ナタリー PowerPush - 楳図かずお×志磨遼平(毛皮のマリーズ)
楳図ハウスで天才頂上対談
実に36年ぶりとなるニューアルバム「闇のアルバム2」を発表したばかりのマンガ家・楳図かずお、そして「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン(仮)」のリリースを控えた志磨遼平による貴重な対談がついに実現!
幼少の頃から楳図マンガに浸り、影響を受けてきた志磨が「楳図先生にどうしても会いたい!」と熱望したことで実現したこの対談(場所はもちろん、東京・吉祥寺の楳図ハウス!)。ロックンロールとボーダーTシャツの関係から日本人の美意識についてまで、とんでもなく幅広く、ブッ飛んだ内容となった。日本が誇る2人の天才によるトークセッションをたっぷりと楽しんでほしい。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 平沼久奈
150年目指してがんばります(志磨)
志磨 はじめまして。毛皮のマリーズの志磨と申します。うわー、楳図先生! すごい!!
楳図 (笑)。こんにちはー。あ、「スーパー☆ポリス」のTシャツ着てくれてるんですね。背がけっこう高いですね。
志磨 はい、182cmです。(楳図ワールドが広がる家の中を見渡し)おー、すごいですね!
楳図 うれしいですー。あ、トイレはそちらを曲がったところにありますから。
志磨 ありがとうございます。ちょっと家の中を見させてもらっていいですか……?
楳図 どうぞ!
志磨 (衣裳部屋、書庫、寝室などを順番に回る)いやー、ホントに素晴らしい。
──志磨さんは楳図先生の熱心なファンなんですよね。
志磨 ええ、もう。
楳図 ありがとうございます。志磨さんはどれくらい音楽をやってらっしゃるんですか?
志磨 バンドを始めたのが15歳のときだから、そろそろ15年になります。来年、30歳になるので。
楳図 もうベテランですね。「15日しかやってない」ってなると「えー!?」ってなるけど。150年やってたらすごいけどね。
志磨 はい。150年目指してがんばります。
「闇のアルバム」がマリーズ新作のお手本(志磨)
志磨 僕は楳図先生の「闇のアルバム」の「1」(1975年にリリースされた「闇のアルバム 楳図かずお作品集」)がとても好きでして……。
楳図 あ、ホントですか。
志磨 もうすぐ僕らの新しいアルバム(「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン(仮)」)が出るんですけど、それを作ってるときに、よく「闇のアルバム」を聴かせてもらってたんです。今回のアルバムはなんていうか“悲しみ”みたいなものをテーマにしたかったんですね。
楳図 「おはよう」って始まるやつですか?
志磨 あ、それは前のアルバム(「ティン・パン・アレイ」)ですね。あれはにぎやかでほがらかなアルバムだったので、今回は“美しい悲しみ”みたいなものを表現したくて。そうしたときに「闇のアルバム」が本当に良いお手本になってくれたんです。ひとつの理想と言いますか。
楳図 ありがとうございます。お手本になるかどうかはわかりませんが(笑)。
志磨 しかも今回、36年ぶりに新作(「闇のアルバム2」)を出されるということで。
楳図 そうなんです。信じられないですけどね、そんなに長く過ぎたなんて。
志磨 曲はずっと作ってらっしゃったんですか?
楳図 アテがないのに作ってもしょうがない、ってところがあるので、普段は作らないですけどね。「出しますよ」って言われてからスイッチが入るというか。マンガもそうですけど、依頼がなくて勝手に描いてるだけじゃ面白くないんですよね。やっぱり締め切りとかがないと。しかも歌っていうのは、アテもないのに書いてるとちょっと危ないじゃないですか。
志磨 そうですね。ポエムですもんね、言ってみれば(笑)。歌を書かれるときは、詞と曲はどちらが先なんですか?
楳図 ほとんど詞が先ですね。志磨さんは?
志磨 曲が先のほうが多いんですけど、お客さんの反応がいいのは、詞が先にできた曲だったりするんですよね。先生の曲は“詞が先”ってわかります、聴いてると。
楳図 あ、そうですか。
志磨 4分の4拍子じゃない曲があったりしますよね?
楳図 あ、そうですね。言葉が入りきらないから、そうなっちゃうんですよね。
志磨 そこで独特の音楽になってる気がするんですよね。
CD収録曲
- The End Of The World
- HEART OF GOLD
- ラストワルツ
- 夢のあと
- 上海姑娘
- ラプソディ・イン・ザ・ムード
- The Ballad Of Saturday Night
- 毛皮のマリーズのハロー!ロンドン
- となりにいてね
- ダンデライオン
- JUBILEE
初回限定盤DVD収録内容
- 毛皮のマリーズのハロー!ロンドン
毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)
志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も精力的なライブ活動や音源の発表を重ねつつ、日本コロムビアと契約し、2010年4月にアルバム「毛皮のマリーズ」でメジャーデビュー。2011年1月にはホーンセクションやストリングスを大胆に導入した問題作「ティン・パン・アレイ」を発表し、ロックバンドの枠組みを超えた才能をアピールした。2011年9月にメジャー3rdアルバム「毛皮のマリーズのハロー!ロンドン(仮)」をリリース。
楳図かずお(うめずかずお)
1936年和歌山県生まれ。1955年に単行本「森の兄妹」でデビュー。その後「ねこ目少女」「へび女」などの作品で、恐怖マンガの第一人者として知られるようになる。1967年少年画報にて連載した「猫目小僧」は1976年にTVアニメ化、2006年には実写映画化もされた。1975年「漂流教室」ほかで第20回小学館漫画賞を受賞。翌年ギャグマンガ「まことちゃん」が大ヒットし“グワシ”ポーズは社会現象にもなった。その他代表作は「洗礼」「わたしは真悟」「イアラ」「14歳」「おろち」など多数。その特異な才能を生かしタレント、音楽家としても活動。自身がほぼ全曲の作詞作曲を手がけるアルバム「闇のアルバム2」を2011年8月に発表した。