音楽ナタリー PowerPush - 横山健

横山健&MINORxU監督が出会いからDVD発売までを語る

2013年11月に劇場公開された横山健のドキュメンタリー映画「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」がDVD化。新曲1曲を収めたCDを付けて9月24日にリリースされる。本作品については公開当時、お笑い芸人・博多大吉(博多華丸・大吉)と横山の対談(参照:映画「横山健 -疾風勁草編-」公開記念 横山健×博多大吉対談)も実施したが、今回は本作の監督・MINORxUとの対談を企画。2人は出会いや映画を撮り始めたきっかけ、撮影中のエピソード、そして本作を通じて築いた絆について熱く語ってくれた。

取材・文 / 西廣智一 撮影 / 上山陽介

特に着地点を決めずに撮っていた

──お2人はいつ頃、どういうきっかけで知り合ったんですか?

横山健 彼が手がけたあるバンドのドキュメント映像をたまたま観て、「この人の撮る映像、面白いな」と思って。で、周りに聞いたら意外と近場の人間だったんです。それで「この人に僕のドキュメント、ちょっと撮ってもらいたいな」と思って、声をかけたのがきっかけです。

MINORxU その前にTwitterで少しやり取りさせてもらってたことはあったんですよ。ただ面と向かって話したことはなかったので、オファーをいただいたときはびっくりした記憶があります。実は最初、1人の人間をドキュメントで長いこと追うっていう機会はめったにないよなと、そちらのほうに興味を持ってやらせてもらいたいなと思って。それにミュージシャンをやっていて、さらに会社の社長をやっている、そんなパーソナリティの持ち主もなかなかいないので、お話をいただいたときはわりと即答でした。

──そうなんですね。そもそも健さんはなぜこういう形の映像作品を作ろうと考えたんですか?

横山健

横山 もともと僕自身、昔からミュージシャンのドキュメント作品が好きで、いろんな人の映像を観てきたんですけど、やっぱり自分でもいつか制作できないかなって、ずっと狙ってはいたんです。それこそHi-STANDARDの頃から。で、僕もだいぶ歳取ってきて、自分が生きてきたことをちゃんと形に残すようなドキュメントを作れたらなって、漠然と考えていたんです。そのタイミングで彼と知り合ったんですよ。

──この撮影が始まったのって、年齢的にも40歳になるかならないかぐらいのタイミングでしたよね。

横山 けっこう長いこと撮ったんですよね、これ(笑)。

MINORxU 最初が2009年の9月ぐらいだったかな。アルバム「Four」のレコーディングがたぶん11月ぐらいから始まったんですかね。

横山 うん、そうね。

──じゃあ今回のDVD化まで含めて、まる5年のプロジェクトになるんですね。

横山 そう。でも最初は映画公開は考えてなくて、DVDとしていずれ発表できればくらいの気持ちで、特に着地点を決めずに撮っていたんです。ところができあがったところで映画公開の話が持ち上がって。

MINORxU 横山さん忘れてるかもしれないですけど、俺は最初のミーティングで「映画にできたらいいな」っていうことをチラッと言った記憶があるんですよ。

横山 マジで?(笑)

MINORxU そう。そのときは恐らくノリで「いいね!」と言って(笑)。

横山 はははは(笑)。

MINORxU 一応「DEAD AT BAYAREA」(2010年10月開催)のあたりまで撮ろうかってぐらいでしたね、最初に決まってたことは。ただ、内容について相談したことはあんまりなかったですね。

横山 そうそう。いや、もう監督がちゃんとストーリーを作って、カッコよく見せてくれっていう、それだけでしたね(笑)。だからいつも話すことと言えば「どこを着地点にするの?」っていうことぐらい。自分からオファーしておいて、まるで彼が発案者かのようなプロジェクトに仕立て上げて、「どう収めんだ、これ」っつって(笑)。そしたら彼も、そこはちゃんと「ああでもない、こうでもない」って考えてくれましたね。

震災という出来事があった中で横山健はどうだったのか

──映画の前半パートはアルバム「Four」のレコーディングやツアーの様子を紹介しながら、健さんが自身の生い立ちを語っていきます。正直このあたりを観る限りでは自伝的な内容を含むアーティストのドキュメンタリー作品かなと思ってたのに、2011年3月の震災を機に後半の流れがガラッと変わりますよね。

MINORxU

MINORxU そうですね。見せ方としては前半と後半でパリッと変えてみたんですけど、俺としては横山さんに対するイメージの軸の部分をズラさないようにはしたいなというのはずっとあって。だから俺的に編集するときにはそれが大きくて……なんて言うんだろう、作品のテーマを変えたつもりはなくて、むしろ震災という出来事があった中で横山健はどうだったのかっていうことを伝えたかっただけであって。

横山 ああ、なるほどね。

MINORxU やっぱり俺が思ってた通り、と言ったらあれですけど、横山さんがブレずに行動していたからこそ、俺も作品の軸をブレさせずに完結できたかなと思います。

横山 なるほどねと思いましたよ、今(笑)。前半の「DEAD AT BAYAREA」あたりまでで編集も一度済んでたんですよ。でも震災があって、Hi-STANDARD再始動や「AIR JAM」開催なんてこともあって、そういった展開が作品の温度を変えてしまったんじゃないかと僕自身は思ってたんですけど、やっぱり監督は僕よりも大きな視点で見てくれてたという(笑)。

MINORxU はははは(笑)。

──ブレるどころか、後半に進むにつれて横山健という人間の魅力がよりストレートに表現されていたと思うんです。震災を通していろんなことに苦悩する健さんの姿によって、人間臭さがダイレクトに伝わる。そうすると2回、3回と見返したときに、前半パートの自分語りにもより説得力が増すんですよね。

横山 それはもうね、監督がすごくカッコつけさせてくれたんです(笑)。監督がさっき言ってくれたように「この人はこうなんだろうな」って、僕が気付かないとこで信じてやっててくれた結果なんですよ。それが今わかって、「ああ、だからこうなったのか」って余計に納得できました。

横山健(ヨコヤマケン)
横山健

1969年10月1日生まれ。Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリスト。2004年からソロアーティストとしての活動を開始し、Ken Yokoyama名義によるアルバム「The Cost Of My Freedom」をリリースした。Ken Bandとしてライブ活動を展開して以降も、2005年の2ndアルバム「Nothin' But Sausage」をはじめ定期的に作品を発表。2008年1月には初の日本武道館公演を実施したほか、2010年10月には「DEAD AT BAY AREA」と題したアリーナライブを神戸と幕張で敢行した。2011年にはHi-STANDARDのライブ活動再開や「AIR JAM 2011」開催など、ソロ以外の活動も続々展開。2012年11月に5thアルバム「Best Wishes」をリリースした。2013年11月にはドキュメンタリー映画「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」が、全国60館の劇場にて公開。2014年9月、新曲「Stop The World」を収めたCDが付属したDVD「横山健 -疾風勁草編-」を発売する。