ナタリー PowerPush - 楳図かずお×志磨遼平(毛皮のマリーズ)
楳図ハウスで天才頂上対談
ロックンローラーはボーダーを着ないと(楳図)
──「海賊」と「ロック」の組み合わせもいいですよね。海賊といえばボーダーシャツだし。
楳図 そうそう、ロックンローラーはやっぱりこれ(楳図先生のトレードマーク・赤と白のボーダーTシャツ)を着ないと。
志磨 プレスリーも着てましたよね、ボーダー。RAMONESも。
楳図 あとはなんと言ってもピカソですよね! 美術館に行っても、作品よりピカソ自身の写真がいいなって思うんですよ。そういえば以前「縞模様の歴史」という本をいただいたことがあるんです。“しましま”の歴史ってすごく古くて、最初は聖書の中にある「2種類のものを混ぜる行為はしてはいけない」っていう記述らしいんです。
志磨 混ざらない、ってことなんですか?
楳図 そうなんでしょうねえ。排斥したい人に着せるということで、牢屋の人の服になったり。そこから逃げ出した人が海賊になった、っていうこともあるだろうし。
志磨 そこからロックにつながっていくんですねえ。なんていうか、あんまりいい意味で使われないですもんね、“しましま”って。“よこしま”とか“話が平行線”とか。
楳図 そうですね。でもそのあとは国旗に使われるようになったんですよね。まずはフランスで最後はアメリカ。そのあたりで悪いイメージがなくなってきた……って、書いてありました、その本に(笑)。
布団の周りは楳図先生のマンガだらけ(志磨)
志磨 それにしても本当にボーダーがお似合いですね。
楳図 高校を卒業してからずっとこれですからね。志磨さんは普段どんな服を着てるんですか?
志磨 えーと、お仕事のときはいろいろと用意してもらって、着させていただいたり。
楳図 着させてもらうって、誰に?
志磨 スタイリストさんですね。衣装さんに作っていただくこともあります。
楳図 うらやましい! 僕も早くそういう立場になりたい(笑)。
──楳図先生もたくさん衣装をお持ちですよね。
楳図 そうなんですけどね。
志磨 でも男の人の洋服って、どうしても色味が少ないじゃないですか。日本では、ということかもしれないけど。
楳図 そうですねえ。サイケデリックが流行ってた頃は、まるで衣装みたいな洋服もたくさんあって面白かったんですけど。あの時期ってダリがすごく人気あったりして。この前テレビで見たんですけど、香港では日本製のケータイがあまり売れないらしいんですよ。性能はいいけど色が地味だからって。さっきのおうちの話にもつながりますけど、美的センスってことになると頼りないですよね、どうしても。日本のおうちって、ほとんど灰色か茶色でしょ。志磨さんはどんなところに住んでるんですか?
志磨 いや、僕はもう……。
楳図 グチャグチャ?
志磨 はい(笑)。
楳図 実は僕もそうだったんですよ、昔は。だいぶグチャグチャでやってたんですけど、あるときに「これじゃいけない!」って思ったんですよね。きっと志磨さんもそうなると思いますよ。
志磨 そうですね……。今は布団の周りに楳図先生のマンガがいっぱいあるんですよ。お会いする前に読み直そうと思いまして。
楳図 うれしいです。
子供の頃から一線を越えたものが好きだった(志磨)
──志磨さんは楳図先生の作品との出会いはどういう感じだったんですか?
志磨 先生のマンガがあったんですよね、家に。
楳図 ということは、おうちの方が?
志磨 そこがはっきりしないんです、実は。
楳図 ハッと気付いたら手に持ってたとか? 怖いですねー(笑)。
志磨 でもホントにそういう感じなんですよね。僕はずっと「親が持ってたんだろう」って思ってたんだけど、よく考えてみるとうちの親って全然マンガ読まないんですよ。だから、僕が小さいときに「これが読みたい」って買ってもらったのかな、と。僕はとても良い趣味をした子供だったので(笑)、楳図先生の作品だったり、永井豪さんの「デビルマン」とか赤塚不二夫さんの「天才バカボン」とか、日野日出志さんのマンガが好きで。
楳図 あ、それはかなりのものですねえ。
志磨 子供ながらに何かしらのジャッジをしていたというか、一線を越えたものを好んでたんですよね、きっと。
楳図 普通の子ではないですよね。やっぱりアート系なんだと思います。今志磨さんが挙げた人たちって、一般的には「気持ち悪い」みたいに言われる絵柄なんだけど、そっちのほうがずっとアートに近いんですよね。
CD収録曲
- The End Of The World
- HEART OF GOLD
- ラストワルツ
- 夢のあと
- 上海姑娘
- ラプソディ・イン・ザ・ムード
- The Ballad Of Saturday Night
- 毛皮のマリーズのハロー!ロンドン
- となりにいてね
- ダンデライオン
- JUBILEE
初回限定盤DVD収録内容
- 毛皮のマリーズのハロー!ロンドン
毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)
志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も精力的なライブ活動や音源の発表を重ねつつ、日本コロムビアと契約し、2010年4月にアルバム「毛皮のマリーズ」でメジャーデビュー。2011年1月にはホーンセクションやストリングスを大胆に導入した問題作「ティン・パン・アレイ」を発表し、ロックバンドの枠組みを超えた才能をアピールした。2011年9月にメジャー3rdアルバム「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン(仮)」をリリース。
楳図かずお(うめずかずお)
1936年和歌山県生まれ。1955年に単行本「森の兄妹」でデビュー。その後「ねこ目少女」「へび女」などの作品で、恐怖マンガの第一人者として知られるようになる。1967年少年画報にて連載した「猫目小僧」は1976年にTVアニメ化、2006年には実写映画化もされた。1975年「漂流教室」ほかで第20回小学館漫画賞を受賞。翌年ギャグマンガ「まことちゃん」が大ヒットし“グワシ”ポーズは社会現象にもなった。その他代表作は「洗礼」「わたしは真悟」「イアラ」「14歳」「おろち」など多数。その特異な才能を生かしタレント、音楽家としても活動。自身がほぼ全曲の作詞作曲を手がけるアルバム「闇のアルバム2」を2011年8月に発表した。