ナタリー PowerPush - 毛皮のマリーズ
志磨遼平、ポップシングル「Mary Lou」を大いに語る
ほっとくとダメなタイプだから自分を厳しく律して生きてる
──メジャー1stシングル「Mary Lou」もきっと、いろんな意見や議論を呼ぶと思います。フレンチポップ風のナンバーですが、すごくシングルらしいシングルで。
うん、そうですね。最初は(2曲目に収録されている)「コミック・ ジェネレイション」をシングルにしようと思ってたんですよ。「毛皮のマリーズのシングルにふさわしい曲」を意識してすごく意気込んで作ったんですけど、ディレクターの人に聴かせたらなんか違ったみたいで(笑)。いや、ダメ出しされたわけじゃないんですけど「もっとポップでもいいかな」って言われたんで、「じゃあ明日そういうの作ってきますよ」って。それが「Mary Lou」なんですよ。
──すごい。受注生産ですね。
ホントにそうです。曲はね、いくらでもできるんですよ。それしか得意なことがないので。あと、スカーンと100点じゃないと気ぃ悪いじゃないですか。
──なるほど。ちなみにフレンチポップに興味を持ったきっかけって何だったんですか?
おお、いい質問ですねえ。えーと、何でしょうね? ミッシェル・ポルナレフ? 「シェリーに口づけ」? あと、昔のフレンチっぽい歌謡曲も好きなんですよね。越路吹雪のシャンソンやったり、美輪明宏さんの歌うエディット・ピアフやったり。なんか憧れがあるじゃないですか。フランス、パリ、花の都、老女優は去りゆく──まあ、でも一番は(セルジュ・)ゲンズブールですかね。「夢見るシャンソン人形」。ちょうど高校くらいのとき、ジェーン・バーキンの「無造作紳士」がちょっと流行ったり。田村正和のドラマで主題歌になったのかな?
──「無造作紳士」もゲンズブールの曲ですよね。
好きなんですよね、ゲンズブール。ネジが1本取れてるというか、ダメ男じゃないですか。太宰治とかジョニー・サンダースとかもそうですけど、とても他人とは思えないし、憎めないんですよね。僕もどっちかっていうと、ほっとくとダメなタイプなんですよ。だから厳しく律して生きてるんですけど(笑)。
このバンドには「どうも垢抜けんなあ」っていう感じがある
──(笑)「Mary Lou」は単なる懐古趣味ではなくて、ちゃんと2010年のポップミュージックとして成立してますよね。そのあたりのバランスは意識してるんですか?
うーん……いや、たぶんね、すごいセンスのいい人やったら、もっとこだわると思うんですよ。例えば録音機材やったり、マイクやったり、楽器やったり。我々意外と詰めが甘いというか、そこまで偏執的なこだわりってないんですよね。そこはね、いいところだとは思ってなくて、むしろウイークポイントだと思うんです。でも、もしかしたらそういうところが、いいように聴こえてるのかもしれないですねえ。
──それは意図的なものではなく……。
わざとではないです。この4人でやるとそういうものになっちゃうんですよね、どうしても。「どうも垢抜けんなあ」っていう感じですよね、毛皮さんは。それはバンド活動を続けていく上で一番大事なところですよね。愛です、愛。
──愛?
許すって言ったほうがいいかな。イヤなんですよ、僕はまだ。昔よりはマシになったけど、僕は毛皮のマリーズが嫌いなんですよね。
──思うようにならないから?
そう! 「まだまだ」とか「全然」っていうのは世間的には良いこととされるけど、感情をジャンル分けするなら苛立ちとかストレスなんですよ。それがなくなって、一点の曇りもなく受け入れることができたらいいなあって思うんですよね。
──まあ、仮にダメな部分があったとしても、それを含めて「愛すべき存在」と思えるというか、それもロックバンドの魅力だと思いますけどね。
外から見てるとね、そう思えるんですよ。僕もそうなれたらいいんですけどね。他の人と同じように「いやいや、そこがいいんじゃん! マリーズいいよね」って言いたい(笑)。
──(笑)マリーズのメンバーはみんなキャラが立ってるし、すごくポップだと思いますよ。
いい人なんですけどねえ。だからこそそれを認められたらいいなって──まあ、メンバーには言いませんけどね、こんなこと。このインタビューも読まないだろうし。あいつら、字ぃ読めませんから。
毛皮のマリーズ
「コミカル・ヒステリー・ツアー」
- 2010年11月5日(金)
大阪府 心斎橋CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2010年11月12日(金)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2010年12月17日(金)
東京都 SHIBUYA-AX
OPEN 18:00 / START 19:00
毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)
志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も音源の発表を重ねつつ、ライブの動員も激増。日本コロムビアと契約し、2010年4月21日にアルバム「毛皮のマリーズ」をリリース。