、という感じかもしれないです。
横山健的“ロックンロール”概論
──「Sentimental Trash」の特設サイト(参照:Ken Yokoyama 6th Album [SENTIMENTAL TRASH] リリース特設サイト _ Pizza Of Death Records)に掲載されているインタビューでは、ロックンロールとロックとパンクの違いについて話をされてましたね。横山さんにとってロックンロールの定義ってなんですか。
僕ね、パンクもメタルも、カッコいいものは全部ロックンロールだと思うんですよね。根本にあるのはロックンロール。ロックンロールがすべての基本で、そこからロックもパンクもメタルも派生してきたと思うから。
──じゃあ横山さんがやってきたのもすべてロックンロールであると。
もろロックンロールだと思います。
──今回それを改めて認識させてくれたのがグレッチであると。
そうですね! アイコンとしてもデカかったと思います。
──グレッチを使うことで曲調の幅が広がってきて、でもそれはすべてロックンロールという言葉に収斂できる。そういう“ロックンロール”ができるバンドにしたかった、ということですね。
そうです、まさにそういうバンドにしたかったんですね。それができるバンドだと確信してたし。自分でも多少思考が止まってたところもあるんでしょうね。無意識にいつもと同じやり方で新曲を作っても、似たような感じに仕上がる。自分が作ればそうなっちゃうよな、っていう、無意識な作用があったんですけど、今回はそこを揺さぶられたんで。言葉にするのは難しいんですけど、すごく刺激的な2年間でしたね。
世の中にある音楽はすべて聴きたい
──「Best Wishes」の直後に曲を作り始めてから、今作が完成するまでの2年間の旅ということですね。その旅の目的地はいつもと違う場所を目指したということなんでしょうか。それとも目的地は同じだけど、そこに行くまでに過程が違ったのか。
目的地の話でいうと、以前は目的地をちゃんと決めて取りかかってたものが、今回は目的地すら決めずに出発した感じだったんですね。途中で「目的地をどこにするか考えなきゃいけないよね」っていう。
──目的地を決めないで作るって不安になりませんか。
メンバーと一緒にいると不安になりましたよ、メンバーのほうが不安を感じてたはずなんで(笑)。でも家に帰ると興奮しっぱなしでしたね。グレッチでロックンロールを弾いて。「こういうのもいいなあ!」って。それだけでなくラテンとかR&Bとかロカビリーとか、もう広がりまくっちゃって。すごく興奮しっぱなしでしたね。いち音楽ファンなんで、日常レベルではいつもいろんな出会いを求めてるんですよ。僕、世の中に存在する曲で、自分が好きになる可能性がある曲は1曲も逃したくない、というぐらいの音楽ファンなんですよ。それがグレッチとの出会いで一気に強くなって、膝に置いてるグレッチとともに、今日はどんな新しいフレーズと出会えるかって、夜な夜な探ってましたね。
──要するにロカビリーもR&Bもラテンも、リスナーとして普通に聴いていたけど、それは自分がやる音楽とは分けて考えていた。それがグレッチを介することで、どうやらつながりそうだぞ、と。
そうなんです! その感覚なんです。
──グレッチとロックンロール。魔法の道具ですね。
そうそう。そうなんですよ!
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収録曲
- Dream Of You
- Boys Don't Cry
- I Don't Care
- Maybe Maybe
- Da Da Da
- Roll The Dice
- One Last Time
- Mama, Let Me Come Home
- Yellow Trash Blues
- I Won't Turn Off My Radio
- A Beautiful Song
- Pressure Drop
- Sentimental Trash Tour
- 2015年9月25日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2015年10月6日(火)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2015年10月7日(水)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2015年10月9日(金)新潟県 新潟LOTS
- 2015年10月10日(土)群馬県 高崎club FLEEZ
- 2015年10月16日(金)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2015年10月18日(日)青森県 Mag-Net
- 2015年10月19日(月)秋田県 Club SWINDLE
- 2015年10月21日(水)岩手県 Club Change WAVE
- 2015年10月22日(木)宮城県 Rensa
- 2015年10月24日(土)山形県 山形ミュージック昭和Session
- 2015年12月19日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2016年1月20日(水)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2016年1月21日(木)島根県 松江 AZTiC canova
- 2016年1月23日(土)熊本県 熊本B.9 V1
- 2016年1月24日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2016年1月26日(火)長崎県 DRUM Be-7
- 2016年1月27日(水)福岡県 DRUM LOGOS
- 2016年1月29日(金)愛媛県 WstudioRED
- 2016年1月30日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2016年2月10日(水)静岡県 SOUND SHOWER ark
- 2016年2月11日(木・祝)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2016年2月13日(土)大阪府 なんばHatch
- 2016年2月14日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- Ken Yokoyama DEAD AT BUDOKAN RETURNS
- 2016年3月10日(木)東京都 日本武道館
<出演者>
Ken Yokoyama / SLANG(ゲスト)
Ken Yokoyama(ケンヨコヤマ)
1969年10月1日生まれ。Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリスト。2004年にソロアーティストとしての活動を開始し、Ken Yokoyama名義によるアルバム「The Cost Of My Freedom」をリリースした。Ken Bandとしてライブ活動を開始してからも、2005年の2ndアルバム「Nothin' But Sausage」をはじめ定期的に作品を発表。2008年1月に初の東京・日本武道館公演を実施したほか、2010年10月には「DEAD AT BAY AREA」と題したアリーナライブを神戸と幕張で敢行した。2011年にはHi-STANDARDのライブ活動再開や「AIR JAM 2011」開催など、ソロ以外の活動も続々展開。2012年11月に5thアルバム「Best Wishes」をリリースした。2013年11月にはドキュメンタリー映画「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」が全国60館の劇場にて公開され、2014年9月に「Stop The World」を収めたCDが付属したDVD「横山健 -疾風勁草編-」を発売した。2015年7月には8年4カ月ぶりとなるシングル「I Won't Turn Off My Radio」をリリースし、テレビ朝日系「ミュージックステーション」に初出演。大きな話題を呼んだ。9月にニューアルバム「Sentimental Trash」を発表し、同月より年をまたいだ全国ツアー「Sentimental Trash Tour」を開催する。