ナタリー PowerPush - 毛皮のマリーズ

志磨遼平、ポップシングル「Mary Lou」を大いに語る

メジャーデビューアルバム「毛皮のマリーズ」に伴う全国ツアーにおいて、よりエンタテインメント性を強めたステージを展開し、賛否両論を巻き起こした毛皮のマリーズ。そんな彼らからメジャー1stシングル「Mary Lou」が到着した。

フレンチポップの影響を感じさせるこの曲には、志磨遼平のポップミュージックに対するスタンスが色濃く反映されている。メジャーデビュー後のアレコレから次のアルバムのことまで、たっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 中西求

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メジャーはイヤなことがいっぱいあるんかなって思ってた

インタビュー風景

──まずメジャーレーベル移籍以降のバンドの状態について訊かせてください。志磨さんは常に先を見据えながら活動してる印象がありますが、この数カ月の展開は予想どおりでした?

えーと、いや、なんかアレですね、もっと想像もつかんようなことがワッとあるんかなって思ってたんですけど、けっこう想像の範疇だったというか。「朝起きたらスター!」みたいなこともなく、地味にやっております。まあ、細かいことではいろいろありますけどね。「どーもくん」の歌を歌うことになったり(NHKのキャラクター「BSデジタルどーも」のキャラクターソングを担当)。

──予想以上に受け入れられた感もある?

そうですね。もっとね、イヤなことがいっぱいあるんかなって思ってたんですよ。例えばバラエティ番組でコントやらされるとか(笑)。そういうことは何ひとつなく、音楽を作り、演奏し、それを売ることだけをやってるっていう。あと、僕らのことを好きな人たちと一緒に仕事できてるのもいいっすね。めっちゃアホなインタビュアーとか、来ないっすもん。そう、みんな音楽好きなんやなって思いました。

──今回のシングル「Mary Lou」の解説資料にも書いてますよね、志磨さん。「えっ…ギョーカイの人って…ピュア…」って。

そうそう(笑)。インディーのころのほうがイヤなヤツが多かったかもしれないですね。イヤミだったりケンカ腰だったり、頭が凝り固まってたり。例えば僕が新しい曲を書いて、こっちは単純に「いい曲できた」って思ってるんやけど、「なんでそんなさあ、J-POPみたいなことすんの?」とか言われたり。「ロックなんだからさあ。おまえ、結局ロック好きなの?」とかね。そんなわけわからんこと言う人は今はいなくなりました。いい曲、いいメロディを書いて、それを「うん、いい曲ですね」って言われて。それでいいって思いますね。

不快感でも疑問でも、何かを引きずらせることができれば成功

──アルバム「毛皮のマリーズ」リリース後のツアーについては? ツアーの前半では「変わった」とか「昔の曲をやってほしい」という声もあったそうですが。

それも想定内ですよね。言われんほうが不健康というか「あいつらメジャー行ったけど、最近何やってんだろうね?」ってなっちゃうほうが怖いでしょ。「うわ! 変わった!」とかね、そんなんはやっぱり言われるんやなっていう。まあ、そう言われないように20歳くらいのときに作った曲も入れたんですけど。

──まあメジャーデビューに関係なく、アルバムを発表するたびに「変わった」「前のほうが良かった」って言われてますけどね。

そう、安定してブレてるというか(笑)。僕のところまで届いてる感じでいうと、賛否の割合は7:3くらいかな。それも健康的だと思うし。

──そういうことについても積極的に発言してますよね。ステージで「ロックは楽しいもんだから、もっとたくさんの人が楽しめるロックをやりたい」とか。

それをステージで言うのが良いのか悪いのかはわかんないですけど。20歳の僕が聞いたら「意味わからん」って思うやろうし、まあ、だから、僕もいい感じで変わってるってことでしょうね。枯れるとか悟りを開くとか、そういうのが好きなんですよ。

インタビュー風景

──「初期衝動は信じない」と。

そうです! いい感じに欲がなくなってますね(笑)。

──あと、ファンと一緒に討論会やったり。

しゃべるのは好きなんですけど、MCが長くなりすぎるのも困るじゃないですか。だから討論会はMCしかないライブですよね、言ってみれば。演奏しかしないライブとMCしかないライブを分けるっていう。しゃべる内容がどうこうってことじゃなくて、その熱量をぶつけ合うってことが大事かな、と。肉声と肉声をぶつけあって、そこに何かが生まれる──まあ、結局は僕の独演会みたいになってますけど。

──そういえば「snoozer」誌上で田中宗一郎編集長と討論してましたよね。

はい。どっちが合ってるとかはどうでもいいと思うんですよね。ナタリーに載っただいち君(ロックフェス「夏の魔物」主宰者・成田大致)との対談とかもそうですけど、「どれだけの人が読んだか」っていうのがすべてだと思うし。僕は僕の意見を言ってるだけで「俺についてこい」みたいなことは言わないし。それぞれが「なるほど」と思っても「何言ってんの?」って思ってもいいしね。「夏の魔物」はつまり成功ですよ。不快感でも疑問でも、何かを引きずらせるなんて立派だと思う。

──「楽しかった」で終わったら単なるレジャーですからね。

そうそう。「マジ良かったんですけど」ってmixiの日記に書いて終わり、とかね(笑)。

ニューシングル「Mary Lou」 / 2010年10月27日発売 / 1575円(税込) / 日本コロムビア

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CD収録曲
  1. Mary Lou
  2. コミック・ジェネレイション
  3. デュマフィスの恋人
毛皮のマリーズ
「コミカル・ヒステリー・ツアー」
  • 2010年11月5日(金)
    大阪府 心斎橋CLUB QUATTRO
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2010年11月12日(金)
    愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2010年12月17日(金)
    東京都 SHIBUYA-AX
    OPEN 18:00 / START 19:00
毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)

志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も音源の発表を重ねつつ、ライブの動員も激増。日本コロムビアと契約し、2010年4月21日にアルバム「毛皮のマリーズ」をリリース。