自分の意見を主張しながら勝ち続けてたどりついた「自分は自分のスタイルでいい」
──前作から約2年半ぶりとなるKEN THE 390さんのアルバム「リフレイン」は“こういうヒップホップもあるんだよ”ということを提示した1枚だと感じました。
KEN THE 390 そうですね。僕は普通に進学校に通って、大学行って、サラリーマンやって、みたいな感じだったんで、ヒップホップの本流に対してずっと疎外感と言うか、まともである自分にすごいコンプレックスを感じていて。
鈴木 わかります、それ。世の中的に、高学歴であることは全然コンプレックスじゃないのに。
KEN THE 390 学生時代は「お前、勉強ばっかしやがって」ってDisられるし、会社員時代はMCバトルで「おめーなんか明日会社行くんだろ? このクソ野郎!」みたいなこと言われたり(笑)。もともと自分は高校生のときにいろんなルールに縛られた生活を送ってたから、先輩ラッパーの枠外の行動をカッコいいなと憧れてラップを始めた部分もあったんです。でも、MCバトルで自分の意見を主張して勝つということを長く続ける中で、「自分は自分のスタイルでいいや」と思えるようになって。それでやっとみんなと仲良くなれたんですよ。
──自分のスタイルが確立したからこそですね。
KEN THE 390 今になって「俺は悪い」とか言い出したらダサいでしょ?(笑) 「そういう人間じゃない」って、やっと素直に言えるようになりました。いろんな人がいることがヒップホップのいいところだと思うんで。
鈴木 僕もこのアルバムを聴いてすごく思いました。ヒップホップに触れてない人の選択肢を広げてあげることってすごく大事じゃないですか。音楽にあまり詳しくないOLの人に「これもヒップホップなんだ!」って思ってもらうこと。でも、それをやるのって実は勇気がいることなんですよね。
──今作は曲順の通りにレコーディングを実施し、楽曲を聴き進めると物語が進行するというコンセプチュアルな内容です。
KEN THE 390 今はCDで聴くよりもサブスクリプションで聴く人が多くて、そういうリスナーの多くは自分でプレイリストを組んでいるじゃないですか。そうなるとアルバムをリリースする意味がどんどん薄れていくなと思っていて。でも曲順にも意味があって、1曲目を聴いたから5曲目がよりよく聞こえるみたいな、話の筋が続いてるアルバムのほうが面白いなと思ったんですよね。海外でもどんどんアルバムの意味が薄くなっているから、「出すならコンセプチュアルなもの」という考え方をされるようになってきています。
鈴木 先の発売日を待つんじゃなく、曲ができたらいきなり出しちゃう、みたいな流れにどんどんなってますもんね。Instagramに投稿するのと同じ感覚で突然曲をボーンとアップしたり。音楽を発表することが生活の中に入っちゃってる。
マイクリレーはギタリストが5人続けて速弾きをやるようなもの
──2016年リリースの「真っ向勝負 feat. MC☆ニガリ a.k.a. 赤い稲妻,KOPERU,CHICO CARLITO,晋平太」に続き、今作も「調子悪い feat. サイプレス上野, DOTAMA」「インファイト feat. ERONE, FORK(ICE BAHN), 裂固, Mr.Q」でマイクリレーが行われています。
KEN THE 390 ヒップホップって、MCバトルじゃなくても競い合いの原理がすごく働いていて。マイクリレーの曲って同じ曲の中で5人ぐらいが同じ分量歌うんです。これって極端な話、ギタリストが5人続けて速弾きをやるようなもので、すごくいびつな形なんですよね。
鈴木 ああー、そうかもね。
KEN THE 390 同じ土俵で同じテーマ設定でラッパーを何人か並べて“誰が一番イケてるか勝負”を音楽でやる、その戦いを曲として売っちゃうみたいな発想がすごく好きで。そういうのは積極的にやりたいと思っています。
──タイトル曲「リフレイン」もダンスクラシック好きにはたまらないナンバーですが、どんな思いを込められたんでしょう?
KEN THE 390 去年、井上三太さん原作の「TOKYO TRIBE」という舞台の音楽監督をやったんですよ。シーンに合わせて“出会いの曲”とか“失恋するときの曲”とか20曲くらい選曲したんですけど、普通にその曲を聴くのと物語の流れの中で聴くのとでは全然聴こえ方が違っていて。このアルバムもそういうふうにしたかったので、物語の時系列を合わせて曲を書いていって最後にどうまとめようかと考えた結果、人生を振り返って「あのとき超よかったよな」「超キツかったよな」って、ふっとよみがえる短い瞬間、それが「リフレイン」だと思ったんです。
鈴木 なるほど。やっぱり、曲作り以外のいろいろやってきた仕事が作品に流れ込んでいくものなんですね。
KEN THE 390 そうなんですよ。「フリースタイルダンジョン」のおかげでいろんなことをさせていただいてますが、「ほかの業界の人と一緒に何かをクリエイトすると自分に返ってくるんだな」「音楽でもまだやってない可能性がいっぱいあるな」というのを感じます。それこそ「コンプラ」もそうですよね。「やってることは今までと一緒なのに発想の転換でこんなに変わるんだ?」って。そういう発見が自分の音楽に影響したところはあるかもしれません。
──鈴木さんはNETFLIXで配信中のアニメ「DEVILMAN crybaby」はご覧になられましたか?
鈴木 まだ観てないんですけど、すごいんでしょ? 原作マンガの衝撃の最終回が描かれるとか。
KEN THE 390 そうなんです。僕がワムという役で声優をやりつつ、ラップの監修もやっているんです。般若さん、YOUNG DAISくんも出ていて、途中でサイファーをするシーンもあって。
鈴木 俺、「デビルマン」はアニメから入ったから、「マンガは内容が違うんだよ」って子供の頃に言われて読んだら、めちゃめちゃ怖くてビックリしたなー。それ以来、永井豪はコンプラだと思っていて(笑)。
KEN THE 390 最後、ヒロインがコンプラになるところもすごいですよ。
鈴木 へえーっ、観てみます!
- KEN THE 390「リフレイン」
- 2018年2月14日発売 / DREAM BOY
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初回限定盤 [CD+DVD]
4212円 / DBMS-040~1 -
通常盤 [CD]
2916円 / DBMS-042
- CD収録曲
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- Winter Song
- 夜が来るまで
- Light Up
- after party feat. HISATOMI
- 月明かりの下でダンス
- メモリーレーン
- 調子悪い feat. サイプレス上野, DOTAMA
- 君がいない
- 五月雨の君に feat. 鋼田テフロン
- Go Now
- リフレイン
- インファイト feat. ERONE, FORK(ICE BAHN), 裂固, Mr.Q
- 初回限定盤DVD収録内容
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<#ケンザワンマン2017>
- Clap
- メモリーレーン
- Chase feat. TAKUMA THE GREAT, FORK, ISH-ONE, サイプレス上野
- ガッデム feat. ERONE
- インファイト feat. ERONE, FORK(ICE BAHN), 裂固, Mr.Q
- after party
- 五月雨の君に
- Rock The House feat. 裂固, EINSHTEIN, じょう
- 真っ向勝負 feat. MC☆ニガリ a.k.a. 赤い稲妻, KOPERU, CHICO CARLITO
<ミュージックビデオ>
- リフレイン
- Winter song
- after party
- 五月雨の君に feat. 鋼田テフロン
- インファイト feat. ERONE, FORK(ICE BAHN), 裂固, Mr.Q
- KEN THE 390 LIVE TOUR 2018「リフレイン」
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- 2018年4月1日(日)
東京都 SOUND MUSEUM VISION - 2018年4月7日(土)
福岡県 THE Voodoo Lounge - 2018年4月29日(日・祝)
愛知県 HeartLand - 2018年4月30日(月・振休)
大阪府 CONPASS
- 2018年4月1日(日)
- KEN THE 390(ケンザサンキューマル)
- フリースタイルバトルで実績を重ねたのち、2006年にアルバム「プロローグ」をリリース。2011年12月に主宰レーベル・DREAM BOYを設立し、活発なアーティスト活動を続けながら、レーベル運営からイベントプロデュースに至るまで多岐にわたって活躍している。現在はテレビ朝日系で放送中のMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」に審査員としてもレギュラー出演中。2018年2月に約2年半ぶりのフルアルバム「リフレイン」をリリースした。
- 鈴木おさむ(スズキオサム)
- 1972年4月生まれ千葉出身。19歳で放送作家としてデビューし、バラエティを中心に多くのヒット番組の構成を担当する。さらに映画やドラマの脚本、舞台の作・演出、小説の執筆などさまざまなジャンルで活躍。2002年10月には森三中の大島美幸と交際期間0日で結婚して話題になり、「『いい夫婦の日』パートナー・オブ・ザ・イヤー 2009」「第9回ペアレンティングアワード カップル部門」を受賞している。5月11日には初監督作品となる映画「ラブ×ドック」の公開が予定されている。
- 「ラブ×ドック」
- 2018年5月11日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードシショー
- ストーリー
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人気パティシエ・剛田飛鳥は人生で成功を収めながらも、節目節目で恋愛に走り、仕事や親友をなくしてきた。そんな飛鳥が恋愛クリニック「ラブドック」を訪れ、危険な恋愛をストップできる特別な薬を処方してもらう。果たして彼女の恋愛模様は、薬で軌道修正できるのか……?
- スタッフ / キャスト
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- 脚本・監督:鈴木おさむ
- 出演:吉田羊、野村周平、大久保佳代子、成田凌 / 広末涼子、吉田鋼太郎(特別出演) / 玉木宏
- ミュージックディレクション&主題歌:加藤ミリヤ