ナタリー PowerPush - 平井堅

純国産R&Bの金字塔「JAPANESE SINGER」

平井堅インタビュー 13曲に込めた誇りと情熱

あの人に訊く 教えて堅ちゃん

「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」イベントレポート

「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」イベント終了後の一場面(photo by 橋本塁)

5月12日、タワーレコード渋谷店STAGE ONEにて平井堅がインストアイベント「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」を実施。彼のデビュー15周年最終日に行われたこのイベントは、抽選で選ばれた70名を招待して開催された。

イベントの前半は、6月8日にリリースされるニューアルバム「JAPANESE SINGER」の先行試聴会からスタート。シングル「いとしき日々よ」とアルバム収録曲から新録曲8曲が初公開され、集まったファンは初めて耳にする名曲をじっくりと味わった。

「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」イベントの様子

中盤では平井堅本人と、ナタリー編集長・大山卓也のトークセッションを実施。大歓声と拍手に迎えられてステージに登場した平井は、約10年ぶりとなるこの日のインストアイベントについて「僕もあんまり記憶がなかったんですけど、かれこれ10年ぶりって聞いてびっくりしました。すごくうれしいけど緊張しますね。楽屋もすぐそこだったので心臓がバクバクしてて」と、普段のライブとは違うシチュエーションに緊張を隠さない。そしてアルバム試聴会について「手前味噌ですけど良いアルバムができたので、今日初めて聴いていただいてすごく幸せな気持ちです。ありがとうございます」と感謝の気持ちを語った。

ニューアルバムの収録曲は昨年末から制作が始められ、全曲が完成したのは「1週間ぐらい前ですね。できたてホカホカです」とのこと。オリジナルアルバムの発売が約3年3カ月ぶりとなることについて「リリースのペースがわりとゆっくりになってる気がするんですけど……」と尋ねられると、平井は「特に理由はないんですけど、その間にも『Ken's Bar II』っていうカバーアルバムを出したりしてるので、働いてはいるんですよ(笑)。年齢とか自分の体力も含めて、気づけば3年経ってしまったという感じですね。怠けてるということではないんですよ(笑)」と返し、客席の笑いを誘った。

「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」イベント終了後の一場面(photo by 橋本塁)

「JAPANESE SINGER」というアルバムタイトルについては「とにかくJ-POPとしてやれるだけのことはやり尽くそう、そして今の平井堅の気持ちをガツンと出すような、そういうぶっといアルバムにしようと決めていたんです。そしてできあがったときに『JAPANESE SINGER』しかないと思って。このタイトルに負けない内容であるという自負や、自分が『JAPANESE SINGER』というタイトルに恥じない歌手でいたいなという願いも込めています」と説明。大ヒットしたベストアルバム「歌バカ」を引き合いに出し「自分で自分のことを『JAPANESE SINGER』とか『歌バカ』と言うのはハードルを上げることなので、それに苦しめられるかもしれない。でも自分が進化して、追いついていきたいという気持ちでつけました」と語った。

新録曲8曲で10年ぶりにプロデューサー松尾潔とタッグを組んだことに話が及ぶと、「松尾さんは才能ももちろんですけども、人脈や出てくるワードといった引き出しが無尽蔵にあるんです。松尾さんのおかげで今回初めて川口大輔さんや、オーサカ=モノレールとも一緒に仕事ができましたし、いろんな人との出会いも松尾さんが作ってくれました」と彼の功績について語った。松尾との具体的な作業内容を尋ねられると「一緒に歌詞を書いたり、どういう曲がこのアルバムに必要だろうかと話し合ったり。あと、僕が作った詞と曲を松尾さんに提出して『ここはこうしたほうがいいんじゃないか』って赤を入れてもらったり、先生みたいな存在でした。やってることは10年前と本当に変わらないんですけど、変わったところはお互い10年歳をとっておっさんになりましたね(笑)」と話していた。

「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」イベントの様子

最後はわずか70人のファンを前にしての貴重なミニライブを披露。ピアノ伴奏のみでのシンプルなステージとあって、ファンの期待も大いに高まる。歌に入る前、平井は「特別な思いで作った曲ばかりなので一緒に愛して聴いてくれるとうれしいです」と話してから、ライブをスタート。

1曲目「いとしき日々よ」を歌う前、イヤーモニターをはめ忘れるというハプニングがありつつも、いざ曲に入ると情感たっぷりの歌声で魅了する。観客の中には涙ぐみながら聴き入る人の姿も見られた。

「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」イベントの様子

そしてアルバムの最後に収録される「あなたと」を披露する際には、平井は以下のようにファンに語りかけた。「この曲は4月に書いた曲なんですけども……。3月11日に起きた震災の後、僕はコメントを発表しませんでした。スタッフにもいろんなことを言われたんですけども、正直申し上げて何を言っていいかわからなくて。言葉が出なくてただただ茫然としていたんです。そんな中で、いいのか悪いのかわからないまま無我夢中でアルバムを作って、最後に『あなたと』を書きました」。

集まった全員が彼の言葉に聴き入る中、平井の話が続く。「この曲は僕の精一杯の気持ちで、自分の心の中をえぐり出して作った曲です。僕は自分がそこまで強い人間じゃないから『がんばろう』とか『心はひとつ』とか、今までそういう言葉を自分の音楽の中で使わないようにしていて、今回はそういうことを言っている場合じゃないとはわかってはいるんですが……この歌が僕の答えです。この歌で僕の気持ちを感じとってもらえればいいなと思っています」。彼の赤裸々かつ真摯な言葉が、ファンの心に沁みわたっていく様子がうかがえた。

そしてイベントの最後を締めくくる曲として、平井は「あなたと」を熱唱。愛する人と生きていこうとする姿を歌いあげた感動的なナンバーに、会場中が息を呑んで聴き惚れていた。

「Ken Hirai 15th Anniversary LAST」イベントの様子

ニューアルバム「JAPANESE SINGER」 / 2011年6月8日発売 / DefSTAR Records

  • 初回限定盤A[CD+DVD] 4800円(税込)/ DFCL-1782~3 / Amazon.co.jpへ
  • 初回限定盤B[CD+DVD] 3750円(税込) / DFCL-1784~5 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 3059円(税込) / DFCL-1786 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Sing Forever
  2. いとしき日々よ
  3. CANDY
  4. お願いジュリー☆
  5. 僕は君に恋をする
  6. さよならマイ・ラブ
  7. R&B
  8. Girls 3x
  9. アイシテル
  10. BLIND
  11. Miss サマータイム
  12. 夢のむこうで
  13. あなたと
初回限定盤A DVD収録内容

<ライブ映像>
「Ken Hirai 15th Anniversary Special!! Vol.4」@京セラドーム大阪(132分・18曲)

初回限定盤B DVD収録内容

<ビデオクリップ>

  1. CANDY
  2. 僕は君に恋をする
  3. Sing Forever
  4. アイシテル
  5. いとしき日々よ
  6. 夢のむこうで
平井堅(ひらいけん)

アーティスト写真

1972年大阪生まれのシンガーソングライター。大学在学中にソニーミュージックのオーディションに入選したのをきっかけに、1995年にシングル「Precious Junk」でデビュー。2000年にリリースしたシングル「楽園」がヒットを記録し、その卓越した歌唱力と完成度の高い楽曲で一躍トップシンガーの仲間入りを果たす。2002年には童謡「大きな古時計」のカバーで世代を超えた人気を獲得。その後も「瞳をとじて」「POP STAR」など多くの楽曲をヒットチャートに送り込んでいる。また「Ken's Bar」と題したアコースティックライブシリーズを自身のライフワークとして定期的に開催しており、同タイトルのカバーアルバムも2作発表。フェイバリットアーティストはダニー・ハサウェイ。