音楽ナタリー Power Push - 川田まみ
I've中沢伴行と語る「彼女のブッ飛び方」
川田まみの16枚目のシングル「Contrail~軌跡~」が、1月27日にリリースされる。現在放送中のアニメ「蒼の彼方のフォーリズム」のオープニングテーマでもある表題曲は、これまで川田が築き上げてきたハードでエレクトロニックなイメージとは打って変わった、軽やかで疾走感のあるナンバーに仕上がった。
昨年、メジャーデビュー10周年という節目の年に「E.M.R(Electric. Mami Kawada. Rock)の集大成」と銘打った5thアルバム「PARABLEPSIA」を発表したのち、次の一手として新境地とも言えるサウンドに挑んだのはなぜか? 川田が所属する音楽制作チーム「I've」のクリエイターであり、シングル曲の作曲・編曲を手がけた中沢伴行同席のもと、その真意に迫った。
なお川田は1月24日に東京・日本武道館で開催されたライブイベント「リスアニ!LIVE 2016 SUNDAY STAGE」にヘッドライナーとして出演。そのステージで2016年中に歌手業を引退することと、5月21日にファイナルライブ「MAMI KAWADA FINAL F∀N FESTIVAL "F"」を実施することを発表している(参照:川田まみ年内で歌手引退、5月ラストステージ)。取材は、武道館の8000人をまさに驚かせたこの“サプライズ発表”前に実施した。
取材・文 / 須藤輝
自分の中に2本のレールが走っている感覚
──ニューシングル「Contrail~軌跡~」は、昨年9月にリリースされたご自身の集大成ともいえるアルバム「PARABLEPSIA」から、ずいぶん雰囲気を変えてきましたね(参照:川田まみ「PARABLEPSIA」インタビュー)。
川田まみ そうですね、「あのアルバムはなんだったの?」っていうくらい(笑)。でも、どっちも“川田まみ”なんですよ。おっしゃる通り「PARABLEPSIA」は私の名刺代わりというか、「これが川田まみです!」と胸を張って言えるデジタルでハードなサウンドに仕上がっているんですけど、一方で新曲「Contrail~軌跡~」のような、さわやかでキラキラしたカラーも、主にPCゲームのフィールドで表現してきてるんですよ。
──「Contrail~軌跡~」は、現在放送中のアニメ「蒼の彼方のフォーリズム」(「あおかな」)のオープニングテーマですが、このアニメも原作はPCゲームですもんね。
川田 はい。私はもともとPCゲーム版「あおかな」のオープニングテーマやイメージソングを歌わせてもらっていたので、「Contrail~軌跡~」もその延長にあるというか、決して降って湧いたような楽曲ではないんですね。言うなれば、私の中では常に2本のレールがあるような感覚なんですけど。
──ハード路線と並行して、さわやか路線の曲も歌われてきた。
川田 ただ、世間的には「灼眼のシャナ」や「とある魔術の禁書目録」、「ヨルムンガンド」とアニメのオープニングテーマで私のことを知ってくださる方が多いので、いわゆるデジロック的なイメージが定着していたと思います。もちろん、それはそれですごくありがたいし、私自身もそこを極めていくことに邁進してきたんですけど、その裏で、デビュー以来10年間、もう1つのカラーも大事に持ち続けてきたんです。
──オリジナルアルバムでも、例えば4thアルバム「SQUARE THE CIRCLE」には「らせん階段」のような青春ポップソングが収録されていました(参照:川田まみ「SQUARE THE CIRCLE」インタビュー)。
川田 アルバムではそういう一面も見せてきたんですけど、今回のようにシングルという形になると、ちょっと意味合いが変わってくるんですよ。実際、前のシングル「Gardens」(アニメ「To LOVEる -とらぶる- ダークネス 2nd」エンディグテーマ。2015年8月リリース)では、どういうふうに自分を表現したらいいのかなって、ずいぶん悩みました。
──確かに「Gardens」も、デジタル調ではありますが、ロック色を抑えた、透明感のあるミディアムテンポの曲でしたね。
川田 そういう作品をシングルで発表することによって、ひょっとしたら、それまで追求していた川田まみ像というものがブレて見えてしまうのではないかって。今回の「Contrail~軌跡~」も、そうした戸惑いがまったくなかったといえば嘘になるんですけど、その前に「PARABLEPSIA」を出せたおかげで肩の力が抜けたというか、むしろこのタイミングだからこそ、別のカラーを打ち出した作品も生きるのかなっていう思いのほうが強くて。
──「PARABLEPSIA」で川田まみの芯が固まったから、もうブレることはないぞ、と。
川田 はい。私はこれまで5枚のアルバムを出してきて、それぞれ「川田まみらしさ」を表現してきたんですけど、4枚目までは、どちらかというとまずクリエイターチームのI'veがあって、そのI'veサウンドに川田まみという歌い手が乗っかっているような感覚だったんですね。だからといって作品の出来に不満があるとか、全力を出し切れていないとかそういう意味ではまったくないんですけど、5枚目の「PARABLEPSIA」は、完全に私が中心にいて、そこにクリエイター陣がグッと音を寄せてきているんです。いわば私以外の誰も歌えない、私にしか表現できないアルバムになったので「じゃあ次は、さわやかな、キュンとする系の曲も歌っちゃうぜ! っていうか歌えるんだよ!」みたいな気持ちになれたんです(笑)。
次のページ » 初めて“1回も睨まないMV”が撮れた
- ニューシングル「Contrail~軌跡~」2016年1月27日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / GNCV-0037
- 通常盤[CD] 1296円 / GNCV-0038
CD収録曲
- Contrail~軌跡~
[作詞:川田まみ / 作曲:中沢伴行 / 編曲:中沢伴行、尾崎武士 / ストリングスアレンジ:emyu:] - Halfway
[作詞:川田まみ / 作曲:中沢伴行 / 編曲:中沢伴行、尾崎武士] - Contrail~軌跡~(Instrumental)
- Halfway(Instrumental)
初回限定盤DVD
- 「Contrail~軌跡~」PV
ライブ情報
MAMI KAWADA FINAL F∀N FESTIVAL "F"
2016年5月21日(土)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
<出演者>
川田まみ / KOTOKO / fripSide / 黒崎真音
ファンクラブ先行予約:2016年2月6日12:00~2月9日23:59
一般発売:2016年3月26日10:00
川田まみ(カワダマミ)
2月13日生まれ、北海道出身の女性シンガー。2001年に島みやえい子の推薦でI'veのオーディションに参加し合格。同年11月に発表された「風と君を抱いて」で歌手デビューを果たす。そして2004年6月にリリースされた「I've Girls Compilation 6『COLLECTIVE』」収録曲「IMMORAL」「eclipse」において、独特の繊細なビブラート、透き通るように伸びやか、かつ力強い歌声で幅広い層からの支持を獲得。2005年2月にテレビアニメ「スターシップ・オペレーターズ」の主題歌に採用されたシングル「radiance / 地に還る~on the Earth~」でソロデビューした。以降、さまざまなアニメのテーマソングを手掛け、2012年8月に通算4枚目のアルバム「SQUARE THE CIRCLE」をリリース。また2013年2月には初のベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」とニューシングル「FIXED STAR」を立て続けに発表した。その後も精力的に音源制作、ライブ活動を続け、2015年9月には3年ぶり5枚目のオリジナルフルアルバム「PARABLEPSIA」を発表。2016年1月にはアニメ「蒼の彼方のフォーリズム」のオープニングテーマを含むシングル「Contrail~軌跡~」をリリースする。なお川田は2016年中に歌手業を引退。5月21日に東京・TOKYO DOME CITY HALLでKOTOKO、fripSide、黒崎真音をゲストに迎えたファイナルライブ「MAMI KAWADA FINAL F∀N FESTIVAL "F"」を実施する。